ラグビー姿で世界25ヶ国の最高峰にトライする! “ラグビー登山家”って一体何者? ラガーシャツを着て、片手にはラグビーボール。山頂にトライを決めて登頂成功! 冗談にも思える登山スタイルで世界25ヶ国の最高峰を目指す“ラグビー登山家”と果たして何者なのか? 単なるパフォーマー? いえいえ、過酷なプロジェクトを自らに課し、2019年9月までに達成を目指す熱い挑戦者なんです。ラグビーW杯2019を盛り上げるため、一人奮闘する“ラグビー登山家”こと長澤奏喜さんに直接会って話を聞いてきました。

山にラガーシャツ!?ラグビーボールで山頂にトライする謎の動画…。

皆さんはこの動画をご存知でしょうか?

YouTubeでたまたま見つけたこの動画。ラガーシャツを着た男の人が、ラグビーボールを山頂に叩き付けています。表情から察するに頑張って山に登っているようですが、どうしてこんな格好で、しかもなぜラグビーボールを持って登山をしているのでしょうか?

…謎だらけのこの人物。
気になって調べて見ると、独自のルールと驚異のハイペースで世界25ヶ国の最高峰を目指しているやばい人だったんです。

独自の登山スタイルがやばい。

(#18 フィジー共和国:トマニビ山)

正装はラガーシャツです。そして片手にはラグビーボールを抱えます。万が一ボールを落としてしまったら、ラグビーのルール“ノックオン”に則り、10m下がった地点からスクラム姿勢で再スタート。そして、山頂へトライを決めて初めて登頂成功となります。

せっかく登ったのに、あえて下がる…。やばいな…ドMか

30ヶ月で25座に登る驚異のハイペース

(#20 トンガ王国、カオ島)

今回の挑戦では25ヶ国の最高峰を2019年9月までに登りきるという期限を設けました。山に登り始めたのが2017年3月なので、約2年半(30ヶ月)で25座に登頂する予定です。

30ヶ月で25座!!!しかも日本じゃなくて海外。
……調べれば調べるほど、やばい人だ。

このやばい人。その正体は……

突然ですが、皆さんはラグビーW杯2019が日本で開催されることを知っていますか?世界ではラグビーW杯は、夏季オリンピック、FIFAワールド杯と並ぶ世界三大スポーツイベントと呼ばれているのですが、日本での知名度はそれほど高くありません。

そんな大会の知名度の低さを打破するために立ち上がったやばい人こそ、“ラグビー登山家”こと長澤奏喜(ながさわそうき)さんです。
長澤さんは高校から社会人までラグビーを続けた根っからのラガーマン。自身のパフォーマンスを通して、ラグビーW杯2019を盛り上げること。そして2019年9月までに世界25ヶ国の最高峰に登頂することを目標とし、大手IT企業を脱サラして現在のプロジェクトに挑戦しています。

調べれば調べるほどに興味が湧いてくるこのやばい人。そんな長澤さんに直接会って話を聞いてきました!

始まりは”エンブレム”。ここから壮大な物語は始まる

ライター吉澤(以下、吉澤):今日はよろしくお願いします!

長澤さん:お願いします。

吉澤:さっそくなんですが、ラグビーW杯2019を盛り上げる方法は山登り以外にもあると思います。どうして“登山”を選んだのですか?

長澤さん:山頂に日の丸が輝く富士山が描かれているラグビーW杯2019のエンブレムを見た時、山の頂上にラグビーボールでトライを決めるイメージが浮かんできたんです。それが、このプロジェクトを始めるきっかけになりました。

吉澤:・・・それだけですか?

長澤さん:いつか社会に爪痕を残してやりたいと思っていたんです。そんな時、ラグビーW杯2019のエンブレムに出会いました。自分な好きなラグビーと、前々から興味があった山を掛け合わせて何か企画できないか?そう考え出して頭に浮かんだのが今回のプロジェクトなんです。

吉澤:(ただ爪痕を残したいって、やっぱりやばい人かも・・・)
そもそも登山経験はあったのですか?

