とある、月曜日の朝のできごと
包帯ぐるぐる巻きで出勤してきた編集部 大迫。
週末に登山に行っていたようだが、擦り傷だらけ。いったい何があったのか・・・。
編集部 生井
どうしたんですか?そんな「怪我人のテンプレ」みたいな格好して。
編集部 大迫
いやー昨日、山頂でゆっくりしすぎたから急いで下山してたら、道間違えるわ、転ぶわで!めっちゃ運悪かってん(笑)
編集部 生井
今回の怪我、本当に「運が悪かっただけだ」と思ってます?
編集部 大迫
えっ?なになに?急にどうしたん?こわいこわい!
編集部 生井
今回は怪我ですみましたが、行動不能で遭難する可能性が十分にあったってことですよ。
編集部 大迫
ほんまに?
編集部 生井
えぇ。それに、登山の遭難は下山中(3/4の行程部分)に起きることが多いって知ってますか?
事実、登山の終盤で遭難は起こっている
山岳遭難の研究で知られる青山千彰氏の著書『山岳遭難の構図』では、このように書かれています。
日帰り登山の事故は午後2時に集中している。
その日の山行行程を感覚的に前半(1/4行程)、前半(2/4行程)、後半(3/4行程)、後半(4/4行程)の4段階に分けた時、事故の発生する行程は常に3/4行程がピークを描く。さらに「登り斜面」か「下り斜面」かを聞くと、圧倒的に下り斜面の3/4行程で発生している。
出典:「山岳遭難の構図」青山千彰 著より抜粋
編集部 大迫
ほんまや。でも、なんでそうなるん?
編集部 生井
原因はいろいろ言われているので一概に言えませんが、振り返るために今回の事故の詳細を教えてくれますか?
事故は起こるべくして起こっていた
編集部 大迫
こんな感じかな?
編集部 生井
ここにはいくつか”遭難のあるある”が含まれているのが、わかりますか?わかりやすくすると、こんな感じです。
編集部 生井
赤字の部分が危険な部分です。パッと見ただけでも、結構はいってますね。
編集部 生井
まぁ、今回は遭難にならず無事でよかったです。でも次はそんなラッキーが無いかもしれないので、遭難につながりやすいポイントを整理して、次の登山を安全に楽しむためのヒントを抑えておきましょう。
編集部 生井
大怪我や遭難につながりそうだったポイントをまとめるとこんな感じです。1つ1つ謎を解いていきましょう。
【ポイント1】時間がないから焦って行動した
山頂でゆっくり景色や山ごはんを楽しんだり、昼寝をしたりと過ごし方はさまざま。でも、ゆっくりしすぎて時間が遅くなっちゃった、なんて経験がある人も多いのではないでしょうか?
編集部 生井
ズバリ言いますが、今回は時間管理が甘かったですね。それによって「早く下らなきゃ!」と焦りがでて、負の連鎖を生んでますよね。
編集部 大迫
体力に自信はあるから、日暮れまでには下りられると思ったんだよな。
編集部 生井
ちなみに、下りの分岐で地図&コンパスや登山用GPSアプリで、現在地や進む方角の確認しました?
編集部 大迫
一度通ったから、わかると思ってやってない。道しるべもあったし。
編集部 生井
取り乱しました。道具を持っていたのはもちろん素晴らしいですが、使わないと意味ないですよ。
編集部 大迫
ぐぅ。(実際、道しるべを見落として迷っているし、おっしゃる通りです。)
編集部 生井
(ぐぅの音はでるんだ)わかってくれてうれしいです。道具は使わないと意味がないのと、同じ道でも登りと下りでは見え方が結構違うので、初めて通るつもりでいたほうがいいですよ。
ネクスト登山のヒント
①立てた計画どおり行動できるように、時間配分は気を配ろう。
②下りは勢いもつくので、道しるべを見落としがち。
③分岐が出たら地図やアプリで必ずチェック!ミスをしないことが下山の近道。
【ポイント2】転んで怪我をした
転んで怪我をすると、最悪の場合行動不能に。同じコケるでも、登りでコケるのと下りでコケるのでは危険度が変わるんです。
編集部 大迫
いやー、結構急いで下りてたから根っこに足をとられて、結構盛大に転んだんだよね。ちょっと、ひっかかっただけなのにゴロロゴロゴロ~って(笑)
編集部 生井
ヘラヘラ笑ってますけど、怪我ですんでラッキーですよ?そもそも、下りは疲れもでてきて集中力が切れやすいのはわかりますか?
