お札の代替わり

 紙を光に透かせば、図柄が浮かび上がる。この技術を「すき入れ」と呼ぶらしいが、その模様はさらに美しくなるという。1万円、5千円、千円の紙幣が5年後に一新される▲肖像画は、例えば1万円札には実業家の渋沢栄一が用いられるが、新紙幣にはそれぞれもう一つ、小さな顔がある。立体的に見える3D画像になっていて、角度を変えれば肖像が回転し、側頭部までも見えるらしい▲すき入れも「回る3D画像」も、その精巧さは見とれるほどに違いないが、もちろん偽造を防ぐための刷新であり、日本では20年ごとに改められる。高度な技の“代替わり”も遠くない▲5千円札には女性教育の先駆けの津田梅子、千円札には日本近代医学の父、北里柴三郎と、肖像は1万円札から順に「産業育成、女性活躍、科学技術」を表し、安倍政権が力を込める政策の「売り込み」とみる向きがある▲新紙幣の公表時期は前の改定よりもずいぶん早い。政府が改元に乗じ、刷新ムードづくりをしたとみる向きもある。政権の我田引水にも思えるが、新時代の幕開けと新紙幣と、ひとまとめに記憶されるには違いない▲北里は結核の研究で福沢諭吉から支援を受けたとされる。お札の技術、元号に限らない。支えた側から支えられた側へ、お札の顔にも“代替わり”を見つける。(徹)

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