人口減対策「具体的に」 長崎県議選 論戦に有権者注文

人口減少が進む県都長崎市。有権者も県議選候補に具体策を求める=昨年12月、同市内

 若年層の県外流出、少子化で人口減少に直面する本県。県がその対策を最重要課題に位置付ける中、県議選でも多くの候補が取り上げ、熱弁を振るう。一方で、有権者からは「もっと具体的なことを訴えて」との注文も聞かれる。
 「人口減少に歯止めをかけるには、県都長崎市が昔のような輝いたころに戻ることが大切だ」-。週末の3月31日、長崎市中心部のアーケード近くで、ある候補が訴えた。ただ、目の前の横断歩道を行き交う人はまばら。別の陣営関係者も30日、市内の街頭演説スポットである鉄橋に来たものの「意外と人が少ないなあ」と拍子抜けした。県内随一の繁華街でさえ、人口減の影響が垣間見える。
 同市は不名誉な記録を出した。総務省が公表した昨年の日本人の人口移動報告によると、同市の転出超過数は2376人と全国市町村でワースト1位。本県は全体で6311人と都道府県でワースト6位だが、うち、同市が38%を占める。「(人口減を県庁所在地で止める)ダム機能なんてない」と、ある県幹部はため息を漏らす。
 県はオフィスビルへの比較的給与待遇が良い企業の誘致や、若者定着を模索するソフト施策に躍起だが、先の候補は選挙戦で「企業誘致より地元企業を支援すべきだ」と訴える。同市区の別の候補は「県と長崎市の連携が取れていない」と課題点を挙げた。
 出陣式や個人演説会ではその地域ならではの人口減対策への言及も相次いだ。佐世保市・北松浦郡区のある候補は米軍基地や自衛隊を念頭に「防衛産業を基幹産業として確立したい」と意欲。隣接する大村市が転入超過なのとは対照的に、転出超過が続く諫早市区の候補は「市街化調整区域を緩和して家を建てられる環境にする」と意気込んだ。
 離島は過疎化がさらに深刻。候補の一人は、少年ソフトボールチームが減っている現状を憂い、国の交付金を生かして対策を進める重要性を説いている。
 ただ、そうした熱弁とは裏腹に、各候補の訴えが有権者の心をつかんでいるかは微妙のようだ。定年退職後に関東からUターンした五島市の男性(74)は「国の交付金があれば人口減がどうにかなるわけではない。金の活用の仕方が大事だ」。島原市の主婦(73)は各候補の人口減対策について「具体的に何をするのかよく分からない」と感想。「そもそも若い夫婦が子をつくりやすい環境にするためには賃金が上がらないといけない。どうやって島原での賃金を上げるつもりなのか。それを聞きたい」と厳しく注文を付ける。

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