長澤さん:興味はもっていました。セブンサミットにも憧れていましたね。でも、正直言うと国内で登ったことがある山は、富士山くらいしかないんです・・・。

吉澤:え!?それだけの経験でこのプロジェクトを始めたのですか?不安はありませんでしたか?

長澤さん:不安だらけでしたよ(笑)。でも、生きているうちに使命感に燃える瞬間って一度や二度しかないと思うんですよね。ワールドW杯2019を盛り上げるのは、自分の使命だと思っています。走りだせば何とかなるかなと(笑)。

過酷なプロジェクトを支える“計画力”と“実行力”

(#17 ニュージーランド、クック山)

長澤奏喜さんが目指す25ヶ国は全てラグビーW杯出場経験国。それらの最高峰には車で山頂まで行けるという冗談みたいな山もありますが、北米大陸の最高峰でもあるアメリカの「デナリ(6,194m)」や、南米大陸の最高峰であるアルゼンチンの「アコンカグア(6,962m)」も含まれています。長澤さんは初心者ながら、ガチで登山をしているのです。

吉澤:山の初心者という事ですが、目標としている25座には十分な登山経験が必要な山もあります。足りない経験については、どうしようと考えたのですか?

長澤さん:今はインターネットが発達しているので、まずは山の登り方や難易度などを細かく調べました。そして、簡単な山からスタートして、プロジェクトを進めながら登山経験を積めるように登る順番を決めたんです。

吉澤:身の丈に合ったレベルの山から登り始めたのですね。基本、単独ですか?

長澤さん:単独で登る事もありますが、レベルが高い山では当然ガイドを雇うこともあります。もちろんベースキャンプでは必ず天気予報を確認するなど、充分な下調べも怠りません。

吉澤:ガイドなどの助けも借りながら安全にプロジェクトを進めているのですね。それにしても、思い描いたことを実現させる”計画力””実行力”がかなりスゴイように思えるのですが…。もともと得意だったのですか?

(青年海外協力隊での一コマ)

長澤さん:学生時代に中国や東南アジアなどをバックパッカーしたんです。その道中では観光地化されていない場所を訪れていました。何があるか分からないドキドキ感が好きだったんですね。情報が無い状態からスタートして、下調べをして計画を立てる行為は、こういう経験から身に付いたと思います。

吉澤:海外旅行ではないですが、社会人になってからは青年海外協力隊に参加していますね。

長澤さん:世界を旅していた時に発展途上国を訪れることがあったんです。その時から何かしらの形で社会に貢献したいな思っていました。それから青年海外協力隊の方と話す機会があり、これは望みを実現するチャンスだと思いましたね。
結果、赴任先のジンバブエでは2年間過ごしました。こういう経験も自分の実行力の基礎になっているかもしれません。

情報のない山に登る為に…首相の孫を探しだしたトンガのカオ島

吉澤:目標とする25座中、もうすでに20座までトライされているそうですが、特に思い出深い山を教えて下さい。

長澤さん:ちょうど20座目にトライした、日本人として初めて登頂したトンガのカオ島(1,033m)は登るまでが大変でした。

吉澤:それは聞いたこともない島ですね。

長澤さん:インターネットにも情報が無かったので、まずは行き方の聞き込み調査から開始しました。でも、誰に聞いても分からなくて・・・。だったら王室の偉い人に聞こうと思い、服装が派手な人を見つけて声を掛けたんです。そしたら、その人がたまたま首相の孫で、カオ島の州知事を紹介してくれました。

吉澤:王室を頼りにするなんて、発想がすごいです(笑)。しかも、それで首相の孫に出会えるなんて強運の持ち主ですね。

長澤さん:それから、やっと漁船を借りて島に向かうことができたんですが、今度は船が着岸できずに50mも泳ぐ羽目になり・・・。なんとか上陸した後も、ジャングルで3時間も鉈を振り続けて前に進み、やっとの思いでトライすることができました。

吉澤:それは登山家ではなく、もはや未開の地を目指す冒険家ですね(笑)。

初心者なのに1人で登頂。苦しかったアコンカグア

(#10 アルゼンチン、アコンカグア)

吉澤:登ることが困難だった山はありますか?

