松田・寄地区の茶畑再生 「神奈川の宝」巨匠がブランド化

茶畑の再生は、人の背丈ほども伸びた茶樹を刈る作業から始められた =松田町寄(茶来未提供)

 世界的な茶のマイスターが、農家の後継者不足などで衰退しつつある松田町寄(やどりき)地区の茶畑の再生に乗り出している。新ブランド「丹沢大山茶」を昨年に立ち上げ、茶農家が安定した収入を得られる仕組みづくりを模索する。

 佐々木健さん(47)は、斬新な茶商品を提案する世界緑茶コンテストで2009年と13年に最高金賞を受賞。茶の製造・販売などを行う「茶来未(ちゃくみ)」(藤沢市遠藤)を経営し、「藤沢マイスター」に認定されている。

 寄産の茶で作る「丹沢大山茶」は、寄地区が丹沢山塊の南端に当たり、同地区の一部がかかる「丹沢大山国定公園」から名付けた。寄の茶樹は一般的な「やぶきた」だが樹齢50~60年のものが多く、他では見られない原種に近い。味には高級茶とされる静岡・天竜茶のような力強さがあるという。

 主に中山間地で栽培されている茶は、最近は作業に手間がかかる割に単価が下がっていることなどから、高齢化とともに後継者不足も深刻化している。昼夜の寒暖差があり、川霧などが発生するため茶栽培には適している寄地区でも同様だ。近年ではツタが覆う放棄された茶畑が目に付くようになってきた。

 佐々木さんは寄地区の知人から「茶畑を見てほしい」と頼まれたのをきっかけに、17年から栽培放棄された茶畑を借り受けて栽培を始めた。

 最初は栽培どころではなかった。茶樹は人の背丈以上に伸び、「ジャングルのような状態」(佐々木さん)。イノシシの出没におびえながら、分け入って機械でバリバリと刈っていった。

 18年には生葉で1.5トンの収穫があり、初めて「丹沢大山茶」を世に出した。始めた頃は約30アールだった茶畑は貸してくれる農家が増え、現在は同地区では最大規模の計約1ヘクタールになる。今年は2トンの収穫を見込む。

 佐々木さんは「寄地区の茶は神奈川の宝。しっかり残さないといけない」と話し、自社茶園だけでなく、周辺農家からの買い取りや6次産業化を支援することで、茶農家の安定的な収入増を考えている。

 丹沢大山茶の問い合わせは、茶来未電話0466(54)9205。

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