横浜市議選・ハマ弁考(上)「家庭弁当が基本」敬遠?

導入当初のリーフレット(左)にあった「家庭弁当を基本」の文字が、今のリーフレット(右)にはない

 29日に告示される横浜市議選。争点の一つ、ハマ弁について考える。

 「一つ一つ、課題は解決してきた。もうしばらく、時間を頂戴したい」。2月の定例会見。横浜市立中学校の希望者向け配達弁当「ハマ弁」について問われ、林文子市長は懇願するかのように答えた。

 市教育委員会が2016年7月から一部で、17年1月から全校で導入したハマ弁が迷走している。

 20%の想定で始まった喫食率は当初から低調で推移。市長は「徐々に上がってきている」と強弁するも、今年2月も2.8%にとどまった。

 「注文は最短7日前まで」など使い勝手の悪さを指摘され、市教委は19年度、全校で当日注文に切り替える。なのに、関係者から漏れるのは「一気に伸びるとは思えない」との弱気の声。「ネガティブなイメージを払拭(ふっしょく)するのは難しい」とため息さえ聞こえてくる。

 なぜ、ここまでの事態になったのか。改めて経緯をひもといてみたい。

 共働きの増加などで弁当を用意するのが難しい家庭が増える中、市教委は中学校昼食の在り方を長らく調査・研究。給食も視野に、「栄養バランス」「食べる量や好みへの配慮」などの観点から、(1)配達弁当(2)近隣小学校で調理して配達(3)校内に調理施設を設置(4)複数校分を調理して配達-の四つの方法を検討した。

 施設を整備する費用を試算したところ、(1)が30億円(2)が60億円(3)が260億円(4)が330億円との結果に。最終的に市教委は「家庭弁当を基本」としつつ、「家庭弁当と配達弁当(事前予約)のどちらも選択できる環境を整え、業者弁当で補完する」と結論付けた。民間事業者が調理した弁当を保温コンテナで各校に配達するというハマ弁の方式を選んだ理由に、費用や用地のほか、▽早期に全校展開できる▽配膳時間が短く、中学校の日課への影響を最小限にとどめることができる-などを挙げた。

 こうして始まったハマ弁だが、生徒らからは「周りが食べていないので頼みにくい」との声が多い。市の関係者は「家庭弁当を基本」と打ち出したがために、生徒が周囲の目を気にする空気が生まれたと指摘し、つぶやく。「当時、自民党内に家庭弁当にこだわる声が根強くあり、最大限の配慮をしたのだろう」。現在の迷走ぶりは、あらゆる方面に気を配り、玉虫色の決着をした結果が招いたと言わざるを得ない。

 一方でこの間、川崎市立中学校で完全給食が実現するなど周辺環境が変化。横浜市のスタンスも微妙に変わってきた。ハマ弁のリーフレットに今、「家庭弁当を基本」の文字は見当たらない。

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