いいレインウェアがほしい。
レインウェアというと「悪天候」のイメージが強いかもしれませんが、オフショアなんかは一年中マストだったりします。(編集長N)
晴れていようが、雨であろうが、つねに“濡れのリスク”にさらされているのが、私たち釣り人ですね。
そんなわけで、「今年こそは、長く使えるいいレインウェアを買おう」と、ひそかに目論んでおりました。
とくにこれから訪れる6月(雨季)は、どんな釣りも好調な時期。
絶好のタイミングをめいっぱい楽しむためにも、今のうち(4~5月)に用意しておくのがベストってもんでしょ?
「GORE-TEX」が気になる。
フカセ大好きボーイの編集部S。釣りをするときは、基本キャップとウェアで「ゴアまみれ」スタイル。
最近では釣具屋でも取り扱いが増えてきている、GORE-TEX(※以下、ゴアテックス)採用のレインウェア。
事実、元釣具屋の編集部Sも、登山メーカーから発売されている“ソレ”を愛用していたりします。
「一着あると便利ですよ~。いいかげんNさんも買うたらどうですか?」と、たまーに言われちゃったり。
実際どうなんかね?
ダイワブランドを展開する超大手メーカー。最近ではウェアの人気も上々です。
しかーし、「ゴアテックス」という言葉(ブランド)に惹かれているだけで、それがどんなテクノロジーなのか、じつはなーんにも知らないアタクシ。
「実際のところ、どうなの?」
「わざわざ高額なゴアテックスを選ばなくても、ふつうのレインウェアで困らなそうじゃね?」
そのへんの素朴な疑問を、グローブライド㈱さんにぶつけてみました。
【次ページ:そもそもゴアテックスってなに?】
まずはゴアテックスについて知ろう
お答えいただいた方
黒田 優 さん
グローブライド㈱ アパレルマーケティング部・主任。ダイワのウェア全般を統括する。デザインから生産管理までなんでもこなすため、レインギアの知識もピカイチ。釣り人を濡れから守っているのは、彼女と言っても過言ではない?
それは「呼吸する生地」
まずは超基本中の基本から。そもそも、どんな素材なん?
編集部 N
さっそくですけど、GORE-TEX(※以下、ゴアテックス)について教えてくれますー? いわゆる、ふつうの雨ガッパと何が違うんでしょうか?
黒田さん
すごーく簡単に説明すると、水の侵入を防ぐこと以外に、蒸れない&冷えないといった機能がプラスされていると思ってください。イメージとしてはこんな感じです。
黒田さん
よく「呼吸する」と喩えられます。運動したりすると、体から汗による水蒸気が発生しますよね?
ゴアテックスは水蒸気(ムレ)は逃がしながらも、なおかつ雨などの水分は通さない。そんな器用さがあります。
編集部 N
たしかに。高校生のころ通学で使っていた安い雨ガッパは、内側が妙にムレて暑苦しかった思い出が。(セピア)
黒田さんが見せてくれた、ファブリックのサンプル。一口にゴアテックスと言ってもさまざま。奥が深いっす。
黒田さん
低価格のレインギアに採用されている透湿防水の素材は、だいたいがポリウレタン。
しかし、スニーカーのソールと同じく加水分解(空気中の水分を含んで劣化する現象)するので、寿命は2~3年くらいです。
それに対して、ゴアテックス生地は半永久的に劣化しないと言われている「ePTFE」というフッ素系のフィルムを使っています。だから、寿命はもっともっと長いんです。
「まぁまぁ、着てみてください♪」と、いわれるがままに試着。いいのはわかる。わかるのだけど、もうちょい背中を押してくれる理由がほしいっす。
編集部 N
へぇ~、なるほど。つまり機能的であることに加えて、長く使える物持ちの良さも備えているんですね。
じゃあ、登山のウェアブランドが出している、ゴアテックスから選んでみてもいいかもなぁ。←ひとでなし
黒田さん
あっ、やっぱりそうなっちゃいましたか? でも釣り人が買うなら、ぜったいに釣り用がおすすめなんです。
そのわけを聞いたら、きっと欲しくなりますよ~♪(ニヤリ)
おや? 黒田さんのエンジンがかかったぞ(笑)
“過酷なテスト”をくぐりぬけたレインウェア
パッと見は、何の変哲もない「ゴアテックスウェア」。ところがどっこい。そこには、釣り具メーカーとしてのノウハウがぎっしりだったのです。
編集部 N
どうして、釣り用のゴアテックスウェアがおすすめなんでしょーか?
「胸元にDマークが入ってるから」なんて理由じゃあ、納得できませんよ?
黒田さん
いえいえ(笑)そんなことではなく。じつは審査が厳しいんですよ、「釣り」は。
編集部 N
はて? 審査?
