「郵便の父」前島密、没後100年 来月、横須賀で墓前祭

 郵便制度を創設した前島密の墓前祭が4月27日、浄楽寺(横須賀市芦名2丁目)で開かれる。没後100年を記念し、近代化に幅広く貢献した「郵便の父」をたたえるため、葉に字が書け、「はがき(葉書)」の語源になったタラヨウの木を記念植樹する予定。

 主催は「日本文明の一大恩人前島密翁を称(たた)える会」。日本郵政関係者や前島の出生地・新潟県上越市民ら200人以上が参列、境内にある前島の墓前で焼香し、植樹する。記念パンフレットや書籍なども配布する予定。

 前島は1835年に生まれ、明治政府で郵便事業を創業したほか、郵便為替、郵便貯金など郵政3事業の基礎を確立。切手などの用語も定めた。「縁の下の力持ちになることを厭(いと)うな。人のためによかれと願う心を常に持てよ」を信条に、日本の近代化に心血を注いだ前島。▽大坂遷都論を唱える大久保利通に江戸遷都を建言▽鉄道敷設に先立ち建設費と収支見積もりを立案▽訓盲院(現・筑波大学付属視覚特別支援学校)の創立▽東京専門学校(現・早稲田大学)の創立に参画▽新聞事業の育成-などの功績も残した。

 元鎌倉材木座郵便局長で称える会会長の吉崎庄司さん(89)は「地主らを郵便局長にし、屋敷の一部を提供させる形で、わずか1年で全国に郵便網を築き上げた。近代化に果たした役割は極めて大きい」と説明。「坂本龍馬のように目立ったわけではないが、常に縁の下の力持ちであろうとした生き方も素晴らしい」と称賛する。

 1919年に84歳で亡くなるまでの8年間、晩年を浄楽寺の土地に建てた山荘で過ごした。現在の墓所の地は、生前の夫妻の富士見スポットとされ、寺の境内にある墓は富士山をかたどっている。

 吉崎さんは「山荘に村人を招き、夫人の三味線の伴奏に合わせて趣味の尺八を披露したり、小学校の行事にも参加したりしたそう。この地域を大切にする思いもあったんだと思う」と話す。大きな節目となる墓前祭について「この先も前島さんの精神を後世に引き継いでいく機会にしたい」と話している。

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