メルセデス・ベンツ 新型Aクラス 試乗レポート|「Hi, Mercedes!」基準を塗り替える革新的コンパクトカー

メルセデス・ベンツ 新型Aクラス A180 走り

パーソナルアシスタントとしての新型Aクラス

「Hi, Mercedes!」と声をかけるだけで起動する音声入力機能を搭載した新しいユーザーインターフェイス“MBUX”を引っさげて、新型メルセデス・ベンツ Aクラスが登場した。しかし話題はそれだけには留まらない。デザイン、走り、先進安全装備と、その進化はまさにクルマのすべての面に及ぶのだ。

とは言え、最初はやはりMBUXに触れるべきだろう。“メルセデス・ベンツ ユーザーエクスペリエンス”を略した、この最新のユーザーインターフェイスが新型Aクラスの最大の目玉であることは間違いない。

メルセデス・ベンツ 新型Aクラス A180 内装(インテリア)

TFTスクリーンを2枚並べたデジタルコクピットはすでにメルセデス・ベンツの上級モデルではお馴染みのものだが、新型Aクラスのそれは超薄型10.25インチスクリーンを採用。そのうちドライバー正面のスクリーンには、車両に関する情報やADAS(先進運転支援システム)の動作状況、地図など運転に関係する内容を好みに応じてカスタマイズした配置で表示させることができる。そして中央側の画面はタッチスクリーンとされ、オーディオや空調、ナビゲーション、ネット接続などの豊富な機能をスマートフォン感覚で操作することが可能だ。

これらの機能は、センターコンソール上のタッチパッド、ステアリングホイールのスポーク左右に置かれたタッチスイッチを使っても呼び出せる。いや、おそらく多くの人が一度使ったら離れられなくなるに違いないのが、冒頭で触れた音声入力機能である。

メルセデス・ベンツ 新型Aクラス A180 内装(インテリア)
メルセデス・ベンツ 新型Aクラス A180 内装(インテリア)
メルセデス・ベンツ 新型Aクラス A180 内装(インテリア)

使い込むほどに自然な会話文を理解するMBUX

その特徴は、単に音声コマンドを受け付けるというのではなく、自然な発話を理解すること。エアコンの設定温度を上げるのには「エアコンの温度を上げて」と言ってもいいが、MBUXなら「ちょっと寒いよ」だけでも、こちらの意図を解してくれる。

あるいは天気を知りたい時は「明日、鹿児島でサングラスは必要?」でいい。「この近くのお寿司屋さんを探して」と言えばナビゲーションで検索してリスト表示してくれるから、あとは目的地に設定するだけだ。

入力された音声は、車載のコンピューターと車載のLTEで接続されたサーバーの両方で解析、判断される。当然、サーバーの方が情報量も解析能力も大きいが、クルマは必ずしも常にネット接続できる環境に居るとは限らないからだ。また、AIによって解析能力はどんどん向上していく。使い込むほどに賢くなっていくのである。

メルセデス・ベンツ 新型Aクラス 試乗会 A180 MBUX モニター (海外仕様)
メルセデス・ベンツ 新型Aクラス 試乗会 A180 MBUX モニター (海外仕様)
メルセデス・ベンツ 新型Aクラス 試乗会 A180 MBUX モニター (海外仕様)

この音声入力機能は、実はほんの入口。他にも、人とクルマの関係性を一変させるような機能は盛り沢山だ。たとえば、普段の行動パターンに応じてナビの目的地やラジオの選曲、よくかける相手の電話番号を表示する行動予測機能。毎朝、オフィスにナビを設定してお気に入りのラジオを聞いて出社、帰りは必ず自宅に電話を入れて…といったルーティンに沿って、クルマが目的地設定、ラジオの電源オンなどをリコメンドしてくれる。まさに有能なアシスタントの役割まで果たしてくれるわけだ。

なお、このMBUXは新型Aクラスが初採用となる。最先端の機能を敢えてエントリーモデルから投入してきたのは、このセグメントのユーザーこそ、こうした技術にもっとも敏感であり、認知の拡大に直結するとメルセデス・ベンツがよく解っているからである。

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メルセデス・ベンツ 新型Aクラス A180 イメージ
メルセデス・ベンツ 新型Aクラス A180 Style (AMGライン装着車) 走り

