近寄る美少女にドキドキ ルポ・VR空間へ ネットで変身!Vチューバーの世界・下

 近未来的なドームにたたずんでいると、アニメ風の美少女が近寄ってきた。こちらが後ずさりすると、無いはずの椅子に足を思い切りぶつけた-。これは夢ではなく仮想現実(VR)。Vチューバー同士がVR空間上でキャラクターを操って交流できる先進的なサービス「バーチャルキャスト」を試してみた。

 ■異世界へ“移動”
 東京にあるバーチャルキャスト社(本社札幌市)のオフィスを訪れると、大型ディスプレーとパソコン、ヘッドマウントディスプレー(HMD)などがある部屋に案内された。HMDを頭に装着。コントローラーを握り、Vチューバーとなって、いざVR空間へ。CGで作られた雪の降る森に“瞬間移動”。異世界にいるような不思議な感覚だ。
 「バーチャルキャスト」は、昨年4月に始まった無料サービス(個人利用の場合)。利用者は専用ソフトウエアをパソコンにインストールして使う。同社はVチューバー同士がVR空間でカラオケやゲームなどを楽しむ様子を、ネットのニコニコ生放送で配信。視聴者はコメントを投稿したり好きなキャラにCGの花など有料アイテムを贈ったりできる。同社はアイテムの販売などで収益を得る。
 岩城進之介取締役CTOは「バーチャルキャストではVチューバー同士が離れた場所にいても、実際に会っているような感覚でコミュニケーションができる」と説明。ブランド開発担当の助田徹臣社長室長は「今後は移動が難しい高齢者や障害者も利用できるように、VRの技術革新が進んでいくだろう」と予測する。

 ■スマホで気軽に
 もっと気軽にVチューバーになれないか。パソコンでキャラの腕や足を動かすにはHMDなどが必要。最低でも数万円程度の費用がかかる。しかし、キャラの動作にこだわらなければスマートフォンを使って気軽にVチューバーの動画を配信できる。VRコンテンツ開発を手掛けるIVR社(東京)の無料アプリ「Vカツ」も方法の一つ。
 スマホのアプリを起動すると性別、顔、髪形、体形、衣装などの設定項目が細かく表示され、1時間ほどで若い男性キャラを作ることができた。しかし、Vチューバーが増えつつある中、ネット視聴者の関心を引くには、キャラの魅力を引き出すパフォーマンスを考えて動画を配信する必要がありそうだ。人気Vチューバーへの道のりはまだ遠いなと感じた。

仮想現実の世界で、男性キャラクター(画面左)を操作する記者(右)=東京都中央区銀座、バーチャルキャスト社東京オフィス
服などを選び好みのキャラクターを製作できるアプリ「Vカツ」の画面

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