“陶”と“茶”2つの歴史が共存 「信楽」のまち 【おとなの休日 in信楽】

それぞれの視点で「信楽」を想う
新たな縁を結ぶ懸け橋に

「土が一番かっこ良くなる形を考えている」と話す陶芸家・篠原希さん(45歳)。その言葉通り、どの作品にも力強さや素朴さ、土の持つ温かさがにじんでいます。 工房兼作品ギャラリーでは、奥さまのよしえさんが作品を使って料理をし、実際の使い方を紹介することも。SNSを通じて作品を紹介すると、最近は海外からの来訪者が増加。「陶芸のまちとして世界的に知られる信楽ですが、“工房見学”を案内するシステムはない。遠くから来られる方々を温かく迎え、作家とお客さまとのふれ合いを大切にすることは、信楽に育ててもらった私が果たすべき役割の一つ」と篠原さん。

キーンという水滴の落ちる音を聞き、風情を楽しむ水琴窟、スマートフォンを入れる拡声スピーカーなどユニークな作品が並ぶショールーム。「私が子どもの頃に比べ、今はモノが売れにくい時代。そんな現代に心を潤すもの、今の時代ならではの遊び心のあるものを陶器で作っている」陶芸家・奥田大器さん(37歳)。

モノへの価値観の変化、インターネットを介した通販の普及。時代の変化を受け、信楽ではまちを愛する人々が、新たな“つながり”へ向けた挑戦を始めています。

平安時代より続く「朝宮茶」
茶と陶芸、共存の歴史

「お茶と陶器と松茸は二里以内にある」と話すのは、茶城藤田園七代目・藤田照治さん(77歳)。茶の栽培に適した寒暖差、水はけの良い土壌は、陶土にも陶器を焼く燃料の赤松にも向き、その根元に松茸が生えるとのこと。信楽の朝宮は、今なお良質な茶葉が栽培できる国内有数の産地でもあります。

―大人の探訪スポット―

日本六古窯に数えられる伝統の信楽焼。
日本五大銘茶として知られる朝宮茶。
まちを支えてきた文化や産業は、時の流れとともに
どのように受け継がれていくのでしょうか。
この秋は、信楽(滋賀県)をのんびり散策してみませんか。

・01 ~ 陶工房篠原/篠原 希さん~
19歳で大阪から信楽へ。粉引作家に師事、土の作り方など基礎から指導を受け、独自のスタイルを築く。信楽の土への思いを込めた作品は、国内外のファンを魅了。 作品は妻のよしえさんが運営するギャラリー「てま・ひま・うつわ」でネット購入も可。
・02  ~高野山真言宗 秋葉山十輪院 玉桂寺(ぎょくけいじ)
琵琶湖百八霊場第八十八番、ぼけ封じ近畿十楽観音霊場第五番~
1200年以上昔、平城京から信楽へ都を移す計画があった際、第47代天皇・淳仁天皇の仮御所(保良宮)として使われたのが寺のはじまり。本尊:弘法大師像 「玉桂寺は数々の苦難を乗り越えながら“勅旨の弘法さん”として親しまれてきました。境内には古来より崇められる木々や数々の文化財が眠っています。ぜひお参りください」粂住職
■境内見どころ 高野槇(こうやまき)/弘法大師お手植えの木として知られる槇の木。(天然記念物) 木造 阿弥陀如来坐像/平安時代(甲賀市指定文化財) 木造 木造五劫思惟阿弥陀如来坐像/室町時代(甲賀市指定文化財) ぼけ封じ観音像、足腰神経痛除け薬師如来像、一願成就大不道明王像 他 ※護摩祈祷/毎月21日 祈祷時間9時~12時
秋葉山十輪院 玉桂寺 第82代住職 粂 真仁さん(44歳)
・03 ~壺八窯/奥田 大器さん~
先代らから受け継ぐ庭園陶器の技術を活かし、土(陶器)、水、音の三要素があるものを焼き物で表現。11月24日、25日(9:00~17:00)は、作家仲間と作陶した陶器のロボットや将棋の駒など普段見られないものを展示する「ファンタスティックフェスティバル」を開催予定。
・04 ~黒田園~
蕎麦の人気店として知られ、福井県の古民家を移築した店舗は居心地の良いノスタルジックな雰囲気。蕎麦粉が9割という配合の蕎麦は、風味豊かでコシがある。水曜日には自家製朝宮茶(煎茶)を練り込んだ「茶蕎麦」(15食ほどの限定)も味わえる。 営業時間/11:00~17:00  定休日/月曜日(祝日の場合は翌日休)・第3火曜日 TEL/0748-84-0485
・05  ~茶城 藤田園~
自家栽培の朝宮茶を販売する老舗。「煎茶は湯を60度位まで冷まして淹れると渋み、旨み、コクが程良い味わいになる。最初の1滴は舌の上で香りを楽しみ、残りはのど越しを楽しむ。花粉症に良いと言われる“べにふうき”や紅茶も作っている」と当主の藤田照治さん。 ※紅茶づくり教室やすすり茶器づくり教室など、体験教室も定期的に開催。 TEL/0748-84-0123

■情報誌「自悠時間」2018年9月掲載

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