閉校の小学校で最後のお花見 【密着取材】地域で子どもたちを育てる「日本一」のボランティア

 奈良県河合町にある河合第三小学校では、毎年、学校支援ボランティアの方を中心に地域の絆が深まる、手作りのお花見が開催されています。しかし、今年はある理由で最後のお花見となりました。その現場を取材しました。

 河合町立河合第三小学校。地元の愛称は「三小」。今年も人々が待ちわびた、お花見の季節を迎えました。

8回目を迎える、このお花見を主催するのは三小の学校支援ボランティアの皆さん。学校支援ボランティアとは「子どもたちのために」と学校の教育や環境整備などを支援するボランティア活動です。

しかし、そのお花見も今年が最後…実は三小は来年の3月、閉校することが決まっているのです。その、最後のお花見を盛り上げようと意気込むのが発起人の久保 正美さん。40年前、大阪から河合町へ引っ越し、2人の子供を育てました。

久保 正美 さん
「ここは”奈良府民”大阪の人たちがみんな来ているんですね。大阪で働いていた人はそれぞれ田舎が違うわけです。さらに奈良へ来て、違うところから来ているし、和気あいあいというところまでなかなかいかないんですが、こういう場を持って話すと、いろんな人が仲間になって繋がりができたので、僕は良かったと思ってます。」

 かつて、エンジニアとして世界を飛び回っていた久保さん。忙しくて、子供の学校行事にも参加できませんでした。自分がいない中、地域の絆が子どもたちを立派に育ててくれた…恩返しの気持ちで学校支援ボランティアになり、仲間を集め、意欲的に活動してきました。

その支援の輪に驚いたのが、校長先生です。

中西 敬雄 校長
「2年前の1日に着任式が終わって、ボランティアの方々が花見をやってるから来てくださいと言われて、この場面を見た瞬間に何なんだ、コレは!?というくらいビックリして、その時直感したのは、地域に愛されている学校だなと思いました。」

昭和56年に開校した三小。河合町では一番新しい小学校です。一番新しいはずの学校が、なぜ最後の春を迎えているのでしょうか?

その理由は、土地柄にあります。三小があるのは西大和ニュータウン。高度経済成長期、大阪への通勤が便利なベッドタウンとして開発が進みました。子どもたちも多く、昭和59年のピーク時には1000人を超える児童がいた三小。しかし、少子高齢化が進み、今年は新一年生を含めて、全校児童172人。来年、河合第二小学校と統合します。

訪れた人は―
「(子どもが)一人は近くに住んでいるけど、もう一人は鎌倉。その子が「なくなるの嫌だなぁ」と言っていたので、これを撮って送ってあげようと…ここで少年野球してたから、毎週土日はここのグラウンドで練習していた…辛いよね。」

寂しい思いを抱えながらも、盛大に盛り上げようと開催されたお花見。地元有志によるお琴の演奏やお茶席などで、おもてなし。それぞれに思い出話に花を咲かせます。そして、大人たちが楽しみにしているのが…三小名物、金管バンドの生演奏!全国大会の常連校で、まさに、地域の誇りなんです。最後は先生たちによる合唱。会場が一体感に包まれます。この曲が終わると校長先生からサプライズが…久保さんをはじめとした、学校支援ボランティアの人たちを招いたのです。

中西 敬雄 校長
「河合第三小学校は、40年ぐらいの歴史を持っておりますが、学校支援ボランティアのみなさんのおかげでやってこれた部分がたくさんあると思います。たぶん…日本一の学校支援ボランティアさんたちじゃないかなと、思っております。地域の人たちが子どもたちを育てていただいている、そして子どもたちが町を元気にする、それを実践していただいているボランティアの皆様に大きな拍手をお願いします。」

久保 正美 さん
「嬉しかったです。やり遂げたという感じです。ここの地域の町おこしを僕は願っているんです。みんなの気持ちを一心にして頑張っていきたい。子どもたちは二小(河合第二小学校)に行きますけど、そこでもこういうグループを作りたい。」

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