あ~疲れた…!アルプスの山小屋とかで働けたら最高だよなあ
登山大好きなみなさん、突然ですが、365日24時間ず~っと山のことを考えてえたいな~と思うこと、ありませんか。特に毎朝毎晩、満員電車に揺られて通勤をしている時とか。ああ、この人混みから離脱して、今すぐ山に行きたい!そう思いませんか?私は思います。
そんなときふと頭をよぎるのは、好きな「山」で働けたらなあという事。山岳ガイドには経験や体力が必要ですが、「山小屋」なら自分でもできるかも?なんて思う事ありませんか。でもお給料とかお風呂とか恋愛とかってどうなっちゃうの?都会で働くサラリーマンにはなかなか思い切れないのも事実です。そこで、実際に山小屋で働いていた人に「山小屋で働く」ことについて聞いちゃいました!
今回、教えてくれた人
今回、2名の方にお話を伺いました!
<匿名希望さん>
勤務先:涸沢小屋
北アルプス・穂高連峰にかこまれた「涸沢カール」にある、夏季のみ営業の小屋。北穂高岳や奥穂高岳などへ向かう登山ルートの拠点となる小屋。紅葉シーズンには絶景が見られることで有名。
<柴田さん>
勤務先:黒百合ヒュッテ
八ヶ岳にある通年営業の小屋。看板メニューのビーフシチューをはじめ、カップケーキやカフェメニューが人気。定期的に開催されるミニコンサートやオリジナルグッズも話題を呼び、女性に人気の山小屋。
いきなりですが…「山小屋で働く」のは楽しいことばかりではない!
そうですよね、わかっていますよ、大人ですから。好きを仕事にするのはそれなりの苦労もあるはずです。実際にどんな仕事をしているのか、詳しく聞いてみました。
山小屋での1日のスケジュールは…
季節や小屋にも異なりますが、おおよそ上記のようなスケジュールで働いているようです。ハイシーズンには3時前に厨房に立つことも…。そのぶん就寝時間は早いですね。お茶休憩や昼食の時間が決まっている小屋もあれば、受付や売店業務の合間に交代で休憩し、昼食などを取る場合もあるようです。
柴田さん
昼間は名物のビーフシチューや、ケーキセット等軽食の注文で忙しいです。うちの小屋は分業制ではなく、誰がどこに就いてもできるようになっています。
小屋の業務は受付・調理・配膳・清掃等・売店運営などの接客業務のほか、水づくり、歩荷、登山道の整備、雪かきなど多岐にわたるそう。
匿名希望さん
時には電気を起こすための発電機が壊れたり、水が出にくくなったりアクシデントも発生します。
ですが、場所が場所だけに、専門の整備師等をすぐに呼ぶことは出来ないので、小屋番で知恵と力を合わせて何とかします。
何かトラブルが起きたときは大変そうです…。
休憩時間は、散歩、読書、昼寝など、皆さん自由に過ごしているよう。屋根の上でギターを弾く、なんてちょっとおしゃれな感じの人も!
どんな部屋で暮らしているの?
柴田さん
男子は雑魚寝、女性は女性で部屋があります。
匿名希望さん
一応カーテンでは仕切っていますが、布団を敷いた1畳ほどのスペースが自分の空間です。
男女は分かれているようですが、基本的に共同生活で、プライバシーは無いと思ったほうが良さそうです。
みんな山が好きなわけじゃない?山小屋で働く人ってどんな人?
匿名希望さん
それはそれは怖くて恐ろしいならず者ばかりです。…嘘です。
柴田さん
自分を持っていて、素敵な人が多いですよ!
夏期限定で営業する小屋は、冬はスキー場やレジャー施設等、農園などで働き、小屋の季節になると集まってくるという方が多いようですよ。みなさん、やはり「普通のサラリーマン」というわけでは無さそう。不思議なことに、山好きなひとばかりではないんだそうです。みなさん「山小屋」が好きなんですね。
意外なメリットも!山小屋で働いていて良かった点
山小屋での生活やお仕事がなんとなくわかってきたところで、山小屋で働いていて「良かった~」と思う点も教えていただきました。意外なメリットも!?
貯金するには最高すぎる環境!なぜなら「使うところがない」から…
まずは生きていくのに大切な「お金」について。高収入とはいかないようですが、使うところがないので貯金するのには最高の環境とのこと。具体的なお給料は日給8000円、月給20万円くらいからが相場のよう。3週間~1か月などある程度連続で働き、1週間~10日程度まとめて休みをもらう、というサイクルが一般的とのことでした。
匿名希望さん
お金は使う機会がないので案外貯まります。お休みはまとめて取らないと、上下山で終わってしまうので…。
柴田さん
海外旅行や長期旅行の資金などにする人も多いですよ!
大きな声では言えないけど…山で入る風呂は最高に気持ちいい!
