「法令不明瞭」名簿提出取りやめ 自衛隊募集問題で葉山町

葉山町役場

 自衛官の募集を巡り、自衛隊に対象者の名簿を提出していた葉山町の山梨崇仁町長は14日、「(法的根拠とした自衛隊法や住民基本台帳法の)法令解釈に不明瞭な点がある」とし、提出を取りやめる考えを示した。2019年度から名簿の閲覧に対応を変更する。

 町によると、自衛隊神奈川地方協力本部に文書で要望され、17年度から、住基台帳から抽出した18歳の氏名や住所など個人情報を記した名簿を提出している。以前は名簿の閲覧だった。

 町町民健康課は提出に変えた法的根拠について、(1)法定受託事務として自治体が「事務の一部を行う」と規定した自衛隊法(2)防衛相が名簿の「提出を求めることができる」とする同法施行令(3)住民基本台帳法(4)町個人情報保護条例-を列挙。条例には個人情報の利用や提供に制限があるが、ただし書きで法令の定めがあるときは除外されていることから、法令に基づく対応と判断したとする。

 安倍晋三首相が2月10日の自民党大会で「6割以上の自治体が協力を拒否している」などと発言。その後に開かれた町議会第1回定例会の予算特別委員会で、個人情報保護の観点から提出を疑問視する声が議会側から上がり、町は「対応を再検討する」と回答していた。

 14日の本会議で、検討結果を問われた町長は「昨今の報道でも、名簿提出の際、法令解釈に不明瞭な点があるとの認識を新たにした」と説明。「提出しないことが、現行法令の解釈の明確な範疇(はんちゅう)と考えている」とした。

 町長は「自衛隊に協力する気持ちに変わりはない」とも述べ、「国の法改正で、明確な対応が取れるよう改善を望む」と国に求めた。これに対し、質問した近藤昇一氏(共産)は「国の見解に惑わされず、自らの考えを明確に持って対応してほしい」とくぎを刺した。

 神奈川新聞社が調査したところ、県内の全33市町村が募集に協力、うち川崎、横須賀、南足柄、葉山、開成の5市町が名簿を提出していることが分かった。残る28市町村は個人情報保護の観点から公開を制限する住民基本台帳法や条例などを踏まえ、名簿や住基台帳の閲覧で対応している。

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