うってつけの春にあらず

 春らんまん、本紙の「桜だより」を見れば、桜の名所はずらり「満開」とある。この時季はどうやら選挙にうってつけらしい。7日に投開票日される県議選で、候補者は花見客でにぎわう行楽地を飛び回っている、と紙面にあった▲ひたすら握手をし、記念写真を候補者が撮る。親しみやすさを売り込むのになるほど、絶好かもしれないが、では有権者にうってつけかどうか。花見ばかりでなく、今は進学、就職の季節でもある▲「18歳選挙権」になってから初めての統一地方選となるが、この春、進学や就職で転居した18歳も数多い。この層の投票率低下が案じられている▲県議選では、県外に住民票を移せば投票できない。実際は、住民票をそのままにして引っ越す場合も多く、移った先での不在者投票などができはするが、この慌ただしい頃に果たして選挙に目が向くだろうか▲10代に限らず、転出先の自治体に3カ月住まないとそこで投票できないというルールに、かねて転勤族をはじめ首をひねる向きがある。転出入の最も多い春に統一地方選が重なれば、なおさらだろう▲あすは県議選の「最後の訴え」の日で、候補者が桜の下で「どうぞよろしく」と握る手に力がこもるに違いない。行きたくても行けない人に、「選挙の春」の盛りの景色はどう映るだろう。(徹)

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