長澤さん:アルゼンチンのアコンカグア(6,962m)が過酷でした。ガイドと挑んだ1回目のトライでは6,500m付近で高山病になり敗退したんです。なので、再トライすることになりました。

吉澤:2回目もガイドと登ったのですか?

長澤さん:いえ、2回目は1人で挑戦しました。

吉澤:え!?山の初心者だったのに6000m峰に1人で挑んだんですか?

長澤さん:そうなんです。まぁ不安はありましたが体力には自信があるし、一度挑戦しているから何とかなるだろうと思っていました。でも、やっぱり大変で。特に水を確保するのに苦労しました。1回目の挑戦で雪から水を作る方法をガイドから教わっていたのですが、いざ自分で行うとうまくいかず・・・結局水を作るだけで2?3時間もかかってしまったんです。

吉澤:そんな状況で何泊したのですか?

長澤さん:麓の街から数えると合計13泊になります。ベースキャンプから山頂までの往復は3泊ですね。

吉澤:13泊なんて日本の登山では滅多に経験できない泊数の多さです。それを初心者が挑戦するとは、勇気があるというか、無謀と言うか・・・。

長澤さん:でも、高度順応は教えて貰った通りに行って、結果、無理のないペースで山頂にトライすることができました。分からないことはプロから学んで、それを実行に移せば、最初はうまくいかなくても最終的には身につくのもです。

プロジェクト成功を目指して大自然に体当たり!

吉澤:最後に、今後の目標を教えて下さい。

長澤さん:まずは5月と6月に予定している、カナダの最高峰ローガン山(5,959m)とアメリカの最高峰デナリ(6,194m)で無事トライを決めることです。そして、最後には富士山にトライします。ラストトライとなる25座目は、ラグビーW杯2019が開催される日本の富士山と決めているんです。今年の8月には富士山に豪快なトライを決めて、必ずこのプロジェクトを成功させます!

吉澤:挑戦を続けながら、ラグビーと登山に共通点を感じることはありますか?

長澤さん:ラグビーって自分より体の大きな相手にもぶつかって行かないといけないスポーツじゃないですか。そして、その体当たりの先に勝利があります。登山も過酷な自然に一人で立ち向かい、その先に登頂があるといった意味では、似ている部分があると感じますね。

吉澤:ラガーマンらしく過酷な自然に体当たりしているのですね。長澤さんの話を聞いていると、こっちまで勇気が湧いてきます。

長澤さん:体を張った挑戦の先に何があるのか、自分自身の目で見てこようと思います。山の素人でも、ここまで来ることができました。このプロジェクトを見てくれた人が、大きなことにチャレンジする勇気を持ってくれたら嬉しいですね。

吉澤:プロジェクトの成功を楽しみに待っています。今回はありがとうございました!

長澤奏喜さんのプロジェクトを皆で応援しよう!

(#16 コートジボワール、ニンバ山)

YouTubeでたまたま出会った長澤奏喜さん。登山初心者だったにも関わらず、世界のすごい山にトライし続けられる驚異の体力はさすが、ラガーマン!「自分がやらなければ誰がやる!」と自らを奮い立たせる使命感と、真面目に直向きに自身の目標に向かって行動し続けている姿を目の当たりにして、素直にカッコイイと感じたインタビューでした。
自ら掲げたプロジェクトに勇気と行動力で挑戦する長澤さんを、一緒に応援しましょう!

長澤奏喜さんプロフィール

(#18 フィジー共和国:トマニビ山)

1984年生まれ。小学生のときに読んだ本がきっかけで、大学時代は四国のお遍路やバックパッカーを経験。
社会人になってからは青年海外協力隊でジンバブエへ赴任し世界への見聞を広める。
2016年2月末にラグビー登山家のプロジェクトを思いつき、同年12月に会社を退社。2019年3月現在で目標とする25座まで残り5座に迫っている。

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