【管理栄養士から学ぶ山ごはん#1】冷えた体を”芯から温める”アレンジレシピ 登山には欠かせない”山ご飯”。多くの体力を消耗する登山では、いかに必要な栄養を効率よく補給するのかが重要になってきます。簡単なのに美味しい、さらに栄養価も高い山ご飯。登山中に起こる様々な体の悩みに寄り添った山ご飯レシピを管理栄養士、兼アウトドア料理研究家のshihoさんに教えてもらう連載企画!第一回目の今回は、体を芯から温める山ご飯レシピを紹介します。

登山には必要不可欠な山ごはん

頑張って自分の足で山を登った後に食べる山ごはんは、どんなものにも代えがたいごちそうですよね!
いつも通りの山ごはんでも当然美味しいですが、いつもの食事に”栄養の知識”をプラスした、栄養満点の山ごはん。そんなワンランク上の山ごはんで内側からも体を応援してあげられたら、皆さんのこれからの登山ライフがより豊かなものになるかもしれません。

そこで、管理栄養士でアウトドア料理研究家のshihoこと芳須思帆が、栄養学の知識を生かしながら、登山のお悩み別に山ごはんレシピを紹介していきます。簡単&美味しい、かつ体も喜ぶような山ごはんレシピがたくさんです!

今回のテーマは『冷えた体を”芯から”温める』レシピ

登山中、歩いている間は寒さを感じなくても、立ち止まったときに急に体の冷えを感じることもありますよね!?特に寒い時季の登山では、一刻も早くからだを温めたい!と感じることでしょう。
今回は“冷えた体を芯から温める”手助けをしてくれる山ごはん・行動食のレシピをご紹介します。

体を芯からあたためるには、”温かい物を食べればいい”だけではない

登山中の体の冷えを予防するために、「内側からできることとして体を温める食べ物を食べたり、飲み物を飲んだりする」ということが挙げられます。
もちろん温かい食べ物や飲み物で内側から直接温めてあげることや、スパイスや香味野菜などを食べることで、発汗作用や血行促進を促すというのも大切なこと。ですが、実は大切なことはそれだけではありません。

エネルギーを効率よく摂取…身体を温めるにはこれが一番大事!

身体を冷やさないようにするために大切なことのひとつは、エネルギーが不足しないようにしっかりと食事を摂取することです。登山などの運動による熱産生はエネルギー供給が必要なため、エネルギーが枯渇すると筋肉の震えも止まり、体温が一気に下がる危険があります。
体温を維持するため、ご飯・パン・麺類などの主食に主に含まれている糖質を中心とした食事でしっかりとエネルギーを補給するようにしましょう。

今回はエネルギーをしっかり補給できる『糖質が豊富な主食』の中から、2つのおすすめアレンジレシピを紹介します。

エネルギー供給におすすめ①:お餅

まず私がお勧めしたい食材が、「お餅」です。
山にお餅…?お正月くらいしか食べる印象がない、という方も多いと思いますが、実はお餅は山ごはんにはとっても優秀な食材!
登山中のエネルギー源として必要な糖質が効率良く含まれているだけでなく、軽くてコンパクト、さらに常温で持ち運べて、即効性あるエネルギー源にもなる!という良いとこどりの食材なのが、このお餅なのです。
そのまま焼いても美味しいお餅ですが、より美味しく、さらにお餅の栄養価をさらに高めてくれるのが、今回紹介するレシピ「とろとろコーンポタージュ」。

お餅にひと手間、スープにすり下ろして加えることで、消化・吸収がアップ!さらにとろみがつくことで冷めにくくなるので、体を温める最強の山ごはんレシピに変化します。

とろとろコーンポタージュの作り方

(材料)2人分
コーンクリーム 1パック
水 2カップ
鶏がらスープの素 大さじ1/2
卵 1個
切り餅 1個
黒こしょう 適量

《下準備》
・切り餅は事前に卸して細かくしておく。(少し時間がかかるので、家でやっておくと良いです。)
・卵を溶く。

①鍋にコーンクリーム・水(コーンクリームの空いたパックを利用して1杯分入れる)・餅・鶏がらスープの素を入れ中火にかける。

②焦げ付かないように時々かき混ぜ、ふつふつと沸騰し、餅が全て溶けたら溶き卵をゆっくりと回し入れる。
③卵に火が通ったら器に盛り付け、黒こしょうを振って完成!

今回はデルモンテさんの『クリームコーン』(容量380g)を使用しました。紙パックは使用後に小さく畳めるので、山ごはんでの調理にお勧めです!

