【MLB】元3冠王カブレラ、“不良債権”化への批判に真っ向反論「なぜ怒るか分からない」

タイガースのミゲル・カブレラ【写真:Getty Images】

2014年に超大型契約も最近2年で成績が急降下「僕は謝罪するつもりはない」

 メジャーリーグでは、2月下旬から超大型契約が続々と誕生した。FA史上で最大の注目を浴びていたブライス・ハーパー外野手は、13年総額3億3000万ドル(約368億7100万円)でフィリーズと契約。メジャーリーグ史上最高総額の契約として話題となったものの、一方で13年という契約期間の長さから“不良債権”化を危惧する声もある。大型契約を結んだ選手は活躍できなければ批判にさらされる可能性が高いが、タイガースと2023年まで契約を結びながら2017年以降は成績が急降下している元3冠王のミゲル・カブレラ内野手は、米メディアの取材に対して「僕は謝罪するつもりはない」と胸を張っている。

 カブレラは2012年に打率.330、44本塁打、139打点で45年ぶりの3冠王に輝いた。通算4度の首位打者、2度の本塁打王、2度の打点王という実績を誇り、ア・リーグMVPにも2度輝いている。通算打率.3165は、ホセ・アルトゥーベ内野手(アストロズ)の.3164、イチロー外野手(マリナーズ)の.311を抑えて現役1位。一時期は“現役最強打者”として君臨し、このまま引退しても殿堂入りすると見られている。

 2013年に3度目の首位打者に輝くと、2014年3月にはタイガースと8年総額2億4800万ドル(約277億円)で契約を延長。もっとも、これは2016年から2023年までの契約で、この時点でカブレラは2014、15年と計4400万ドル(約49億1400万円)の契約を残していた。つまり、10年総額2億9200万ドル(約326億1400万円)を保証される形となったのだ。

 その後、2015年に打率.338で4度目の首位打者に輝くなど3年連続で打率3割を記録したものの、2017年は打率.249、16本塁打、60打点と成績が急下降。復活が期待された昨季は6月に左上腕二頭筋の腱断裂の重傷を負い、早々にシーズン絶望となった。わずか38試合出場。かつての最強打者は、すでに35歳という年齢もあり、このまま“不良債権”化することが危惧されている。

「僕は謝罪するつもりはない。なぜ申し訳なく思うべきなんだ?」

 ただ、米全国紙「USAトゥデー」は「ミゲル・カブレラは大型契約について謝罪するつもりはない『なぜ申し訳なく思うべきなんだ?』」とのタイトルで特集を掲載。高給取りでありながら、ここ2年は成績を残せていないことに対する批判に本人は“反論”している。

 記事では「彼は球団史上最高の選手の1人であり、将来殿堂入りするが、現在は厄介な存在だと考えられている」と指摘。そして、「ミゲル・カブレラは将来に向け再建中の今季どこにも向かわない球団にいるが、その球団は過去の彼のパフォーマンスに対し大きく不釣り合いなお金を費やしている」と厳しく伝えている。再建期を迎えているタイガースには、特にカブレラのような選手は不釣り合いだというのだ。

 さらに、カブレラの過去の輝かしい実績を紹介し、「そうした輝かしい時代により、彼は大きな金額を手にした」と認めながらも、「最近では、カブレラは長期契約のリスクと怖さを象徴している」と言及。2023年まで1億6200万ドル(約181億円)の契約を残しており、その時点でカブレラは40歳になるとも伝えている。

 当然ながら、“不良債権”化を批判する声は少なくない。ただ、本人は気にしていない様子。記事の中で「なぜ人々が僕たちに怒るのか分からない。僕たちがお金をもらうのが気に入らないんだ。僕が(大きな金額を)支払われていなかった最初の5年間、彼らはなぜ怒っていなかったんだ? 彼らは僕がこの契約に見合っていないと言うことはできる。本当に何だって言っていいんだ。だけど、僕の気持ちは傷つかないよ。僕は謝罪するつもりはない。なぜ申し訳なく思うべきなんだ? 球団がお金を失っているわけじゃないだろう」とコメントしている。

 今オフ、メジャーではハーパーだけでなく、同じFAのマニー・マチャドも10年総額3億ドル(約335億円)でパドレスと契約。さらに、ノーラン・アレナド内野手も、年平均で野手史上最高額を更新する8年総額2億6000万ドル(約290億円)でロッキーズとの契約を延長した。ハーパーとマチャドは26歳、アレナドは27歳とまだ若いが、将来を不安視する声は少なくない。

マチャドとハーパーの契約にも理解、批判の声は「クレイジー」

 カブレラは、マチャドとハーパーの契約についても、同紙の中で「(批判的なことを言う人たちについて)理解できないよ。クレイジーだ。彼らは素晴らしい選手たちだ。フランチャイズプレーヤーたちだ。ハーパーとマニーはすでに素晴らしい選手たちで、まだ最盛期を迎えていない。まだ学んでいるんだ。彼らは信じられないくらい素晴らしいことをするだろうから、しっかりと見ておくべきだ」と理解を示している。そして、2人の“価値”はプレーにとどまらないと言及。「どれだけの人たちが試合を観に行くと思う? どれだけの人たちが彼らを見るために敵地の球場に現れると思う? 彼らが球団にもたらせるものを知っているか? 僕たちがデトロイトで良いシーズンを送っていた時も信じられなかった。どこへ行っても満員だった。皆、僕たちがプレーするのを見たかったんだ。フィリーズもそうなるよ」。観客動員などの面でも、スター選手たちの貢献度は高いと見ている。

 毎年安定した成績を残すというのは、いい選手の条件の一つでもある。ただ、当然ながら不調の年もある。不運な負傷もある。カブレラは理解を求めた上で、選手にとって最も重要なことが何かを説いている。

「毎年良い成績が残せないことを理解しなければならない。上手くいく時もあれば、運が悪く、怪我をする時もある。毎年素晴らしい成績は残せない。皆、それを理解していないんだ。でも、僕のモチベーションは人々が間違っていると証明することではなく、契約に見合っていると証明することでもなく、試合に勝つことなんだ。ベストを尽くして勝つ。そうすれば、皆幸せだ。勝てば全て解決するよ」

 ひたすらタイガースの勝利のためにプレーするカブレラ。その柔らかい打撃、高い技術は年齢に左右されるものではないはず。36歳を迎えるシーズンで復活を果たせるだろうか。(Full-Count編集部)

© 株式会社Creative2