「二刀流」の次は「ショートスターター」…日ハム栗山監督はまた球界を変えるか

日本ハム・栗山英樹監督【写真:荒川祐史】

ショートスターター戦術は3戦全敗も先発加藤は2試合で計5回無失点

 日本ハム・栗山英樹監督の先発投手に短いイニングを託す「ショートスターター戦術」が話題となっている。6日の西武戦(東京ドーム)で中3日の加藤貴之を2回無失点でマウンドから降ろすと、通算120勝右腕・金子弌大を2番手として起用。立ち上がりの3回に2四球を与えるなど直球の制球に苦しみ3安打5失点。大敗への流れが決まった。

 同じ戦術は2、4日の楽天戦でも使った。2日は加藤が3回無失点に抑え、4回からバーベイトがマウンドへ。2人で6回1失点と試合は作ったが、チームは惜敗した。4日は斎藤佑樹が初回3失点と崩れ、2回途中から救援した上原も6回に捕まり3失点。チームは11失点で大敗した。栗山監督が「一番勝ちやすい形は何なのか。どう考えたら選手が輝くのか」と模索する中で編み出した戦術だが、これまでは3戦全敗となっている。

 メジャーではレイズ、アスレチックスなど資金力に欠けるチームが使う「オープナー」に似た戦術で、先発投手が揃っているとは言えないチームにはフィットする。ショートスターターとして先発した加藤は2試合で計5回無失点。「加藤の特長が一番出る形」と栗山監督の狙い通りの投球となったが、問題点も浮き彫りになった。6日試合後の金子弌大の発言が新戦術の難しさを物語っている。

「気持ちも体もコントロールしていかないと、やっぱり投げるコントロールが悪くなってしまう」

「(先発の気持ちでマウンドに上がるかなどが)そこが正直はっきりしないことがある。もちろん長いイニングを投げるつもりでいくんですけど、試合の途中でいくのは事実。もっと自分の中で割り切っていかないといけない」

通算120勝と経験豊富な金子も試行錯誤「気持ちも体もコントロールしないと」

 金子はオリックス時代の07年途中から先発投手。14年に沢村賞に輝くなど日本を代表する先発投手として活躍してきた。この日の救援登板も3年ぶり。3月17日のアスレチックスとのプレーシーズンゲーム(東京ドーム)では5回から2番手として4回9奪三振3安打無失点と圧巻の投球を見せたが、公式戦の試合途中からの登板は、また違った難しさもあっただろう。試合後、木田投手チーフコーチは「球界でやってきていない難しいことをやってもらっている」と右腕を気遣った。

 栗山監督は木田コーチが「選手のことを考えている監督。選手にとっても一番いいことは何かをいつも考えている」と言う指揮官だ。加藤はショートスターターとして威力を発揮するが、果たしてこの戦術の適任投手は誰なのか――。これが戦術成功への1つのポイントとなるだろう。

 まだ開幕8試合。各チームとも戦力を見極めている段階だ。新たな戦術について、栗山監督は「こっちは批判覚悟。オレは常識を疑って新しいものが生まれるはずだと思って野球をやっている」と言い切る。あの大谷翔平を二刀流選手として、メジャーへ羽ばたかせた。「まだ野球には可能性がある。その可能性を探り続ける。監督をやっている間は探り続ける」という指揮官のタクトが、今後、球界の“新常識”となるのか注目だ。(Full-Count編集部)

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