東海道五十三次 第五十番目宿場「水口」
天日干しで甘く「水口かんぴょう」 伝統受け継ぎ
風に揺れながら真夏の強い陽射しを浴びる白い帯。6月末から8月中旬にかけて甲賀市水口地区で見られる「かんぴょう」作りの風景です。現在、国内生産の9割が栃木県ですが、水口のかんぴょう作りは桃山時代に始まります。その100年ほど後、当時の藩主・鳥居忠英が栃木に領地替えになり、現地で広めたと伝えられています。水口で農業を営む谷口治郎さん(71歳)は「昔からこの辺りの農家では、自分の家で食べるかんぴょうは、自分で作ってきた。各々の農家で400年以上受け継がれてきた種を絶やさないようにしたい」と話します。
近年は農地開発や担い手不足で農家が減少し、一般消費量も減っていましたが、特産物を奨励する地域ぐるみの取り組みで水口かんぴょうは再び注目を集め、今年は生産農家が増加。柔らかく、栄養価の高い水口かんぴょうの新物は、甲賀地域の野菜直売場などで手に入ります。
二つの城 東の三叉路、西の迂回路「水口宿」
宿場内を通り抜ける東海道が特徴的な形をしている水口宿。東側は街道が三筋に分かれています。これは、東海道の宿場に制定される前の時代、水口岡山城の城下町としてすでに三筋町が形成されていたことによるもの。また、西側は後に築城された水口城の周辺整備により、街道の本筋が北に迂回しています。水口は平安時代から街道の要所として栄え、江戸時代は活気にあふれ「街道一の人とめ場」でした。静かな町となった今でも、当時のままの街道や旧町名が、往時の名残を伝えています。
水口宿の西のはずれに大正時代から続く蔵元「美冨久酒造」があります。同店では、酒造りに使われている現役の蔵が無料で見学でき、試飲も可能。土壁の酒蔵にほのかに漂う酒の香り、老舗蔵元の歴史を肌で感じることができます。この秋は、今年100周年を迎えた記念として、特別製法の大吟醸を発売予定。散策の合間にぜひ立ち寄ってみては。
―大人の探訪スポット―
水口の夏の風物詩「かんぴょう」作り。
歌川広重(江戸期)による浮世絵「東海道五十三次」でも
水口のかんぴょう干しが描かれています。
太陽の恵みを凝縮し、甘く柔らかく仕上がった「水口かんぴょう」を求め、
この秋は、水口を散策してみませんか。
・01 ~かんぴょう~
・02 ~農家のかんぴょう料理~
・03 ~美冨久酒造~
・04 ~水口城(1634年築城、1873年廃城)~
取材:2017年9月