VLN:KONDO Racingのニュルブルクリンクへの挑戦始まる。「まず初戦は100点満点のでき」

 3月23日、ドイツ・ニュルブルクリンクで、VLNニュルブルクリンク耐久シリーズ第1戦『ADACウェストファーレンファート』の予選と決勝が行われた。2019年のニュルブルクリンク24時間に参戦するKONDO Racingは、ニッサンGT-RニスモGT3をニュルに持ち込んでの初レースとなった。

 今季、トム・コロネル/松田次生/藤井誠暢/高星明誠というラインアップでニュルに初めて挑むKONDO Racing。23日のVLN1は、ノルドシュライフェでニッサンGT-RニスモGT3を投入し、初めて挑むレースとなった。チームを率いる近藤真彦監督も渡独し指揮を執ったが、今回の狙いについて近藤監督は「GT3カーでの初参戦となる今回のVLNは、ドライバーの恐怖感を取りのぞくことが第一のテーマでした」という。

 通常ならばレース当日、土曜日の午前8時半からスタートする予選だが、“ニュルの洗礼”ともいえる濃霧により大幅にディレイ。正午前にやっと視界が少しずつ開け、ドクターヘリの飛行が可能な状態となったために、12時半にようやく予選が始まり、15時20分にレーススタート。18時05分にゴールと、通常4時間の耐久レースだったが、2時間45分の短縮戦へと変更になった。

 コロネル以外の3人の日本人ドライバーは、全員がGT3での初走行となることから、やや緊張した面持ちだったものの、チームに帯同するミハエル・クルムのアドバイスやレクチャーに真剣に耳を傾けた。

 フルコースイエローや、アクシデントの際に区間的に速度制限が設けられるコード60が続出する荒れた予選ではあったが、KONDO RacingのGT-Rは予選を23番手で終え、その後15時20分に開始したレースでは、コロネルがスタートを担当。次生、高星、藤井の順でバトンを繋いだ。当初の予定よりも短縮されたレースではあったが、準備をしっかりして臨んだというレースだけあり、ノートラブル・ノーミスで順調に進め、総合23位で無事に完走を遂げた。

「ダウンフォースのない、市販車に近いクルマでライセンスを取得した彼らにとって、GT3はダウンフォースもしっかりとある本格的なレーシングカーだったので、ノルドシュライフェを走るときは安心感があると言っていました。今回の初戦は作動チェック、ドライバーのトレーニングとしての意味合い、タイヤパフォーマンスのチェック等、テストとしてのスタンスで参戦しましたが、ミスなく無事にゴールできたので、まず初戦としては100点満点のできでした」と近藤監督。

「予選レースを含めて2戦に参戦し、本番を迎えますが、今後は日本からもメカニックが加入する予定です。今年のニュル24時間は初めてなので、僕自身も正直どうなるか分からないし、ステップ・バイ・ステップで来年、再来年先まで見据えた長いスパンで考えています」

「ニュルに対しての前評判は非常に厳しいと聞かされていましたが、思ったよりもサーキットもトラックコンディションもみんなが言うほどは悪くはなかったので、実際訪れてみて、自身で確かめてみてちょっとホッとしています。海外に自身のチームを率いて参戦するのは、日本のレースとはひと味違うし、クセになりそうかな、という予感が早くもしています」

「レースはある意味命がけ。このニュルは手作り感が満載ですが、そのアットホームの中にも厳しいルールがきっちりと設けてあり、ドイツらしいレースだなという印象を受けました。ドイツでGT-Rが人気があるのは聞いていたし、地元ファンの熱い応援の期待を裏切らないようにしたいですね。ほぼおろしたての新車でトラブルが起きても不思議ではなかったけど、ノートラブルで初戦を終えられて、地元ファンにもGT-Rの強さを見せられたと思います」

「ニュルは遠いけれど、レース好きにはたまらないレースなので、本番の24時間レースでは、日本からもぜひ現地へ応援に来て欲しいですね」

KONDO RacingのニッサンGT-RニスモGT3
ミハエル・クルムと話し込む近藤真彦監督
地元のファンにサインをする近藤真彦監督

■ドライバーたちもそれぞれの印象をもつ

 また、ドライバーたちは初めてGT3で走るニュルブルクリンクに、さまざまな感想をもったようだ。また、多くのファンが訪れるレースだけに、そこでの新鮮な驚きもあったという。

「GT3で初めてのVLN参戦で、去年のライセンス取得の時にドライブしたケイマンとのスピード感の差を実感し、正直言うと恐怖感もありました。今回のレースは幸いドライコンディションだったので、ラップを重ねるごとに攻められていることを実感し、24時間へ向けての良いトレーニングになっていると思います」というのは次生だ。

「僕がドライブしているGTマシンやル・マン、少し前に出たバサースト12時間レースの写真を持ってサインをもらいに来てくれるファンがいて、日本から遠く離れたドイツで応援してくれるファンがいるのは嬉しいですね!」

「ニュルは昔からクルマをつくる聖地でもあり、ニュルを制した者はいろんな意味でヒーローになれると思っています。近藤監督の3年計画の間で、GT-Rの強さをファンの皆さんにみせられるようにしっかりと努力をしたいです」

 また、同じく初挑戦の高星は「BoPで抑えられていたのもあって、トップスピードもそこまで出ないようになっていたため、逆にタイヤのグリップがあってダウンフォースがあるので、考えていたよりは思ったよりも怖くはなかったです。安心してドライブできたと思うし、非常にポジティブに終えられたと思います」という。

「数年ぶりにニュルにGT-Rが戻ってくることで、応援してくださる地元のファンの方に、僕たちがニュルへ挑戦する姿を見せられることが嬉しいと同時に、ただ参加するのではなく、結果もきちんと残さなければいけないと思っています」

 そして、今回のレースではコード60もあり、あまりトップスピードで走ることができなかった藤井だが、「天候やスケジュールの変更もありましたが、最低限の周回は重ねられ、トラフィック、タイヤのロングライフチェックやマシンのバランス感触を確かめられました」とレースを振り返った。

「レース後半はコード60がフルコースで出たりと、かなり危険なコンディションでしたが、そのような場面も含めて、本番へのリハーサルとして経験できたので、いい初戦を終えられたと思います。近藤監督がレース前に言われていた今回のいちばんの目標である『ノーミス、無傷で完走する』ということはクリアできて、次に繋げられるレースになりました」

「クルマに対してもドライバーに対しても、足をすくわれそうになるシチュエーションが想定外に起こり得るサーキット。クルマに対しても普通のロードコースでは考えられない入力があるし、当然それはクルマに対してもストレスになるし、そんなコンディションの中で、クルマやタイヤがまず耐えられて、走り続けられるというだけでもすごいことだと感じました」

「日本人として、日本が誇るGT-Rで、このノルドシュライフェをチャレンジできることに深い想いと誇りを感じます」

 ドライバーたちのコメントにもあるとおり、ニュルでもGT-Rは大人気だ。地元ファンに『GODZILLA(GT-Rの海外での愛称)』再来の歓迎を受け、終始多くのファンに囲まれていたKONDO Racingのピット周辺。また、ドライバーのみならず近藤真彦監督のもとにも数多くのファンが監督の現役時代のマシンの写真を持参してサインを求める姿が多く見かけられ、近藤監督もサインや記念撮影に気さくに応じていた。

KONDO RacingのニッサンGT-RニスモGT3
話し込む松田次生と藤井誠暢
高星明誠
ミハエル・クルムからのアドバイスを聞く藤井誠暢

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