歴史から鑑賞方法まで!日本の刀剣の楽しみ方

武器としての機能性と美しさを併せ持つ日本の刀剣。アニメやゲームなどに登場することも多いので、興味をお持ちの方も多いのではないでしょうか?そこで今回は日本の刀剣の歴史や鑑賞法についてご紹介!

刀剣(日本刀)とは

日本の「刀剣」は、片刃の武器「刀」と両刃の武器「剣」の総称。狭い意味では、「日本刀」という日本特有の製法によってつくられる武器、特に固有の反りを持つ刀のことを意味します(※)。
日本刀は、伝統製鉄法「たたら製鉄」からつくられる高純度の鋼「玉鋼」を原材料としていて、強度と切れ味を高いレベルで兼ね備えているのが特徴。さらにその無駄を削ぎ落とした美しい造形が、古来多くの人々を魅了してきました。現在、日本刀は主に美術品として扱われ、博物館などで鑑賞できます。見所は、刃部分の模様「刃文」や、刀身全体の反り方など。また雷を切ったと伝わる「雷切」のように、刀剣にまつわる様々なエピソードも魅力です。

※厳密には、日本刀は剣や槍、薙刀(なぎなた)、直刀(反りのないまっすぐな刀)なども含みます。

刀剣の歴史

日本の本格的な刀剣生産は、古墳時代(3世紀半ごろ~7世紀末ごろ)に始まります。当初は大陸の影響を受けた直刀が主流でしたが、次第に独自の作刀技術を確立。武士の台頭する鎌倉時代(1185年〜1333年)に刀剣づくりは黄金期を迎えます。同時に、武士と名刀にまつわる様々な物語も生み出され、時代が下ると刀剣は「武士の魂」と呼ばれるほど重要な武器となりました。しかし戦乱が終わって平和の続いた17世紀後半ごろから、刀工業界に陰りが見えはじめます。幕末(1854年〜1867年)の動乱の時代に再び隆盛しますが、1876年の帯刀禁止令「廃刀令」を期に刀剣づくりは急激に衰退。現在、刀工として生計を立てている職人は日本全国に30人程度しかいません。

製法

刀剣づくりは複雑なプロセスを必要としますが、特に重要な工程を中心にご紹介します。
まず高温で加熱した玉鋼を、ハンマーなどで平坦に鍛錬。十分に平たく打ち延ばしたら、鋼を折り返して2枚重ねにし、再度鍛錬します。これを何度も繰り返す工程が、「折り返し鍛錬」。15回折り返すと、鋼は2の15乗で約33,000枚もの層構造を持ち、強靭かつ粘り気のある素材に仕上がります。
次に刀匠のイメージに従い、鋼を刀剣の形につくり上げて行きます。その際に特徴的な工程が、軟らかい鉄を硬い鋼で包み込む「造り込み」。この鍛造法によって折れず、曲がらず、良く斬れるという日本刀の性能が実現されます。
また加熱した刀身を水槽で急冷する「焼き入れ」も大切なステップ。この工程で刀剣の硬度や見た目が決定され、さらに反りも生じます。その重要性から、詳細は古来一子相伝の秘密とされてきました。焼き入れ後は、専門の研ぎ師による研磨などを経て完成に至ります。

刀剣の各部名称

刀剣は本体部分以外にもいくつかのパーツからなっています。まず手で握る部分「柄」。刀剣本体の「茎」という部分に取り付けられています。刀剣の茎以外の部分は「刀身」と呼ばれ、この部分を収めておくためのいれ物が「鞘(さや)」。さらに刀身と柄の間には、手を守る役割をもつ「鍔(つば)」が装着されます。これら柄、鞘、鍔には様々な種類があり、装飾に凝ったものも多数存在。刀剣本体とは独立の美術品としても鑑賞されます。

刀剣の種類

刀剣は、用途とそれに応じた形状・大きさから分類されます。まず騎乗戦を想定したつくりの「太刀」。普通、刃長70cmから80cmほどで、反りが大きいのが特徴。これに対して、歩兵戦向きのつくりなのが「打刀」。太刀に比べると反りが少なく長さも短め(約60cm以上)。博物館などでは太刀は刃の部分を下に、打刀は刃部分を上にして展示されるので、鑑賞の際の参考にしてください。このほか、護身用などの目的で帯刀された刃長30cmから60cmの「脇差」もメジャー。
以上の分類以外にも、「古刀」・「新刀」といった時代区分、「最上大業物」・「大業物」をはじめとした切れ味による区別、「鎬(しのぎ)造り」・「平造り」など造り込みの仕方による種類分けなどもあります。

