政治家の発言

 発言の主にとってみればリップサービスだったかもしれないが、誰も喜ばないどころか怒りを招いた▲桜田義孝五輪相が、東日本大震災の被災地を地盤とする高橋比奈子衆院議員のパーティーで「おもてなしの心を持って復興に協力していただければありがたい。そして復興以上に大事なのは高橋さんだ」と述べ、更迭された▲たとえ「復興には高橋さんの力が必要だ」と持ち上げるつもりで言ったとしても、「ものの弾み」では許されない。不用意な発言というより、心ない発言だったと言うべきだろう▲震災から8年経過した今も、5万人以上が避難生活を送っている。東京電力福島第1原発の周辺では、まだ帰還の見通しすら立たない地域がある。そんな現状に心を痛めていたならば、決して出てくる言葉ではなかったはずだ▲つい先日は、「総理とか副総理が言えないので、私が忖度(そんたく)した」と述べた国土交通副大臣が、辞任に追い込まれたばかり。どうやら麻生太郎副総理の支持者らの前で麻生氏を持ち上げようとしたらしく、大きな批判を浴びた▲政治家の口から無造作にこぼれる言葉が、国民を不愉快にさせる事態が続く。その負託を受けた政治家ならば、“身内”受けを狙った言葉でなく、広く国民に向けた言葉にこそ熱と力を注ぐべきだろう。(泉)

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