「頼まれたものは、やる」 TOP名古屋小田オーナーのリーダーシップと、スポーツにかける思い【インタビュー前編】

写真:TOP名古屋小田オーナー/撮影:ラリーズ編集部

Tリーグ、トップおとめピンポンズ名古屋(以下、TOP名古屋)は、Tリーグの中でもひときわ国際色ゆたかなチームとして知られる。様々な国から日本で活躍しようと選手たちが集結し、言葉やカルチャーの壁をも乗り越えてチーム力を磨いてきた。

TOP名古屋を運営している株式会社トップは、「会社を元気にする会社」を理念に、幅広いサービスを展開している。そんなトップだからこそ、多彩な人材を受け入れ活躍の場を醸成する“懐”があったのではないだろうか。今回は、トップが卓球の球団を保有するに至った経緯、そしてチームに込める想いを、小田悟代表取締役から伺った。

――現在は卓球チームのオーナーでいらっしゃいますが、もともと何かスポーツをされていたんですか。

小田 悟(以下、小田):野球は小学校からやっていたので、スポーツは小さいときから自分の身近にありました。テレビでもスポーツをやっていればよく観ますよ。

――どういった経緯で会社を作られたんでしょうか。

小田:28歳のときに自分で会社を作りました。それまでは会社員としてずっと働いていたんです。周りの誰も独立したことがなくて、「やりませんか?」と誘われて起業しようと決意しました。頼まれたからには「やってみよう」と。神輿の上に担がれたような感じかな。

そのときは、まさか将来自分が球団を持つとは思っていませんでした(笑)。名古屋で球団オーナーと言えば中日ドラゴンズの白井オーナーですが、白井オーナーには日ごろからお世話になっていて、目標と言えばおこがましいのですが、相談に乗ってもらい色々な話を聞いてもらいました。

――小田さんが球団を持つようになった決め手は何だったのですか。

小田:卓球で新しくリーグを作ると聞いて、「これはおもしろいな」と思って。話をもらって15分で「やります」と即決してしまいました(笑)。

――球団を持つことは、非常に思い切った決断だったと思います。やると決めてからは、どのように進めましたか。

小田:Tリーグチェアマンの松下浩二さんに助けていただいて。実は今回、卓球のチームを持つにあたって、社員は新しく2人しか雇っていません。

――え、そうなんですか?

小田:基本的には今いる社員で対応するようにしました。うちはOA機器の販売や設置・保守をやっているんですが、コピー機のメンテナンスをしている韓国出身の社員に韓国語の通訳を頼んだり。「コピー機なんて触っている場合ではない」と(笑)。あとはSEを担当している中国出身の社員や総務の仕事をしている社員に、中国語や英語の通訳をお願いしました。

――あとはもう、手探りですか?

小田:そうですね。基本的にうちは外国人部隊にしようと。選手に関しても、外国人選手をどんどん獲得して多国籍軍でいこうじゃないかってね。基本的に国は関係なく、来てくれる人を採用して戦おうというスタイルをとっています。

――企業として、スポンサーになるメリットはどのように考えていましたか。

小田:一つの広告宣伝費として球団を持ちました。Tリーグはできたばかりで、これからさらに発展していくと思う。黎明期に自分が携わることで、自分の意見も積極的に発信してどんどん取り入れてもらえるように。

それまでは卓球自体あまり詳しくなかったんですが、実は好きなんですよ。中学校1年生のとき同じクラスに卓球部の部長がいて、彼にサーブの変化球とか教えてもらっていました。

――本当にスポーツ全般がお好きなんですね。卓球をはじめ、何かスポーツにかける思いはありますか。

小田:スポーツは本当に好きで、実は卓球以外に、「トップ杯東海クラシック」という男子プロゴルフトーナメントと、格闘技「RIZIN(ライジン)」のスポンサーもやっています。

――そうだったんですか。

写真:TOP名古屋小田オーナー/撮影:ラリーズ編集部

小田:「トップ杯東海クラシック」は今年で50回目になる歴史あるトーナメントで、45回目からうちがやるようになりました。それまではコカ・コーラさんがやっていたんですが、ちょうどメインスポンサーを降りるということで…。でも45回もやっている大会だから、冠スポンサーがいないからって終わるのは寂しいじゃないですか。そこで「やりませんか?」とご縁をいただいて。そのあとにTリーグのお話もいただいたので、ちょうどボールの大きさも同じくらいですし(笑)。男子は重い球、女子は軽い球でいこうってね(大笑)。

――ありがとうございます(笑)。RIZINはいつからやられているんですか?

小田:RIZINの第一回目が2016年4月に名古屋で開催されて、そこで「トップ presentsライジン.1」というメインのスポンサーになってやらせてもらいました。今度はボクシングの田中恒成選手のタイトルマッチのスポンサーもやるんですよ。

――卓球と同じように、ゴルフや格闘技も悩まずスポンサーになると決めたのですか。

小田:そうですね。むしろ「いいんですか?」とこちらが聞き返すぐらい(笑)。基本的に頼まれたら「ノー」とは言わなくて「いいよ、いいよ」と。自分から欲しがってしまうと逃げていくことも多い。だから自分で「やりたい」と言ったことは殆どありません。縁あってお話をいただいたら、「ぜひお願いします」と。スポンサーをしないと困るわけではないけど、縁はいつも大事にしています。

――なるほど。独特のリーダーシップをお持ちなのですね。

小田:ちなみに卓球の話が来たとき、幹部から「ゴルフやめたらやってもいいんじゃないですか」と言われてね。だけど「ゴルフはやめないぞ」と(笑)。いざやってみると、各地の営業所みんなで応援することも多くて、会社がぐっとまとまったような気がします。

――TOP名古屋さんは、どこで試合しても応援する方がいらっしゃいますよね。

小田:そうですね。それに、実は社員もけっこう試合会場に行っているんです。実際に白熱した試合を間近で観戦することで、「また明日から頑張ろう」と前向きになれるんですよ。自分は選手も社員も自分のファミリーだと思ってて。会社の忘年会には毎年1000人くらい集まるんですが、選手にも参加してもらって交流を持つようにしています。これは今後も続けていきたいですね。

――実際に応援に行くのはすごいですね。社員が何か影響を受けて、卓球やゴルフを始めることもあるんですか。

小田:ゴルフをやっている人は多いと思います。もともと野球部はあったんですが、転勤があるから縮小してしまって。ゴルフはチームを作る必要もないので、それぞれでやっています。今年は社内でサッカーチームも作る予定でいます。

聞けば聞くほど、スポーツ振興に対してオープンで、社員と選手の交流も盛んな株式会社トップ。選手とのコミュニケーションは、具体的にどんな雰囲気なのだろうか。気になる内側をさらに掘り下げる。(後編へ続く)

文:古山貴大

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