黒田さん
そーう!(キリッ)じつはゴアテックスって、なんでもかんでも製品化できるわけじゃないんです。
編集部 N
と、言いますと?
黒田さん
その名前(ゴアテックス採用)を掲げるためには、レインギアとしての性能や品質の高さも必要とされます。
しかも、それは私たち(レインウェアメーカー)が判断することではなく、ゴアテックス生地を供給しているゴア社さんによってテストされるんです。
編集部 N
へぇー! めっちゃ初耳です。それ。
こんなレインテストを何度も繰り返し、防水性を認定されたアイテムだけが市場へ。ただ単に、「ゴアテックスのファブリック(生地)を使えばいい」ということではないみたいです。
黒田さん
しかも、釣りの場合、「横方向からも上方向からも雨が浸水しない」というテストを通らないといけないんです。
登山用だと、これが上方向からのテストをクリアするだけで良いウェアもあります。
何度もテストを繰り返し発売される。そう聞くと、一気に特別な一着に見えてきた。釣り人って単純です(笑)
ゴアテックス採用のレインウェアにぶらさがっている“タグ”。じつは幾多のレインテストをパスした証だそう。とくに釣り用は ――。
黒田さん
釣りはほかのアクティビティ(登山など)にくらべ、レインウェア自体の「防水性の高さ」が求められます。
登山が用途の場合、気を付け(直立)のポーズをした状態で濡れなければOKだったりするんですけど、釣りだとそうはいかないんです。
編集部 N
そうか。腕を上方向に向けている時間が長いからですね。ロッドを構えると、手首の部分から水が浸入してきたことがありました。
黒田さん
はい、その通りです。それはほんの一例なんですけど。
そんなわけで、フィッシングウェアに対する、ゴア社の審査はとっても厳しいんです。
「たとえば」といいながら、胸ポケットのファスナーをめくる黒田さん。こういう場所にかなり神経を使い、防水処理をしているそう。すべては「濡れ」から守るため。
袖口を二重にし、インナー部分にもゴアテックスを惜しみなく。ロッドを上に構えた際、手首から伝って浸入してくる、不快な雨水をシャットアウトしてくれます。
「雨どい」の役割を果たすフード部分。雨水により視界が遮られないように考慮されている。徹底的にアングラー目線でブラッシュアップされていることが、最大の持ち味でありアドバンテージ。
編集部 N
なるほどなぁ~。たしかにスポーツ用品店で見たゴアテックスレインは、ここまでしっかりと防水処理をしていなかったかも。
とくにリブの部分はマジックテープだけで、こんな風に「釣りで使うこと前提」に処理されていなかったな。
このような釣りに特化したノウハウは、登山メーカーや低価格品には見られないこと。
いろんなメーカーから、レインウェアが発売されている昨今。同じように見えても、過酷な環境を再現したテストを潜り抜けたのが、釣り用のゴアテックスレインウェアというわけです。
編集部Nが迷った「2つのレイン」
編集部 N
黒田さーん。いろいろゴアテックスのことについて、丁寧に教えてくれてありがとうございます。
んで、やっぱり自分がレインギアを使う時は「釣り」なので、釣り用のゴアテックスレインウェアから選びたいと思いました。
黒田さん
いえいえ。お役に立ててよかったです。ロッドやリールも大事ですけど、レインギアもいいもの選んで長く使うのもいいですよ。
というわけで、ダイワさんの今期のアイテムの中から、おすすめのレインウェアを試着させてもらいました。
ゴアテックス パックライト®プラス レインスーツ
スリムシルエットで、野暮ったくならないのが◎。いわゆる立体裁断で、キャスト時の動きもスムーズに行えます。あと、このカラーがいいんですよ!
非常に軽量でコンパクトに収納できる「ゴアテックス パックライト®プラス」を採用した、上下セットのレインスーツ。(※写真はジャケットのみ着用)
汗ばんだ状態でもべたつきにくい快適性の高い裏地が、アクティブなシーンにマッチ。長時間の着用もなんなくこなす、スタンダードさが魅力の一着。
ゴアテックス C-Knitバッカーテクノロジーレインジャケット
先に紹介した、「パックライト®プラス レインスーツ」よりも、しっかりとした着心地でありながらゴワつかない。独特の“しなやかさ”がソソる……。
新しい裏地構造(ゴアテックス C-Knitバッカーテクノロジー)を採用した、軽さと強さを併せ持つレインジャケット。
防水耐久性、防風性は従来のゴアテックス素材を維持しつつ、透湿性能は従来の裏地と比較して15%以上も向上しています。
使用感を後日レビュー予定!
このどちらかを自腹購入することにしました。後日、ゴアテックスレインギアの性能を確かめるため、実釣取材にも繰り出す予定です。その模様は、またレポートいたしますので、ぜひお楽しみに!