上田竜也が持てるエネルギーのすべてを放出!魂がほとばしるステージ

舞台界で最も注目を浴びる舞踊家、ホフェッシュ・シェクター率いる世界的なダンスカンパニーによる「ポリティカル・マザー ザ・コレオグラファーズ・カット」の日本初公演で、KAT-TUNの上田竜也が主演を務めた(4月6~11日公演)。

ステージが始まると、まずはセットの破壊力に驚かされる。Bunkamura オーチャードホールの広い舞台空間を3段に区切り、轟音を奏でるバンドと打楽器を最上階に配し、中2階ではストリングスが爆音の間を埋め、地面と想定されるステージ上では、打楽器奏者が激しく打ち乱れ、ダンスチームがコンテンポラリーな舞踊で無言のメッセージを送り続けた。日本では初期版を9年前に公演し、同作としては日本初公演。開催国アーティストとして主役に抜てきされた上田は、最上階のバンドのセンターに立ち、まずはロックスター役として激しいシャウトに身を任せていた。

「会ってすぐに大好きになりました」と、上田について話すのは、カンパニーを率いるシェクター。「上田さんにはすごくカリスマ性があって、トータルとして素晴らしいパフォーマー。とてもパワフルでエネルギッシュなパフォーマンスを見せてもらっています」と、上田に最大級の賛辞を送る。2016年のトニー賞最優秀振付賞にもノミネートされ、革新的な作風で世界中から注目を浴びるシェクターは、舞台について「基本は音楽とダンス。背景には、政治的に抑圧された物語もありますが、基本的には作品のエネルギーを感じてほしい」と話す。

そして、上田も「自分を必要としてくれることがまずうれしくて、ステージで暴れたい。音楽とダンスが融合して、とてつもない破壊力の作品になっているので、本能のままに感じてもらえたら」と語った。上田は民衆を扇動するような政治家の役でも登場し、シェクターが作り出した不思議な言語で堂々たる演説をぶちかます。それに呼応してうごめくように踊るダンサーたちの、しなやかでシュールな群舞も圧巻。そしてステージでは再び上田のシャウトがこだまする――。他の日本人キャストとして、ドラマーの中村達也とベーシストのTOKIEも参加。終演後は会場が拍手と歓声に包まれ、カーテンコールが果てしなく続いた。

取材・文/幸野敦子 撮影/古賀良郎

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