三菱 デリカ D:5 新旧比較│唯一無二のオフローダーミニバン、12年分の進化を検証

いよいよ発売開始した新型デリカD:5を先代と徹底比較!

進化度数の基準

2018年11月に新型が発表され、その強烈なフロントマスクの変貌ぶりに賛否両論が巻き起こった三菱 新型デリカD:5。

年始に開催された東京オートサロン2019や、各ディーラーに展示車も配備され、徐々に見慣れてきた感もあるが、2019年2月15日にいよいよ発売がスタートした。

ルックスだけが先行して話題となってしまった新型デリカD:5ではあるが、実はパワートレインや内装、足回りなど多くの部分に改良がなされており、フルモデルチェンジと言っても差し障りないほど手が加えられているのである。

それではここから新型と従来型を比較しながら各部をチェックしていこう。

三菱 デリカ D:5│ボディスタイル/サイズ/視界/取りまわし性比較

三菱 新型デリカD:5 グレード:P│ボディカラー:エメラルドブラックパール×アイガーメタリック│シートカラー:ベージュ│8人乗り仕様
三菱 デリカD:5 特別仕様車「JASPER(ジャスパー)」[4WD・クリーンディーゼル]

ボディスタイルに関して好き嫌いはあるだろうが、従来型の面影は全くない新たなフロントマスクが与えられている。

三菱自動車のフロントデザインコンセプト「ダイナミックシールド」を取り入れたフロントマスクは、同様のデザインを取り入れたアウトランダーやエクリプスクロスと比較してもかなりアグレッシブなデザインとなっており、まるでコンセプトカーのような装いとなっている。

リアセクションはフロントほどの大幅な変更はなされていないものの、導光LEDテールランプを採用するなど古臭さを一新し、従来型よりもプレステージ性を高め、他のプレミアムミニバンに対抗しようとしている感が伺える。

三菱 新型デリカD:5 URBAN GEAR グレード:G-Power package│ボディカラー:ウォームホワイトパール│シートカラー:ブラック本革シート│7人乗り仕様

また、従来のカスタムモデル「ROADEST」に近い存在として、洗練されたモダンなイメージの「URBAN GEAR(アーバンギア)」も設定されている。こちらは標準のデリカD:5に比べて都会的で高級感のあるデザインを採用したモデルとなっている。

スペックは標準モデルと変わらないが、バンパーデザインの違いでアプローチアングルなどが悪化しているので、オフロード走行には不向きなグレードと言えるかもしれない。

ボディサイズに関しては厳密にいうとマイナーチェンジ扱いということもあり、大幅な変更はなし。数値で言うと全長が+10mm、全幅は変わらず、全高が+5mmと言った具合だ。

取り回しに関しても最小回転半径は5.6mとこちらも不変となっている。ただし、アプローチアングルは21°(従来型24°)、最低地上高が185mm(従来型210mm)とオフロード性能は従来型よりも若干低下してしまっている。とはいえ、ミニバンとして考えれば相変わらず圧倒的だし、本格SUVに匹敵する性能は変わらず持ち合わせていると言えるだろう。

●進化度数:9点(超絶的に進化した) ※いいか悪いかは置いておいて・・

(左)旧型デリカD:5(右)新型デリカD:5 

三菱 デリカ D:5│内装のデザイン/質感/操作性/視認性比較

先代デリカD:5は2007年デビューということで、どうしても古さを感じさせていたのが内装だ。

しかし、新型デリカD:5は同社のプレミアムSUVであるアウトランダーPHEVに共通する水平基調の「ホリゾンタルアクシス」というコンセプトに基づいた、走行時には車体姿勢が掴みやすく、ワイド感にも寄与するインストルメントパネルを採用。10.1型という大型ディスプレイのナビゲーションにも対応している。

三菱 新型デリカD:5 グレード:P│ボディカラー:エメラルドブラックパール×アイガーメタリック│シートカラー:ベージュ│8人乗り仕様
三菱 デリカD:5 特別仕様車「JASPER(ジャスパー)」[4WD・クリーンディーゼル]

シート表皮もダイヤモンドステッチを採用し、随所にソフトパッドやステッチをあしらって質感も大幅に向上しているほか、メーターもデザインを一新し、より上質な雰囲気を醸し出している。シートアレンジこそ従来型と同等だが、シートバックポケットにスマートフォン用のポケットが追加されるなど、使い勝手の面での向上が見られる。

一方で、オートエアコンの操作パネルが従来のダイヤル式からボタン式になった点は評価が分かれるところ。普段使いのミニバンとして使うユーザーには歓迎されるかもしれないが、SUV的に使うユーザーは冬用のグローブをしたままでも操作できるダイヤル式の方が使いやすいハズ。ここはメーカーが考える(買ってもらいたい)ユーザー層に変化が見られた証かもしれない。

