佐世保と安全保障 沖縄とのつながり(下)生活への影響 「鉄の鳥」トラブル懸念

 「鉄の鳥」が羽を休めているようだった。沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場。英語で猛禽(もうきん)類のミサゴを意味する輸送機オスプレイなどが並ぶ。
 沖縄では米軍機のトラブルが相次いでいる。昨年12月、飛行場そばの緑ケ丘保育園の屋根で、米軍ヘリから落ちたとみられる部品が見つかった。6日後には近くの小学校の運動場にヘリの窓が落下。2016年には普天間所属のオスプレイが名護市沿岸に不時着、大破している。

 5月中旬、緑ケ丘保育園の上空をヘリコプターの旋回音が通過した。「今でも音が近づくと不安になる」。長女(4)を通わせている与那城千恵美さん(45)が表情をこわばらせた。
 あの日のことは、鮮明に覚えている。保護者からの無料通信アプリ「LINE(ライン)」で知った。娘が危険にさらされた恐怖からスマートフォンを持つ手は震え、銀行の駐車場に止めた車内で号泣した。迎えに行くと、娘の様子に変わりはなく、胸をなで下ろした。不安にさせないよう涙をこらえた。

米軍ヘリから落下したとみられる部品が見つかった屋根を指さし「同じような思いはさせたくない」と話す与那城さん(右)と宮城さん=沖縄県宜野湾市、緑ケ丘保育園

 保護者はその後、原因究明や保育園上空の飛行禁止を求めて活動。署名や嘆願書を関係省庁に提出した。しかし、米軍側は関与を否定。それを理由に「米軍に伝える」と一点張りの日本側の姿勢に、憤りと悔しさにさいなまれている。
 与那城さんは基地に囲まれて育ち、それまで特別意識してこなかった。しかし“当事者”になり、「何も気付かないようかけられていた『魔法』が解けた」。活動を続ける父母有志でつくる団体の宮城智子会長(48)は「『まさか』は起こり得る」と警鐘を鳴らす。
 2人は口をそろえ、語気を強める。「同じ思いはさせたくない。何かが起きる前に危険だと気付いてほしい」

 軍用機の事故は米軍に限った話ではない。佐賀県神埼市では2月、陸自ヘリが民家に墜落した。
 水陸機動団発足に伴い、佐世保でも陸自オスプレイやヘリが飛行するという見方もある。防衛省はオスプレイの飛来について「相浦駐屯地での訓練を含め検討している」と否定しない。
 駐屯地そばの相浦地区自治協議会の山口久雄会長(67)は「飛来するにしても住民への配慮や情報提供はあるはず。不安の声は上がっていない」とする。
 一方、水陸両用車の運用部隊が置かれる崎辺分屯地の周辺住民は不安を隠せない。整備工事が進む中、崎辺地区自治協議会の元会長、西川信一さん(82)は訓練や運用が地域に与える影響を懸念する。「人ごとだと考えず、多くの人に目を向けてほしい」


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