「女王陛下のお気に入り」- 熾烈な権力闘争と滑稽なほどの愛憎劇

熾烈な権力闘争と滑稽なほどの愛憎劇

18世紀、イングランドの王室を舞台に、女王アンと彼女に仕える側近の2人の女性・サラとアビゲイルの三角関係を描いた人間ドラマ。イギリスがフランスと覇権を争っている時代、アンの幼なじみのサラ(レイチェル・ワイズ)は病弱でわがままな女王を動かし絶大な権力を握っていた。そんな中、召使いとして城に雇われたアビゲイル(エマ・ストーン)が、さながら秀吉が信長の草履を温める逸話のようないじましい努力で女王のお気に入りの座を獲得していき、やがて2大政党間の争いにも影響を及ぼしていく。アン・サラ・アビゲイルの3人の間で繰り広げられるドロドロの愛憎劇は、喜劇とも悲劇ともいえる興奮を観る者に与えてくれるが、ランティモス監督が「今の時代にも共感できる映画」と言う通り、ある意味、権力の本質を捉えているとも言えるだろう。サラとアビゲイルが鳥撃ちをするシーンの張り詰めた緊張感がいつまでも鈍く心に残る映画だ。(加藤梅造)

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