【県議選鎌倉市選挙区】“先代票”の行方焦点 統一地方選2019・注目区を行く

新人4人のポスターが並ぶ県議選鎌倉市選挙区の掲示板=同市内

 指定席を占めてきた現職がともに県議会を離れ、2議席を巡り新人4人が争う鎌倉市選挙区。8年ぶりとなる選挙戦の最大の焦点は、与野党で複雑に絡み合う票の行方だ。引退する重鎮の保守票はどう流れ、国政野党の政権批判票はどこに向かうのか-。各候補は神経をとがらせながら、訴えに熱を注ぐ。

 「鎌倉は最大の激戦区。何としても当選させたい」。告示直後、自民党の永田磨梨奈氏の応援に相次いで駆け付けた菅義偉官房長官(衆院2区)と小泉進次郎氏(11区)が力を込めた。永田氏は集会や街頭演説で、地元の山本朋広氏(比例南関東)や市議と国県市の連携をアピール。公明党の推薦も得た。

 一方、野党候補として戦うのは、立憲民主党の飯野眞毅氏だ。2017年衆院選で県議から国政に転身した早稲田夕季氏(4区)の後継として、市議を辞職し出馬。野党第1党の看板を前面に出し、「弱い立場に立った政治の実現」を掲げる。

 昨年12月に立候補を表明した神奈川ネットの三宅真里氏は、唯一の地域政党として地元密着をPR。「国とのパイプ役では駄目。地域の声を聞き、国にものを言っていくことが必要だ」と生活者目線の政治実現を訴える。支援組織を持たない諸派の岩田薫氏は、17年の市長選に出馬した知名度と市民運動で培ったネットワークなどで浸透を図る。

 勝敗の鍵を握るのは、9期務めた県議を引退する元議長・中村省司氏の保守票のほか、衆院選で小選挙区を制した早稲田氏に集約された反自民票の動向だ。

 市議時代に無所属で活動してきた永田氏の陣営は、松尾崇市長ら党派を超えた支持を礎に、政権幹部らの応援を受けて「自民カラー」をアピール。高い政党支持率を武器に票固めを急ぐ考えだ。

 ただ、長らく自民の支柱だった中村氏は党を離れ、「一有権者として、心静かに市民の選択を見守りたい」と態度を示していない。2万票を超す“中村党”とまで言われた支持者らが永田氏に全て引き継がれるかは不透明で、自民の二階派に所属する浅尾慶一郎元衆院議員の票を取り込めるかも未知数だ。

 一方、飯野氏は早稲田氏が衆院選で獲得した政権批判票を集めることに腐心する。だが、立民と関係性が深く一部の政策や支持層が重なるネットの三宅氏と分け合うのは確実。衆院選で共闘した共産党も「事実上の自主投票」(党関係者)としており、反自民票の動向は読み切れない。

 市長選で1万票近く獲得した岩田氏も、市役所移転を問う住民投票と連動した支持の拡大を模索。それぞれの候補は無党派層への支持を呼び掛け、浮動票の取り込みにも力を入れている。

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