安全願い神木のぼり 伝統の儀式に歓声 日向薬師

シイの木の柱に登って九字を切る山伏姿の保存会員=伊勢原市日向の日向薬師境内

 日本三薬師の一つ、伊勢原市日向の日向薬師で15日、山伏姿の保存会員がシイの木に登って刀を振るい、修行の満願成就や参詣者の家内安全を願う「神木(しぎ)のぼり」が披露された。春季例大祭に合わせて行われた。

 神木のぼり保存会などによると、日向薬師は明治初期まで修験者の拠点だった。神木のぼりは修験者が修行の前後に行った安全祈願の儀式とされ、神仏分離によって廃止されたものの、1974年に地元の有志の手で復活。2017年3月には市の登録無形民俗文化財に指定された。

 この日は、法螺(ほら)貝の音とともに山伏姿の保存会員が登場し、地元の修験者と問答する「山伏問答」を披露。一行は、しめ縄を張った結界に入り、矢を四方に放って邪気を払った。その後、山伏に扮(ふん)した保存会員は高さ約3メートルのシイの木の柱に登り、家内安全などを祈る祈願文を読み上げ、腰の刀を抜いて九字を切った。

 大勢の見物客が集まった境内では、矢が飛ぶと「おー」との歓声が上がり、盛んにシャッターを切る愛好家の姿も目立った。保存会の成瀬徳春会長(71)は「日向に昔からこういった行事があったことを大切にしていきたい。後世に残すことが私たちの使命だ」と力を込めた。

 山伏姿の保存会員と参詣者が火の中を歩く「火渡り」もあった。

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