歴史上著名な刀剣

国宝 名物 童子切安綱

太刀「童子切安綱」は、名刀中の名刀といわれる5つの刀剣「天下五剣」の一つです。刀剣に銘の残る国内最古の刀工「安綱」の作品で、刃長80cm、反り2.7cm。源頼光(948年~1021年)という武士が、悪鬼「酒呑童子(しゅてんどうじ)」の首をこの太刀で切り落としたという伝承で知られています。時の権力者たちの手を渡り歩き、現在は東京国立博物館所蔵。

国宝 名物 三日月宗近

「三日月宗近」は、天下五剣の一つ。刃長80cm、反り2.7cm。987年から989年ごろ京都に住み、神霊とともに鍛治をした伝説で知られる名工「宗近」の数少ない現存作です。日本刀の中では古い時代の作品に属し、風格ある姿をしていて、刃文が三日月の形に見えるのが特徴。その完成された曲線の造形から、最も美しい刀剣とも評されます。東京国立博物館所蔵。

国宝 名物 へし切長谷部

「へし切長谷部」は、有名な武将「織田信長(1534年~1582年)」の愛刀だった刀。長さ64.8cm、反り0.9cm。ある時、信長を怒らせてしまった人物が棚の下に隠れたところ、この刀剣によってその棚ごと圧(へ)し切られてしまいました。このエピソードから、すさまじい切れ味を秘めた名刀として知られています。現在は、福岡県の「福岡市博物館」所蔵。2019年9月7日(土)から11月4日(月)の特別展「侍 ~もののふの美の系譜~ The Exhibition of SAMURAI」で展示される予定です。

刀剣を鑑賞するならココがおすすめ

国宝に指定されている刀剣をはじめ、名刀を鑑賞したい方にオススメの博物館を3つご紹介します!いずれも時期によって展示内容が変わるので、あらかじめ公式ホームページなどでチェックしてから訪れてくださいね。

刀剣博物館

東京に位置する「刀剣博物館」は日本刀を保存・公開している博物館。「太刀 銘 延吉」、「太刀 銘 国行(来)」、「太刀 銘 国行(当麻)」という3つの国宝をはじめ、国指定重要文化財の「太刀 銘 信房作」など数々の名刀を所蔵しています。刀剣類以外にも、刀装や甲冑などを展示。アクセスはJR「両国駅」から徒歩7分ほどです。

通常展入館料:大人1,000円、学生(高校・大学・専門学校)500円

東京国立博物館

「東京国立博物館」は、東京の「上野公園」に位置する博物館。100点近い国宝を含む日本最大級のコレクションを誇り、1日では見て回れないほどの魅力にあふれています。先ほどご紹介した童子切安綱や三日月宗近を所蔵。そのほか国指定重要文化財「石田正宗」など、様々な刀剣を鑑賞できます。英語、中国語、韓国語のパンフレット・解説表示あり。

観覧料:一般620円、大学生410円

京都国立博物館

京都の「京都国立博物館」は100年以上の伝統をもつ博物館です。日本美術の収集・展示をしていて、10,000点以上のコレクションを所蔵。刀剣類の常設展示も行っています。特に、特別展などの際にのみ公開される国宝「太刀 銘 安家」が有名。日本語・英語・中国語・韓国語対応の音声ガイド(1台500円)も用意されています。

名品ギャラリー(平常展示)観覧料:大人520円、大学生260円

刀剣をもっと知るなら

備前おさふね刀剣の里 備前長船刀剣博物館

岡山県の「備前おさふね刀剣の里 備前長船刀剣博物館」は、日本刀専門の博物館。約40の刀剣が常設展示されているほか、刀剣の歴史や時代背景などを解説するコーナーが充実しています。施設内には工房もあり、職人が実際に日本刀をつくる様子を見学可能。特に月1回、1,200度の高熱で玉鋼を打ち延ばす「古式鍛錬」が行われ、多くの刀剣ファンを魅了しています。併設の「ふれあい物産館」も要チェック。模造刀などのお土産を買うことができます。

入館料:一般500円、高校・大学生300円

今回ご紹介した他にも数々の名刀や、刀剣を鑑賞できるスポットが日本にはたくさんあります。興味をお持ちになったら、ぜひ調べてみてくださいね。

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