サン・キュー

 文中に〈泣き虫〉とあるお父さんの涙腺は果たして無事だろうか、と真っ先に心配になった。昨日の本紙「声」欄に載った高校生、山本真衣さんの投稿▲未読の方のために-。娘の卒業で、3年間続いた登校の“アッシー君”もお役御免だ-と父、諭さんの安ど感が半分、寂しさ半分の「声」が掲載されたのは3月1日。ちょうど真衣さんの卒業式の朝だった。と、真衣さんからすかさず本紙に返事が届いた▲絶対に座れるし、好きな音楽が聴けて、参考書も見られるし、何より寝られる-真衣さんは快適な通学への感謝をつづった。〈最後の登校の時に感謝の気持ちを伝えようかとも思ったが〉朝から泣かれると職場での反応が心配で…と照れ隠しのような憎まれ口もいい▲助手席の真衣さんがどんなに気ままに見えても、車内に会話はなくても、伝わるべき思いはきちんと伝わっていた。「3年間ありがとう」「車の免許を取ったら助手席に乗ってね」。感涙必至のひと言だろう▲それにしても新聞の投書欄にこんな使い途があったか、の驚きと、親子のコミュニケーションのお手伝いができたうれしさと。何だか春空の青さもひときわキラリの昨日の朝▲日付かわって「サン・キュー」の日。面と向かって口にできない「ありがとう」はどうぞ「声」欄のご活用を。(智)

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