集団への言動も削除 法務省がヘイト対策を通知

法務省人権擁護局が関係部局へ出した通知

 インターネット上に氾濫するヘイトスピーチ対策として、法務省人権擁護局は21日までに、不特定多数の集団に向けられた差別的言動も削除要請などの救済措置の対象に含めるよう、関係部局に通知した。従来は原則として特定の個人・団体に対するものに限られていたが、在日コリアンなどが受けている被害の実態に即し、対象範囲を拡大した格好だ。

 人権擁護局は個人の救済措置として、人権侵害と判断した書き込みについてプロバイダーに削除要請を行っている。差別的言動については、2016年10月策定の指針で「特定の者に向けられたもの」を判断基準の一つに挙げている。結果、名指しをしていないといった理由で対象外と判断され、在日外国人という不特定多数に対する差別的言動は許されないとするヘイトスピーチ解消法との齟齬(そご)が指摘されていた。

 今回の通知は「差別的言動は集団や不特定多数に向けられたものが少なくない」とした上で、「その集団に属する者が精神的苦痛を受けるなど具体的な被害が生じている場合、救済を必要とする『特定の者』に対する差別的言動が行われていると評価すべき」として、人権侵犯事件として救済の手続きを進めるよう求めている。

 人権擁護局は「集団に属する人が発言を聞いてどんな気持ちになるかがポイントだ。『××に住む○○人は出ていけ』と地域を明示するなどして向けられた範囲が特定されていれば、特定の者に対する差別的言動と評価できるものがあると考えられる」と説明。一方で「地域をどの範囲で示していればいいかの線引きは難しく、前後の文脈などから総合的に判断する必要がある」とする。

 通知は人権擁護部長、地方法務局長に人権擁護局調査救済課長名で出され、8日付。ネット上の差別的言動についての見解を示したものだが、高嶋智光人権擁護局長は「ネット上に限らずヘイトスピーチ全般について同様の考えで対応する」としている。

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