安心 電波に乗せて FMヨコハマの災害情報

FMヨコハマのスタジオに掲げられている「災害対策マップ」=横浜市西区

 東京湾から三浦半島、そして湘南・西湘と、海岸線が長く延びる神奈川。マリンレジャーをはじめ観光、漁業、そして貿易が盛んな一方で、大規模災害では津波などの被害の拡大が懸念されている。県域放送局の横浜エフエム放送(FMヨコハマ)は災害時に地域情報を迅速に伝える態勢づくりを進め、聴取者に安心を届けている。

 横浜・みなとみらい21(MM21)地区を見渡せる横浜ランドマークタワー10階。スタジオの壁には、2011年の東日本大震災をきっかけに独自に作成した「災害対策マップ」が掲げられている。海岸線沿いに並ぶ25もの漁港や、県内14のコミュニティーFM局の場所と連絡先が一目で分かる神奈川の地図だ。

 県内の漁協に災害情報の提供協力を取り付けるなどマップ作成に携わった同社制作2部長の加藤直裕さん(53)は「音楽ステーションとして親しまれているが、海に囲まれた神奈川の放送局として常に緊張感を持って災害に備えている」と説明する。

 県内のコミュニティーFM局とは「神奈川エフエムネットワーク」を通じて相互協力協定を結んでいる。県内で震度5強以上の地震が発生した場合などに、各局が行う電話取材や現地リポートの内容を互いに伝える。

 神奈川新聞社も同ネットワークに加わり、ウェブサイト「カナロコ」に掲載される災害情報が各局から放送される。加藤さんは「現地の様子や生活に密着した情報を互いに提供できるのが神奈川の強み」と話す。

 近年、ラジオの価値が見直されている。被災地では停電のためテレビやインターネットが見られず、多くの人がラジオに耳を傾けた。ラジオは災害情報を伝えるだけでなく、DJの声や音楽で被災者らを励まし続けた。

 2013年には基幹送信所を大山山頂付近(秦野市)に移転。安定した電波を県域に届けているが、万一に備え、大山基幹局と円海山(横浜市)の中継局には放送設備を設けた。加藤さんは「SNS(会員制交流サイト)も効果的に使いながら、地域メディアの使命である情報発信を途切れさせない」と意気込んでいる。

 「神奈川エフエムネットワーク」は幹事社のFMヨコハマのほか▽FMやまと▽FM湘南ナパサ▽FM BLUE SHONAN▽湘南ビーチFM▽かわさきFM▽Ciao!▽鎌倉エフエム▽レディオ湘南▽エフエム戸塚▽FM HOT 839▽FM Salus▽FMカオン▽湘南マジックウェイブ▽FMおだわら-の15局(周波数順)と神奈川新聞社で構成。FMヨコハマは県と横浜、川崎、相模原、厚木、伊勢原の各市、東京都町田市、県警本部、自衛隊神奈川地方協力本部との間で災害時の放送協定を締結している。

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