カズオイシグロ×渡辺謙×8Kドラマ「“よくやったなNHK”と思う企画」

3月24日放送のNHK BS8Kスペシャルドラマ「浮世の画家」(午後9:00)の試写会に主演の渡辺謙、共演の広末涼子、寺田心が参加した。同作はノーベル文学賞受賞作家・カズオイシグロ氏による同名小説をスーパーハイビジョン(8K)でドラマ化したもので、渡辺は「『よくやったなNHK』と思うぐらい難しい企画。まずこの話をいただいて原作を読んだ時に『これはドラマにゃならんだろうなぁ』と正直思いました」と難しさを感じたことを明かした。

舞台は終戦後の日本を舞台に、焼け跡から徐々に復興の姿を見せていく街の中、一人の老画家の人生を通し、人の心の弱さから生まれる「悲劇」、そして思い違いから生まれる「喜劇」を描く。終戦から3年ほど過ぎ、高名な初老の画家・小野益次(渡辺)は、焼け跡から徐々に復興の姿を見せていく街で平和な日常を過ごしていた。愛すべき娘(広末)や孫(寺田)の訪問、なじみの飲み屋のママとの世間話、戦前からの旧友との邂逅(かいこう)。しかし、次女(前田亜季)に縁談が持ち上がったことから、小野は周囲の視線の変化に気付き始める。

渡辺はドラマ化の困難さを挙げつつも「非常にシンプルでありながら奥深い台本と8Kということもあって、自分の中にあるものをそのまま、ありのまま、感じるままに、この益次という男の人生に乗っけるしかないと楽しみながら撮影しました」と告白。撮影を終えて「人生答えはないんだなっていうのが非常に痛切に思いましたし、自分が思ってること、人が考えてること、それもまったく同じではないんだなっていうことを改めてこのドラマをやって感じました」としみじみ語った。

広末は「淡々としていてクラシカルな本なので、映像になった時にどういうふうに受け止められるのかというのはありました。でも完成した作品を見させていただいて、私としては想像以上に面白くて。地味な作品で退屈かなという危険性も秘めていると思っていたので」とぶっちゃけていた。しかし、見応えがあるようで「クラシックな世界の中に、8Kっていうものだったり、音もすごくすてきで、それは技術的なことだけじゃなくて、出てくる世界観の先駆的である部分が、見ていてすごく充実感があります。受け取っている方が何かすごく重みを感じさせられる作品」とアピールしている。

© 株式会社東京ニュース通信社