伝統の技「宮彫り」に光 神奈川探龍倶楽部が特別賞受賞

龍の彫り物を説明する上田代表。県内全域調査へ、ますます意欲を高めている

 大和市民活動センター(同市深見西)に拠点を置き、神社仏閣にある装飾作品「宮彫り」を調査研究している市民団体「神奈川探龍(たんりゅう)倶楽部」が、2018年度のかながわ観光大賞(県観光協会主催)の審査員特別賞を受賞した。江戸時代に花開いた伝統の技に光を当てる取り組みで、県内全域調査を目標に探し歩く地道な活動が評価された。

 同倶楽部は14年、代表を務める同市在住の上田康史さん(70)が結成。広告業を引退後、趣味で始めたトイレマップづくりで、何度も訪れた鎌倉市内の神社仏閣で龍の彫り物に興味を持ったのが始まりだ。

 メンバーは4人に増えたが、現地調査は上田さんが主に担当する。結果は倶楽部のホームページに随時掲載。鎌倉と大和では「龍めぐり」と銘打った両市内の紹介マップを作成し、ツアーや上映会も企画している。反響も出始め、観光関係者の勧めもあって、対象を県内全ての寺社に広げることにしたという。

 ただ、県内の寺社は約3千と多く、これまでに調査を終えたのは約2100カ所。このうち、拝殿の梁(はり)などに龍の彫り物が確認できたのは1割の約200カ所だった。19年度は約400カ所の調査を予定している。

 上田代表は「調査は宝探しのような楽しさがある。しかし、未調査箇所には駅から遠い辺境部が残されているのでこれからが大変。今回の受賞で活動の認知度が高まり、手伝ってくれる仲間が増えてくれるとありがたい」と話している。

 宮彫りに注目する理由について、上田さんは「日本が申請したユネスコ世界無形文化遺産の伝統技術に含まれる」と説明。その上で「意外だったのは芸術性が高いにもかかわらず、公的資料が少なく、彫り師や制作年代が不明なケースが多いこと。地域資源として保存の在り方を議論する上でも調査は必要で、大和からその重要性を世界に発信していきたい」と意欲を見せている。

 第9回かながわ観光大賞に入賞した神奈川探龍倶楽部を含めた7団体に対する授賞式は12日、横浜市中区で行われる。

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