親と子、孤立させない 団地に居場所を 相模原でシンポ

ルポライターの杉山春さん

 児童虐待や引きこもりなどの取材を重ねてきたルポライターの杉山春さん(60)=川崎市麻生区=が、相模原市にある県営団地で親と子どもの居場所づくりに取り組んでいる。活動を始めて1年余り。確かな手応えをつかむ一方、運営を支えるボランティアの確保が課題になっている。杉山さんは「困難を抱える子どもや家族が、安心して過ごせる場所を残したい」と協力を呼び掛けている。

 杉山さんが共同代表を務める活動団体「みんなの居場所てとてと」を立ち上げたのは2018年2月。市内で別の居場所づくりに携わった経験があり、悩みを持つ子どもや保護者の孤立を防ぐため、社会とのつながりが持てる場をもっと増やそうと考えたのがきっかけだ。

 てとてとは、県営大島団地(同市緑区)の集会所を拠点に、月1、2回の頻度で開いている。利用者は未就学児から中学生が中心で、多い時には20人ほどが集まってくる。おにぎりやお菓子を用意し、子どもたちはおしゃべりをしたり、カードゲームをしたりして思い思いに過ごす。

 寄り添うのは学生や主婦、児童福祉施設職員らのボランティア。「子どもが大人を信用し、頑張らない“素の自分”を見せられる場所」(杉山さん)を目指している。

 子どもだけでなく、家族も対象にしているのは理由がある。団地には一人親家庭や外国籍の住民が多く、子どもに目が行き届かないケースも少なくない。

 杉山さんはこれまで多くの虐待事件を取材し、誰にも相談できず追い詰められていく親の姿を見てきた。「家庭に全ての責任を背負わせてしまう時代。困ったときにSOSが出せるように、保護者の気持ちも聞ける場にしたかった」。家族への生活支援や関係機関との橋渡しにも力を入れる。

 こうした活動に手応えを感じる一方、支える側の人手不足が悩みの種だ。「一緒の時間を過ごす中で、子どもや家庭の抱える課題が見えてくる。だからこそ地域に居場所は欠かせない。子どもも大人も安心して集える場を保っていきたい」と杉山さんは願う。

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 「みんなの居場所てとてと」は活動開始から1年を記念し、16日午後2時からシンポジウム「居場所から見える子ども・地域・社会」をユニコムプラザさがみはらセミナールーム1(相模原市南区)で開く。杉山さんがこれまでの活動や見えてきた課題について報告する。その後、市内で活動する団体の代表らを交えたパネル討論がある。

 参加無料、事前申し込み不要。シンポとボランティアの問い合わせは、てとてと電話090(6701)0027。

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