被災者と心ひとつに「ご縁」の旅~ピアニストが全国16カ所でライブツアー

金沢在住の作曲家・ピアニストがクラウドファンディングで集めた資金をもとに震災、豪雨などで被害にあった地域を中心に全国を回るライブツアー「ご縁をツナグ旅」。

4月9日には、広島県東広島市志和町で「ご縁をツナグ旅in里山くるり」が開催された。心にすっと染み入る、聴いていて心地よいピアノの音色が、自然いっぱいの和風家屋に響いた。

演奏者は、作曲家でピアニストの北方寛丈さん。クラシックからポップス、ミュージカル、式典音楽、邦楽など幅広いジャンルで、東京と金沢を拠点に活動している。

北方さんが東広島市を訪れたきっかけは、昨年3月にリリースしたソロピアノアルバム「Synchoronicity-縁-Solo Piano Works」にあるという。長い音楽活動の中で作り上げた、優しく穏やかなメロディ。心に寄り添い、深く癒される音は「純粋な魂の光」をコンセプトとして生まれた。

「近年、自然災害が続いています。このアルバムをどんな人に聞いてもらいたいかと考えた時、大変な思いをされている被災地の人に一番聞いてほしかった。ささやかな手助けになれたら、と思ったのです」

災害が起こるたびに、あちこちで募金活動が行われる。みな「寄付をしたい」「寄付しよう」という気持ちはあっても「本当に必要な所に、この寄付が届くのだろうか」「寄付がどう使われているのか分からない」「被害の大きかった地域に使ってほしい」という気持ちがあるのは事実。北方さんも、そう思っていたという。

「ならば、皆さんの善意である募金を、使途が見えるカタチで集めたい。その支援金を元に、被災地を中心としたライブツアーを開催することで、賛同者の思いを届けたい」

アマチュア音楽家の両親の影響で、幼い頃から音楽が身近にあった北方さん。「音」「声」「カラダ」からアプローチするコンサートを行うことこそ、自身の「いまできること」だと思うようになる。そこで昨年9月からチャレンジしたのが「クラウドファンディングで被災地を中心としたコンサートツアーを実現したい!」だった。

このクラウドファンディングは「被災された方々の金銭的負担を完全にゼロにする」ために企画された。「ふさぎこんでいる想いを解放できるような場を、音楽で作りたい。前向きに生きる活力が自然と湧くような、そういう音楽会を開きたい。より良く生きるための音楽界を目指します」との北方さんのメッセージが、多くの人の心を動かした。10月31日までの期間中、全国の90人の賛同者から170万以上を集め、達成率は実に434%。その結果を受けて、岡山、広島、熊本という被害の大きかった被災地を含む全16カ所を巡るライブツアーが決定した。

ツアー5カ所目の会場となった「里山くるり」は、西日本豪雨で床上浸水の被害に遭った。

「里山くるり」主宰の写真家、今村久仁生さんは、水害直後から町内外の被災状況を撮影して記録として残したり、ボランティア活動を行ったりしてきた。北方さんと一緒に活動したことのある舞踊家、やまと舞のやまとふみこさんが、北方さんのツアーを知り、知人である今村さんを紹介したことで、今回のイベントが実現した。

ライブ開始時刻の14時になると、会場である畳の間は参加者で埋まった。「Synchoronicity -縁- Solo Piano Works」に収録されているメロディが優しく、深く響く。3曲のうち2曲は、何と「この場に合わせて即興で」奏でたのだという。

「のどかな里山のこの雰囲気。途中聞こえてきた鳥のさえずりが、ピアノとコラボレーションしたかのようでした。まさにこの場所でしか感じられない、里山の醍醐味ですよね」

(画像提供:今村久仁生さん)

プログラム後半には、北方さんの妻でアナウンサー・朗読家の北方真世さんの朗読との共演も。

最後の朗読では、今村さんとのご縁がきっかけで来場した、やまとふみこさんと、クリスタルボウル奏者、みほさんも共演。「ピアノ」「朗読」「舞」「クリスタルボウル」の4つが組み合わさった、まさにこの会場だけの贅沢なひと時となった。

左からみほさん、北方真世さん、やまとふみこさん、北方寛丈さん(画像提供:今村久仁生さん)

フィナーレは、どのライブでも参加者全員で行っている「ご縁をツナグ旅」テーマソングの合唱。

♪ご縁をつなぐたび ご縁が広がって ご縁が結ばれる ご縁をツナグ旅……

「歌うことは、一人一人が持っているエネルギーを出すこと。声を出し、自分の内側にあるエネルギーを元気に変えてほしいんです」と北方さんが呼び掛ける。

里山くるりの来場者も、北方さんのピアノに合わせて元気に合唱。録音された歌声は、全会場の歌声と重ねたりつなげたりしながら、エネルギーの満ちた1曲に仕上げる予定だという。4月29日の「ツアー報告会」で、YouTubeなどでお披露目の予定だ。

(画像提供:今村久仁生さん)

「仕事がご縁でつながっているように、里山くるりでの開催決定も、まさにご縁を引き寄せたもの。ご縁は必ず返ってくる。だからこそ、いただいたご縁にはこれからも誠実に向き合っていきたいです」と話す北方さん。寄せられた支援金は今後のツアーで節約しつつ、大切に、無駄なく運用していくという。

 

4月29日まで、広島、熊本、宮崎、石川と続く「ご縁をツナグ旅」全国ライブツアー。

北方さんの音楽に耳を傾け、あなたに関わる「ご縁」を考えてみてはどうだろう。きっと、多くの素晴らしいご縁に導かれて今があることに気付くはずだ。

 

いまできること取材班
取材・文 門田聖子(ぶるぼん企画室)
写真 堀行丈治(ぶるぼん企画室)

© 一般社団法人助けあいジャパン