●進化度数:5点(順当に進化した)

三菱 デリカ D:5│前後席の居住性比較

三菱 新型デリカD:5 グレード:P│ボディカラー:エメラルドブラックパール×アイガーメタリック│シートカラー:ベージュ│8人乗り仕様
三菱 新型デリカD:5 グレード:P│ボディカラー:エメラルドブラックパール×アイガーメタリック│シートカラー:ベージュ│8人乗り仕様
三菱 デリカD:5 特別仕様車「JASPER(ジャスパー)」[4WD・クリーンディーゼル]
三菱 デリカD:5 特別仕様車「JASPER(ジャスパー)」[4WD・クリーンディーゼル]

基本的にはマイナーチェンジとなるため、前後席の居住性に大きな違いはないというのが実のところだ。しかし、シート表皮の変更に伴いクッションも見直されているのか、座り心地は新型が上回っているように感じた。

また、静粛性の向上やサスペンションの見直しといったところを総合的に判断すれば、若干居住性は向上していると言える。

●進化度数:3点(比べてようやく気づくレベル)

三菱 デリカ D:5│荷室の広さと使い勝手比較

三菱 新型デリカD:5 グレード:P│ボディカラー:エメラルドブラックパール×アイガーメタリック│シートカラー:ベージュ│8人乗り仕様
三菱 デリカD:5 特別仕様車「JASPER(ジャスパー)」[4WD・クリーンディーゼル]

繰り返しになってしまうが、新型デリカD:5は基本的にはマイナーチェンジとなるため、荷室については従来型との明確な違いは存在しない。

従来型から採用されている14個のマルチユースフックも継続して採用されている。そういう意味では従来型の良かった部分はキャリーオーバーされているので安心できるのだ。

●進化度数:2点(もう少し頑張りましょう)

三菱 新型デリカD:5 URBAN GEAR グレード:G-Power package│ボディカラー:ウォームホワイトパール│シートカラー:ブラック│7人乗り仕様

三菱 デリカ D:5│動力性能比較

搭載されるディーゼルエンジンに関しては、エンジンの型式こそ4N14型と不変だが、AdBlueを使用した尿素SCRシステムを採用し、排気ガスを常時安定して高効率で浄化できるように改良。

さらにエンジン内部のフリクションの大幅低減や燃焼室の変更、次世代燃料インジェクターの搭載などの大幅な改良によって、従来型よりも最大トルクを20N・mも向上させている。

三菱 新型デリカD:5 グレード:P│ボディカラー:エメラルドブラックパール×アイガーメタリック│シートカラー:ベージュ│8人乗り仕様
三菱 デリカD:5 特別仕様車「JASPER(ジャスパー)」[4WD・クリーンディーゼル]

さらに組み合わされるトランスミッションも従来の6速ATから一気に多段化された8速ATを採用。

1速を8%ローギヤード化し、低速域での悪路走破性を向上させながらも、トップギヤを18%ハイギヤード化することで高速巡行時の燃費を改善。8速としたことで、ギヤ比はトータル27%のワイド化に成功しており、低速域から高速域まで気持ちの良い走りができる、まさにオールラウンドミニバンとしての実力をアップさせた形となった。

●進化度数:8点(大幅に進化した)

三菱 デリカ D:5│走行安定性比較

三菱 新型デリカD:5 URBAN GEAR グレード:G-Power package│ボディカラー:ウォームホワイトパール│シートカラー:ブラック│7人乗り仕様
三菱 デリカD:5 特別仕様車「JASPER(ジャスパー)」[4WD・クリーンディーゼル]

扱い的にはマイナーチェンジとなる新型デリカD:5だが、フロント周りに関しては外観の変更だけにとどまらず、実は内部骨格も大幅に改良がなされている。

歩行者保護性能の向上のため、サイドメンバー前部を20mm後退させたほか、フロントエンドの構造合理化によりボディの骨格変形を抑制し、カウルトップには新たに補強を追加したことでボディ剛性を向上させている。

さらにステアリングにはデュアルピニオンEPSを新採用。低速時の操舵力を30%低減させながらも、タイヤに近い部分にモーターを配置することでステアリングを切り始めるときの剛性感の向上にも貢献している。

また、三菱のお家芸とも言える電子制御4WDシステムには、新たにヨーレイトフィードバック制御を追加。ヨーレイトセンサーから車両の旋回運動を的確に判断し、電子制御カップリングを制御。アンダーステアを低減し、ドライバーの思い通りのハンドリングを実現している。この採用によって、オフロード志向の強かったデリカD:5が、舗装路でも気持ちよく走れる快走ミニバンへと変貌を遂げているのだ。