エネルギー供給におすすめ②:冷凍うどん

2つ目の食材は、主食のなかでも糖質の割合が高い「うどん」です。
疲れているとどうしても食欲や消化機能も落ちやすいですが、うどんは温めたり、柔らかく煮込んだりすることですんなり糖質を摂取することが出来ます。

さらに冷凍うどんなら個包装されているので、計量の手間もなく、茹でこぼす必要もないので、手間をかけずに調理することができます。また、パスタだと調理するクッカーの種類によっては半分に折ったりする必要がありますが、冷凍うどんはその必要もありません。
今回はそんな冷凍うどんを使って、一皿で3大栄養素をしっかり摂取できる「カルボナーラうどん」をご紹介。これ一皿で糖質、脂質、たんぱく質を美味しく補給することが出来ます。

フライパン一つで作る!カルボナーラうどんの作り方

(材料)2人分
冷凍うどん 2袋(自然解凍しておく)
牛乳 200ml
卵 2個
粉チーズ 大さじ4
ベーコン 70g(カット済みのもの1パック)
スナップエンドウ 4本
オリーブ油 大さじ1
塩 適量
黒こしょう 適量
にんにく 1片

《下準備》
・にんにくはスライスする。
・スナップエンドウは筋を取っておく。
・卵 、粉チーズはボールなどに混ぜ合わせておく。

①フライパンにオリーブ油・ベーコン・にんにくを入れたら中~弱火にかけて、ベーコンがきつね色になるくらいまで炒める。
*途中火力が強くなってしまったので、にんにくを取り出しました。工程②で再度加えています。

②牛乳を加えて沸騰したら冷凍うどん・スナップエンドウ・塩を入れ、冷凍うどんがほぐれて、牛乳が半分くらいになるまで加熱したら火を止める。

③卵液を注いだらダマにならないように手早くかき混ぜて、お皿に盛り付け、こしょうを振ったら完成!

糖質→うどん、脂質→オリーブ油、たんぱく質→牛乳・卵・ベーコン・粉チーズで栄養満点!足りない野菜は春らしくスナップエンドウをプラスすることで補いましたが、お好みの野菜を入れて下さい!

《番外編》歩きながら栄養補給できるグラノーラ

最後はドライフルーツ無しのグラノーラにお好きな具材をカスタムしてオリジナルのエナジーバーを作ってみましょう!

グラノーラとは?
ロールドオーツ(燕麦の押麦)や、麦、玄米、とうもろこしなどを主とした穀物加工品と、ココナッツ、ナッツなどを、砂糖、蜂蜜、メープルなどのシロップ(糖蜜)、植物油とで混ぜてオーブンで焼いたもの。引用:wikipedia

市販のグラノーラは1食分(約50g)で200Kcal ほどのエネルギーが含まれています。
これはおにぎりにするとおおよそ1個分、総菜パンなら半分~2/3量に相当するので、甘くてサクサクと口当たりの良いグラノーラなら無理なく食べられますね。

登山中はエネルギーが枯渇しないよう、行動食でこまめに摂取することも大切ですが、グラノーラを行動食に持ち歩けば少量で効率よくエネルギー補給することが出来ます。

山の行動食の新定番!エナジーバーの作り方

(材料)1人分
グラノーラ 1/2カップ(40g)
マシュマロ 5個(約20g)
バター 5g
お好きなナッツ・ドライフルーツなど 大さじ1

①耐熱容器ににバターとマシュマロを入れる。電子レンジ500W で30秒加熱し、スプーン等でかき混ぜ、しっかり混ざり合うように溶かす。
※写真はバーナーを使ってシェラカップで作ったものです

②グラノーラ・ナッツやドライフルーツなどを加え、さらに混ぜる。

③四角いアルミ型等の耐熱容器に②を入れ、押し付けるように平らにならす。
※写真は100円ショップで購入した小さなパウンドケーキ型を使用しました。

④170℃に予熱したオーブンで10~15分焼いたら完成!

オーブンで焼かずに、冷やし固めることもできますが、べたつきやすいので、行動食として持ち歩くのならオーブンで焼いていただいた後、食べやすい大きさに切り分けるのがお勧めです。
今回は好きな具材をカスタムしたかったので、グラノーラはカルビーさんの『マイグラ』を使用しました。

美味しい料理で素早くパワーチャージ!

いかがでしたでしょうか?今回は体も心もほっこり温まるような優しいレシピ、美味しくて素早くパワーチャージできるような行動食をご紹介しました。簡単&美味しい、かつ体も喜ぶような山ごはんで、登山を安全に楽しみましょう!他にもInstagramで様々な料理をご紹介していますので、ぜひご覧ください。

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