『バイス』 最低な政治家たちに、怒りを越えて笑ってしまう

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 2001年9月11日に起きた同時多発テロ事件。あの頃のアメリカを皆さんは覚えていますか? テロの後、あっという間にアルカイダに報復措置がなされ、その後サダム・フセインが統治していたイラクがアメリカによって攻撃されました。当時多くの人に引っかかっていたこと。それはフセイン=アルカイダ?なのか。この作品はその全てを指揮した男、チェイニー副大統領の物語。映画を観るとブッシュ大統領を利用して、かつてない権力を持ってしまったチェイニーの恐ろしさを知ることができます。

 政治の話と聞けばなんとなく重たくて、シリアスな映画だと想像するかもしれませんが、実はこの映画、アメリカを、そして世界をゲームのように支配しようとする男たちを風刺する毒っ気たっぷりな描き方に、思わず爆笑しながら観てしまう作品です。最低な政治家たちの度を超えた下品さ、クソッタレさ(失礼、でも本当に)は天下一品。あまりの酷さに、怒りや感情を通り越して、笑っちゃうんです。でも、そんなことが現実にアメリカで起きていて、多くの犠牲が出たことを考えると急にゾッとしてしまう。いつの間にか政治家たちの手の上で転がされているアメリカ国民を見ながら「じゃあ日本はどうなんだ?」という疑問が湧いてくる。

 日本の政治家たちも、この映画のチェイニーたちのように「理念」なんて鼻で笑いながら国民の知らないうちに虎視眈々と何かを変えていっているかもしれない。関心がなさすぎる自分に喝を入れて、今よりもっと政治家たちを、政治を疑っていかなくちゃ。そんな思いにさせられた映画でした。★★★★★(森田真帆)

監督:アダム・マッケイ

出演:クリスチャン・ベール、エイミー・アダムス、スティーヴ・カレル

4月5日(金)から公開

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