「危険な踏切」で92歳死亡 35メートル、遮断機なし

事故のあった山の根踏切を調査する国の運輸安全委員会の鉄道事故調査官ら =22日午後4時5分ごろ、逗子市逗子2丁目

 逗子市逗子2丁目のJR横須賀線山の根踏切で21日午後、男性が電車にはねられて死亡した事故で、逗子署は22日、亡くなったのは横浜市港北区に住む無職男性(92)だった、と発表した。踏切には遮断機や警報機が設置されておらず、周辺住民の間では「危険な踏切」として知られていた。国の運輸安全委員会は同日午後、鉄道事故調査官2人を現場に派遣、事故原因の調査を始めた。

 署によると、事故は21日午後5時45分ごろに起きた。男性がJR横須賀線東逗子-逗子間にある踏切を歩いて渡っていたところ、右側から走行してきた久里浜発上総一ノ宮行き上り普通電車にはねられた。

 署は、車載カメラにはねられる直前まで踏切を渡る様子が映っていたことなどから、男性が電車の接近に気付いていなかった可能性もあるとみる。署によると、男性は同日午後、葉山町に墓参りに出掛けた。所持品につえなどはなかった。

 署やJR東日本横浜支社によると、踏切は歩行者専用で、全長35.5メートル、幅約2メートル。同線の上下線のほか、増結車両の留置用など複数の線路が走っている。

 距離が長い一方で、警報機や遮断機が設置されていないため、周辺住民は「危険な踏切」と受け止めていた。小学生の子どもを持つ主婦2人は「危ないので子ども一人では絶対に歩かせなかった」と口をそろえる。

 その一方で、逗子駅周辺などへの近道として利用もされていた。踏切を渡らずに駅周辺に向かうためには、約280メートル西にある歩道橋まで歩き、歩道橋の階段を昇り降りするか、歩道橋近くの別の踏切を渡るかする必要がある。70年近く地域で暮らす男性(76)は「歩道橋まで歩くのは遠回り。道路も幅が狭く、歩きにくい」と説明。「目視で安全を確認した上で渡る人が多い」と話す。70代の女性は「悲しい事故が起きないよう、何か安全対策を施した方が良い」と肩を落とした。

 国の運輸安全委員会は、警報機も遮断機もない、または遮断機がない踏切で死亡事故が起きた場合、鉄道事故調査官を派遣しており、今回も基準にのっとって派遣した。

 調査官2人は22日午後3時半前から約2時間、現地でJR東日本関係者らから話を聞くなどした。運輸安全委員会は原因を分析し、1年以内に報告書をまとめる予定。

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