新世代のデザインを導入したフレッシュなエクステリア

その意味ではスタイリングも、こうした層にアピールしそうなフレッシュな印象だ。CLSに続いて使われた台形ラジエーターグリルとつり上がったヘッドライトが象徴的なフロントマスク、煩雑なキャラクターラインが整理されて面で見せるようになったサイドビュー、横長のテールランプでワイド感を強めたリアエンドなど、どの角度から見ても新しいと感じさせる。しかも、このエクステリアは見映えがいいだけでなく、Cd値0.25という驚異的な空気抵抗の小ささをも実現しているのだ。

メルセデス・ベンツ 新型Aクラス A180 Style (AMGライン装着車) 外装(エクステリア)
メルセデス・ベンツ 新型Aクラス A180 Style (AMGライン装着車) 外装(エクステリア)
メルセデス・ベンツ 新型Aクラス A180 Style (AMGライン装着車) 外装(エクステリア)

インテリアも、とてもスマート。TFTスクリーンを2枚並べたデジタルコクピットはすでにメルセデス・ベンツではお馴染みのものだが、新型Aクラスは先述のとおり超薄型10.25インチスクリーンを採用している。ガラス投影型のヘッドアップディスプレイ、タービン形状の円形エアダクトなどとの組み合わせで、まさに最先端の室内空間を描き出しているのである。

ピラーのスリム化により視界が広がり、開放感が高まった室内はスペースも拡大されていて、頭上、肩周り、肘周りのいずれも先代より少しずつ余裕が増している。荷室は奥行きも幅も大幅に増えて、容量は従来の29リッター増となる通常時370リッターを確保。テールゲートの開口部も広げられた。

メルセデス・ベンツ 新型Aクラス A180 内装(インテリア)
メルセデス・ベンツ 新型Aクラス A180 内装(インテリア)
メルセデス・ベンツ 新型Aクラス A180 内装(インテリア)

セグメントの基準を塗り替える革新的なコンパクトカー

では走りはどうか。新型Aクラスは新しいアーキテクチャーを採用し、ボディもシャシーも完全に新設計とされた。しかもこの車体は、軽くて高剛性。振動、騒音も低く抑えられることから快適性の向上にも寄与する。新技術の遮音材の採用などもあり車内での会話明瞭度は12%向上したという。

実際、その走りはまず高い快適性に唸らされる。ボディは剛性感が高く、路面からの鋭い入力に起因する騒音、振動がよく抑えられている。静粛性も素晴らしい。風切り音がまるで気にならず、ロードノイズも小さい。ライドコンフォートについては、18インチタイヤを履くAMGライン仕様の乗り心地はやや硬め。快適性で選ぶならノーマルの16インチがいい。

フットワークはと言えば、ステアリング操作に対する反応が小気味良く、スポーティに走らせることができる。メルセデスらしいしっとりとした操舵感が備わり、スタビリティも上々。率直に言って、軽快ではあっても快適性、安定性などでクラス水準からは見劣りした先代からの進歩の幅は大きい。

メルセデス・ベンツ 新型Aクラス A180 A180 エンジン

試乗したA180のエンジンは、従来の1.6リッターターボから1.4リッターターボへと排気量を縮小しているが、走らせてみると、先代の特に前期型では痩せていた低中速域のトルクが豊かになり、とても走らせやすい。7速DCTのダイレクト感も、優れたドライバビリティに繋がるポイント。エンジンフィールは色気に乏しいけれど、十分に小気味よさが感じられる。

さすがメルセデス・ベンツで、先進安全装備・運転支援装備も充実している。操舵支援、完全停止・再発進まで行なうアクティブディスタンスアシスト・ディストロニックや、ウインカーレバーの操作だけで車線変更を自動で行なうアクティブレーンチェンジアシストまで備わるのだ。

新型Aクラスは、まさにセグメントの基準を塗り替える革新的なコンパクトカーとしてデビューした。但しその分、エントリーのA180は328万円、A180 Styleは369万円と価格はそれなりに上昇しているから誰にでもお勧めとまでは言い難いが、手に入れた方はきっと、その先進感含めた新鮮な体験に大いに満足するに違いない。

[筆者:島下 泰久/撮影:小林 岳夫]

メルセデス・ベンツ 新型Aクラス A180 Style (AMGライン装着車) イメージ

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