これが連覇の極意?川崎フロンターレの「高卒・大卒選手」獲得戦略が面白い

J1王者の川崎フロンターレは、今年2月からクラブ公式のYouTubeチャンネルで『真面目に川崎フロンターレの未来を考える』という番組を配信している。

通称『マジフロ』は、J1連覇を果たした川崎フロンターレがここを「終着点」とせず「通過点」とするために、どのようなことを考え、実行していけば良いのか、真面目に討論する番組だ。

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試合実況でお馴染みの西岡明彦氏が司会を務め、クラブのキーマンたちと討論する異色のクラブ公式番組である。

先日公開された第1回と第2回には、川崎フロンターレのレジェンドで現在は強化部スタッフとなっている伊藤宏樹氏が登場。「選手補強」について選手獲得の考え方や移籍のタイミングなど“裏側”を語った。

各選手について話される具体的な内容に驚かされるが、その中でも興味深い発言があったので紹介したい。今年度、高卒で新加入した宮代大聖と原田虹輝に関する話だ。

「宮代大聖は去年から経験を積んでトップで練習をしていますけど、同年代でもう一人欲しかったんです。僕も去年までスカウトをしていて、同じくらいやっぱり刺激し合える選手が欲しいなぁというところで、いろいろ探していたんですけど、原田(虹輝)がすごく目に留まりました。

今この強いフロンターレに入ってきて、もちろん即戦力で出て欲しいですけど、しっかり経験を積んで成長していけば、3年後4年後に関わってこられる可能性を持った選手かなと。大聖に刺激を受けてもらいたいという意味も含めた、未来を見越した補強です」

宮代大聖は、川崎フロンターレのアカデミー出身で今年のU-20ワールドカップでも活躍が期待される世代屈指のストライカー。高校3年生ですでにプロ契約を結んでいるのだが、その彼に刺激を与える意味も含め、同い年のMF原田虹輝(昌平高校)を獲得したというのである。

これは、特に川崎フロンターレのサポーターならピンと来る話かもしれない。

というのも、たとえば大島僚太が加入した2011年以降に川崎が獲得した新卒(高卒・大卒)選手を年度別に見ていくと…。

2011年

大島僚太(静岡学園高校)福森晃斗(桐光学園高校)谷尾昂也(米子北高校)

實藤友紀(高知大学)

田中雄大(関西大学)

棗佑喜(駒澤大学)

2012年

田中淳一(大阪桐蔭高校)
高木駿(明治大学)

2013年

安柄俊(中央大学)

2014年

谷口彰悟(筑波大学)

可児壮隆(阪南大学)※

2015年

三好康児(川崎フロンターレU-18)板倉滉(川崎フロンターレU-18)
車屋紳太郎(筑波大学)

中野嘉大(筑波大学)

2016年

長谷川竜也(順天堂大学)

2017年

田中碧(川崎フロンターレU-18)タビナス・ジェファーソン(桐光学園高校)
知念慶(愛知学院大学)

2018年

守田英正(流通経済大学)

脇坂泰斗(阪南大学)※

2019年

宮代大聖(川崎フロンターレU-18)原田虹輝(昌平高校)

2020年入団内定

三笘薫(筑波大学)※

旗手怜央(順天堂大学)

高卒選手が加入しない年も多い川崎フロンターレだが、獲得する際はこの通り2012年の田中淳一を除き、同世代の選手を一緒に迎え入れているのだ。はっきりと傾向が出ている!

また、実はもう一つ特徴がある。

※は川崎フロンターレのアカデミー出身で、大学を経てクラブに戻ってきた選手。この中では可児、脇坂、そして2020年入団が決まっている三笘の3名が該当するが、こちらも必ず同期で世代屈指の選手を獲得しているのだ。

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それぞれにポジションも近く(谷口は大学時代主にボランチ)、伊藤氏が言う「刺激」の部分に繋がる。さらに、同期に川崎フロンターレをよく知るアカデミー出身者がいることは谷口や守田にとって、クラブのフィロソフィーを理解する上でプラスとなったに違いない。

大学時代は無名に近かった中村憲剛や小林悠をチームの中心選手に育て上げるなど、独自の補強戦略で成功を掴んでいる川崎フロンターレ。今回の伊藤氏の話からはその一端がうかがえる。

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