編集部 大迫
えっ、なんで?登りのほうが汗もかくし、なんか疲れるやん!
編集部 生井
確かに登りは疲れを感じやすいですね。でも、よく考えると疲れを感じる登りを終えて、そこからさらに行動しているから下りのほうが体も疲れているんですよ。
編集部 大迫
だから、下山の時って足をひっかけたり、浮石を踏みやすくなるのか。
編集部 生井
それもありますね。下山の時はエネルギー補給も忘れがちなので、疲れやエネルギー不足から集中力が切れたり、足が上がりにくくなったり、浮石を踏んでしまったり、それこそ道しるべを見落としてしまうなんてことも。
編集部 大迫
下山の時も栄養補給したり、下山前にストレッチしたりして筋肉をほぐしたりするほうがいいね。
編集部 生井
そうですね。それともう1つ注意したいのは、そもそも同じコケるにしても、下りのほうが大怪我につながりやすい、ってことなんです
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下山でコケると大怪我になりやすい理由
編集部 生井
写真のとおり、登りだとコケても前に手をつくことができますけど、下りだと手をつくことができずに前に落ちやすくなるんです。
編集部 大迫
当たり前だけど、考えると怖いね。下りは足への負担も大きくなるから、膝が痛くなったりもするしね。
編集部 生井
単にコケて擦りむく、それくらいであれば良いですが、こんな岩場でコケると大怪我につながったり、コケた勢いで下に転落なんてことも少ないことではないんですよ。
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ネクスト登山のヒント
①”疲れ”や”集中力切れ”は見えないところで進行する
②ストレッチや栄養補給で少しずつケアをしよう
③下りでコケると大怪我につながりやすいので慎重に
【ポイント3】道に迷ったらとりあえず下る
分岐を間違えて道に迷った。そのまま下り続け、今回は運良く登山道に復帰。でも、本当にこれでよかったんでしょうか?
編集部 生井
これは本当に単なるラッキーです!今後は道を間違えたことに気づいたら、まずは立ち止まって自分の現在地の確認をしてください。登山用の地図アプリがあるんだから、一発でしょ?
編集部 大迫
まぁでも「下に行けばいづれは山を下りられる」し、結果的に下山できたからいいんじゃない?
編集部 生井
その考え方は危険すぎます!(怒)
編集部 大迫
ごめんなさい。でも、「正常性バイアス」ってなに?
正常性バイアス…心理学用語で、「自分にとって都合の悪い情報」を無視したり、過小評価してしまう人の特性のこと。自然災害や火事、事故、事件などといった自分にとって何らかの被害が予想される状況下にあっても、それを正常な日常生活の延長上の出来事として捉えてしまい、都合の悪い情報を無視したり、「自分は大丈夫」「今回は大丈夫」「まだ大丈夫」などと過小評価するなどして、逃げ遅れの原因となる。
(出典:Wikipediaより抜粋)
編集部 生井
ということです。
編集部 大迫
疲れてたし、なんか登り返すの面倒だったんだよね。
編集部 生井
今回は良かったですけど、例えば・・・
編集部 生井
こんな道が出てきて、下れなくなったらどうするんですか?それこそ悲劇です。基本的には、道に迷ったら現在地を確認しましょう。ボタン1つで現在地を確認できる登山用GPSアプリがあるのに、使わないなんてありえないですよ。
編集部 大迫
そもそも間違わなければ、登り返す必要もないしね。焦らずに確実に行動するほうが結果的には省エネだね。
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ネクスト登山のヒント
①迷ったかな?と思ったらまずが立ち止まって現在地を確認。
②使える機能や道具は使って、ミスなく道を選ぼう。
③なんとかなる!だけで行動するのは危険。
下山時の「焦りと油断」は大怪我につながります!
つらい登りが終わって山頂を満喫した後は、ついつい気も緩みがち。でも、最後まで油断は禁物です。また、時間がないから焦って行動するのも危険。
ちょっとした油断や焦りが、大きな怪我や遭難を引き起こすきっかけになりかねません。「遭難あるある」に気を配りながら、下山しましょう。