●進化度数:6点(順当に進化した)

三菱 デリカD:5 特別仕様車「JASPER(ジャスパー)」[4WD・クリーンディーゼル]

三菱 デリカ D:5│安全装備比較

三菱 新型デリカD:5 URBAN GEAR グレード:G-Power package│ボディカラー:ウォームホワイトパール│シートカラー:ブラック本革シート│7人乗り仕様

2007年デビューということもあり、改良前のモデルでは衝突被害軽減ブレーキなどの先進安全装備は全く装着されていなかったデリカD:5。しかし、新型には一気にそれらの装備が標準で装着されることとなった。

内容は、衝突被害軽減ブレーキシステム、車線逸脱警報システム、レーダークルーズコントロールシステム、オートマチックハイビームの4つとなっている。

さらに一部グレードに標準、一部グレードにオプションで装着可能なのが、後退時車両検知システムと後側方車両検知警報システム&レーンチェンジアシストの2種類となっている。

すでに高い走破性を兼ね備えたミニバンとしては唯一無二の存在だったデリカD:5だが、先進安全装備も備えたことで、一般的にミニバンユーザーの選択肢にも入るようになったのではないだろうか。

●進化度数:10点(超絶的に進化した)

三菱 デリカ D:5│燃費性能比較

カタログ燃費で比較しても従来型が13.0km/L、新型が13.6km/Lと新型は燃費性能も向上していることが分かる(共にJC08モード燃費の数値)。これは新たに採用された8速ATが効いている面もあるだろうが、トルクアップしたエンジンとの組み合わせを考えると実燃費はさらに従来型よりアップする可能性もありそうだ。

●進化度数:7点(大幅に進化した)

三菱 デリカ D:5│グレード構成・価格比較

三菱 新型デリカD:5

2.2リッターディーゼルターボエンジンに8速ATを組み合わせ、4輪を駆動するというパワートレインはすべてのグレードで共通となる。

ベーシックグレードとなるM(3,842,640 円)、装備充実の量販グレードG(3,942,000 円)、Gをベースに運転席パワーシートや電動リアゲートを追加したG-Power Package(4,082,400 円)、そして最上級グレードとなるP(4,216,320 円)という4グレード展開となっている。

乗車定員はMが8人、それ以外のグレードでは7人のキャプテンシート仕様と8人のベンチシートが選択可能だ。

なお、都会的なエクステリアのURBAN GEARはGとG-Power Packageが用意され、標準のデリカD:5に対して125,280円高となっている。

ちなみに、今回新型となったのはディーゼルエンジン搭載車のみであり、ガソリンエンジン搭載車は従来型が継続販売されている。

三菱 新型デリカD:5

普段はフォーマルに、週末はアクティブに使いたいオールラウンドミニバン

三菱 新型デリカD:5 URBAN GEAR グレード:G-Power package│ボディカラー:ウォームホワイトパール│シートカラー:ブラック│7人乗り仕様

登場が2007年1月ということで、すでに12年が経過していたデリカD:5。

圧倒的な悪路走破性などは今でも一線級の実力を持っていたが、それ以外の部分では古さを隠せなかったというのもまた事実。しかし、今回の新型では、フロントセクションを作り替え、エンジンやミッション、ドライブトレインにまで手を入れる大掛かりな改良で、一気に12年のタイムラグを埋めた形となった。

どうしてもその強烈なルックスに注目が集まりがちではあるが、実際に乗ってみるとすべての部分で大幅に性能が向上していることが実感でき、これならば従来のデリカファン以外の客層も取り込めるのではないかと思えるほどだった。

三菱 新型デリカD:5 グレード:P│ボディカラー:ホワイトパール×スターリングシルバーメタリック│シートカラー:ベージュ│8人乗り仕様

今となってはセダンよりもミニバンの方が快適な移動手段として選ばれることが多くなってきているが、新型デリカD:5はそんなプレミアムミニバンの中に入っても十分戦える力を備えたモデルとなったというのが正直な感想だ。

当然、このジャンルには絶対王者のトヨタ アルファード/ヴェルファイアが存在しており、さすがにそこに迫る高級感とまでは言えないが、悪路走破性も含めた動力性能に関してはデリカD:5の方が上回っている印象であり、普段はフォーマルに、週末はアクティブに使いたい人にとっては1台ですべてをこなせる、まさにオールラウンドミニバンと言えるのではないだろうか。

[筆者:小鮒康一/撮影:茂呂 幸正・和田 清志]

© 株式会社MOTA