「できない」を「できる」に ママ友と課題乗り越え

「子育ての悩みを相談し合える場所にもなっている」と話す(左から)大村さん、永井さん、藤井さん =川崎市麻生区

 「育児も自分の時間も楽しむ」。そんなコンセプトのもと集う母親たちのネットワーク「Linkmama(リンクママ)」がこの春、発足から1年を迎える。川崎市麻生区内でヨガや料理などの習い事を保育付きで提供する活動で、講師や生徒は大半が子育て中の女性だ。レッスンをのぞくと、好きなことを気兼ねなく追求し、技術を磨く母親たちの姿があった。

 2月下旬の平日午前。tvkハウジングプラザ新百合ケ丘内(同区)にある三井ホーム展示場で開講されたセルフネイル教室。この日は生徒二人が、講師の女性からネイルの基礎知識やアート技術を習得していた。離れた場所には広々としたキッズスペース。シッターと遊ぶ、講師と生徒の子どもたちのはしゃぐ声が元気よく響いた。

 「育児を独りで悩まず、ママたちが生き生きできる場所をつくりたかった」と語るのは、昨年4月にリンクママを立ち上げた代表の永井和美さん(43)。特に子どもが幼いうちは、自分の時間を持てずにいる母親は少なくない。「ママ同士力を合わせて、『できない』を『できる』に変える工夫をしています」と話す。

 リンクママでは、生徒を「マナビーmama」、講師を「ティーチmama」、保育者を「シッターmama」と称してそれぞれがつながる。永井さんが講師を務めるフラワーアレンジメントをはじめ、アロマセラピー、リンパマッサージなど10以上の教室を用意。「子どもが小さいけど習い事をしたい」「自分のスキルを生かしたい」といった母親たちの希望に応える場となっている。

 小学4年の長男がいる永井さんは、出産後に孤独に悩んだ過去を持つ。妊娠中は結婚式場の装花などの仕事で多忙な毎日を過ごし、産後に育児の相談ができる友人は身近にいなかった。「子育ては母親の役目」と思い詰め、激務の夫に負担を掛けてはならないと独りで育児を背負いがちに。電車やエレベーターに乗ると動悸(どうき)が起きる症状にも襲われた。

 回復したのは、その後、家族の協力を得てフラワーアレンジメント教室を複数開いてからだった。「家で1日中子どもといると泣きやまない時間が苦しかったが、仕事を再開して以前の自分を取り戻すと、泣く姿さえいとおしく感じられた」。同じように苦しむ母親にリフレッシュの場を提供したいと、一部教室を子連れ可能にした。だが、はさみなどの道具が危険だったり、子どもたちが構ってもらえず泣き出してしまったりと課題に直面した。

 そうして思い立ったのが、シッターを雇った「保育付きレッスン」だった。「ママ友」に相談しながら仲間が増えて誕生したのがリンクママ。2児の母で、「自分に合った片付け」教室の講師大村純子さん(44)は「自分のことは後回しにしてきたお母さんに『ようやく自分の意識が外に向きました』と言われた時に、この活動をして本当に良かったと思った」とやりがいを実感する。

 琉球料理教室を担当する藤井恵子さん(44)も2児の母。「『母親だから』と我慢するのではなく、みんなと支え合いながら好きなことを目いっぱい楽しめるのがリンクママ」。次男が幼稚園に入り、昨秋から日中の時間をネイル教室に当てている横山暁子さんは「毎月のレッスンが楽しみで仕方がない」と声を弾ませた。現在はおよそ40人の生徒が各教室に参加している。

 「大勢のママたちとつながることで自分自身の世界が広がった」と永井さん。活動を通じ、母親の輪が一層広がることを期待している。

 リンクママは会員制(4月から会費無料)。生後4カ月ごろから保育可能。レッスン内容や受講料などの詳細、申し込みはホームページhttp://linkmama.net/から。

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