全部の小屋で、というわけではないそうですが、山小屋にはお風呂があり従業員は入れるそうです。接客業ですし、その前に人間ですからお風呂くらいはありますよね…。ただ、小屋開け時期はライフラインの獲得から始まるため、10日ほど入れないこともあるそう。山では水は貴重なので、お客さんの分まではお風呂の水を確保できない…ということのようです。
匿名希望さん
夏でも涼しいので案外臭くなりません!でも、お風呂は楽しみでした。
柴田さん
黒百合ヒュッテでは1週間に1回、登山口の渋の湯か唐沢鉱泉に入りに行きます。
夕飯は毎日「カレーライス」?いいえ、全然おいしいものいっぱい食べてました
小屋によっては夕飯は「毎日カレー」の小屋もありますよね。従業員さんも、毎日お客さんと同じメニュー(カレーの小屋はカレー)を食べているのでしょうか。実は、小屋で働く人はお客さんと同じものは食べていないんだそう!スタッフ同士で得意料理をふるまったりもするそうですよ!料理ができる人は重宝されそうですね。
匿名希望さん
晩御飯は小屋番一の料理人が毎日用意してくれました!お酒も毎晩飲んでいたので、1シーズンでかなり太ってしまいました…
柴田さん
オーナーさんの畑で採れた無農薬野菜で食べたいものを作ったりもします。お客さんへの食事にもおいしい野菜を使っていますよ。
出会って結婚した人も!運命の相手にはめぐり逢いやすい
柴田さん
実は…黒百合ヒュッテで出会って、結婚しました!今は夫婦で小屋の仕事をしています。
共同生活を余儀なくされる環境のため、人との距離は縮まりやすい=人生の伴侶にも出会いやすい!?実際、出会って結婚する方はそれなりにいるようです。「今はお山が恋人さ」と強がっているけど結婚したくてたまらないあなたは、今すぐ仕事辞めて山小屋で働いてみませんか?
匿名希望さん
同じような生き方をしている者同士、ひかれあう何かがあるのかもしれませんね。
※個人差がありますので絶対に出会えるわけではありません
これは覚悟しておこう!山小屋で働くのに大変なこと
いい面があれば、ツライ面もある…。ぶっちゃけ何が辛いか、教えてもらいました。
すぐに病院に行くのは無理。病気やケガは最大の敵
匿名希望さん
酸素が薄いので病気やケガが治りにくい気がします。
柴田さん
日頃から気を付けていますが、どうしてもの時は下山します…。
当然、病気やけがはするときはしますが、下界と同じ感覚で病院には行けません。歩けなくなったり重症の場合はヘリで搬送されることもあるようですが、病院に行きたい場合は自力で下山することに。歩いてしか行けませんからね、当たり前ですが、ツライです…
ハイシーズンは混雑必須。山の上でも満員電車のようなことは、やっぱり起こる
山も下界と一緒で人口の分母が増えると、ゴミの多さやマナーの悪さが目立つそうです。登山をたくさんの人に楽しんでほしい反面、環境に悪い影響を与えてしまうこともあり、心の中で複雑な思いを抱くこともあるそう。
匿名希望さん
「せっかく登ってきたんだから」「ちょっとくらいいいじゃない」がダメな境界線を広げてしまうことに。山のほうが人間より年長者なので、敬意をもってうまく付き合っていきたいものです。
山と人の間を調整する役が「小屋番」なのかもしれません。
山小屋で働くには、ずばりこんな人が向いている!
山小屋で働くことのいい面、悪い面、お伝えしてきましたが、ずばりどんな人が向いているのかというと…。
・何でもできる人(業務は大工、調理、電工、土木、除雪などたくさんある!)
・協調性があってみんなで楽しく頑張れる人
とのこと。逆に、共同生活が苦手だったり、潔癖症の人は向かないそうです。どんな環境でもうまく生きていける人が、山小屋でも求められていそうですね。
最後に…「山小屋で働く」ことで一番良かったことは
匿名希望さん
山を通過するだけでなく、住まいとするような時間を過ごすことで、関わった人との出会いや絆が生涯忘れられないものになったこと。山を違った角度で見たい人にはおすすめです。
柴田さん
何かあったときに自分で対処する力を養えたこと。日々の暮らしについての試行錯誤や工夫、丁寧に暮らすことの大切さはこの仕事でなければ気づけなかったかもしれません。
あとは奥さんに出会えたことですね。
特に、山小屋勤務を通して出会った人との絆は人生においてかけがえのないものとなりそうですね。満員電車に疲れちゃってるそこのあなた。下界ほど自由はありませんが、お金は貯まるし、ご飯も美味しいし、運命の相手にも出会える(かもしれない)なんて最高じゃないですか?
人生を変えたいと思っているなら、この夏は思い切って山小屋バイトに飛び込んでみるのもありかもしれませんよ。