訪日外国人が驚く災害食とはなんでしょう せめて外国語表記を!

災害時カップ麺はすぐに品薄となります

私がアメリカを訪問していた時のことです。大型スーパーで魚の缶詰を買って持ち帰り食べていました。途中で「あっ、これひょっとしてペットフードじゃあない?」と気付いたときはすでに遅く半分以上食べた後でした。悔しい!うらめしや!

昨年、関西国際空港では日本を訪れた外国人たちがとんでもない災害に出くわしました。2018年9月4日台風21号の直撃です。その戦いぶりは前回書いた通りです。

■台風21号、関空は戦った
http:// www.risktaisaku.com/articles/-/15158

海を埋め立てた関西空港は荒波をかぶる被害で停電となり飛行場は大荒れで欠航になりました。おまけに空港から市街地へ向けて移動する唯一の連絡橋が事故のために通行禁止となりました。多くの旅行者は空港から一歩も出られず足止めを食いました。

実は、訪日外国人が足止めをくっていたのは、空港の中だけではありませんでした。連絡橋には市街地と空港をつなぐ電車が走っていたのです。ところが橋の事故で不通になったために、南海電鉄の泉佐野駅(空港の2つ手前の駅)では約200人の外国人があふれ返っていました。この駅には雨風をしのぐ場所がなかった。

そこで急きょバスを仕立ててもう一つ空港寄りのりんくうタウン駅へと移動してもらいました。ここは駅ビルになっているので、廊下に寝泊まりしてもらいました。食料(夕食と朝食)と500mlのペットボトル、それに毛布を配りました。これは泉佐野市の手配によるものでした。アルファ化米は、レトルトパックの袋入りで、乾燥した米に水を加えてよくかき混ぜ、袋のチャックを閉めて約60分置いておくとご飯になるという災害食です。

たったこれだけのことですが、なんと実際に配ってみると、外国人たちには袋の表示が読めません。すべて日本語で書かれていて、食べ物の内容も食べ方も外国人には読めません。さすがのハズキルーペもお手上げです。そこで英語の通訳を連れてきて説明しましたが、なかなか通じず混乱しました。それでなくても、災害時はすべてが混乱状態、せめて食べ物だけでも混乱のないものにしたいものです。

写真を拡大 アルファ化米の調理法。これでは外国人にわかりません

そこで反省した行政は、すぐさま次の一手をうちました。つまり袋表示の外国語版(英語、韓国語、中国語)を紙媒体で作ることに挑戦しました。その後、台風24号も早速やってきました。泉佐野市役所・成長戦略室では着々と混乱防止策を考え準備しました。それはこのようなものです。

写真を拡大 泉佐野市役所・成長戦略室で用意したアルファ化米の調理法の翻訳版。英語、中国語、韓国語のほかインドネシア語やアラビア語も

要は外国人を苦しめない、安心して食べてもらえる災害食を提供することが、最低限の「お・も・て・な・し」ではないでしょうか。

関空第1ターミナルビル3階のそば屋にある外国人向けの案内。ハラルマークも

トイレも必ず備蓄

■災害食を作るメーカーの方々に申し上げたい。外国人をお迎えする玄関口の空港、その周辺の自治体では、せめて外国語表記を添えた災害食を配りたいものです。
■メーカーは日本語から外国語への変換が苦手だといいます。いいですか、企業が変換について助けて~と問い合わせたら、「あいよー、まかせろ」と即答できる省庁が欲しいです。観光庁、~省、どこかお手伝いをしてください。そういうシステムを早急に作ることが望まれます。

尾西食品KKの「クルクル」という商品には、英語表記がされている。カスタードソースの粉末が入っていて、そこに熱湯を入れくるくるかき混ぜるとシュークリームの中身のような粘りのあるソース状のものができる

■アレルギー表記も日本語ではわからない。
■イスラム圏の方々には「ハラル食」の認証マーク(豚肉やアルコールなど不使用)がついた災害食を配りましょう。

ハラルマーク

■ついでなので申し上げますが、食べたり飲んだりすると必ず出る・・・。それ用の簡易トイレの備蓄です。簡易トイレ(ポケットサイズ)を1人1日6回分×2日分=10個位配りましょう。そのためには空港に備蓄が必要です。

災害食の一つであるライスクッキーにもハラルマーク(右上部矢印)が

 

災害食におけるハラル表記

これは空港に限ったことではなく、観光地、周辺のホテルや旅館、災害時に外国人がやって来そうな避難所なども同じ対応が求められます。それぞれ準備しましょう。

訪日外国人からお金を吸い取ることばかり考えているようでは、真の異文化交流からかけ離れた極悪の野蛮国と言えましょう。

今回は企業や行政、被災者が集まる避難所などの備蓄について考えてみました。

 

なお、りんくうタウンの被災時のお話をうかがった泉佐野市 市長公室 成長戦略室官民連携推進担当理事 甲田裕武氏に感謝いたします。

(了)

 

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