粕谷秀樹のメッタ斬り 009
プレミアリーグから降格するクラブには厳しすぎるかもしれないけれど、自業自得だな。上層部が準備を怠ったり、戦力を見誤ったり、あるいは無為無策の監督を信じたりしていたんだから、結果はおのずとみえていた。
ハダースフィールドの場合、昨シーズンの残留が奇跡だった。本来はトップ10をうかがえたはずのスウォンジーやストークが、極度の不振から抜け出せなかった結果、いうなればたなぼたでプレミアリーグの座を守ったわけよ。リーグ・ワーストタイの28得点でよくもまぁ……。ところが上層部は、前線を満足に補強できなかった。34試合を消化した時点の19得点はリーグ最下位。記録更新確実。要するにハダースフィールドの運命は、去年の夏に決まっていたんだよ。
ハダースフィールドと異なり、フラムは積極的に補強した。いや、闇雲にと表現した方が適切かな。新加入は一挙11人。増えすぎじゃん。1チーム分のニューカマーがやって来て、既存戦力とすぐ馴染めるはずないでしょ。それぞれの特徴をつかめないまま時間だけが過ぎ、挙句の果てに33節で降格。監督もスラヴィシャ・ヨカノヴィッチ→クライディオ・ラニエリ→スコット・パーカーと、短期間でタイプの異なる3人を起用するなど、上層部は慌てまくっていたね。
ビジョンがまったく感じられない人事だから、選手たちは上層部に疑問を抱いたと思うよ。アレクサンダル・ミトロヴィッチ、ライアン・セセニョン、ジャン・ミシェル・セリといった主力は、移籍のためにエージェントが動きはじめている。泥船からは一刻も早く逃げ出さなくちゃ。
さて、カーディフはなかなかしぶとい。17位ブライトンとの勝点差は5。数字の上では逆転可能だ。でも、ニール・ウォーノック監督はノープランで、勝因はメンタル、敗因はレフェリーのミスジャッジ。ダメ上司の典型じゃん。リヴァプール戦とマンチェスター・ユナイテッド戦も残っているから、奇跡の大脱出が起こる確率は高くない。
ただ、16日に行われるブライトン戦に勝利を収めて2ポイント差に迫ると、サバイバルウォーはさらに過熱する。トッテナム、アーセナル、マンチェスター・シティと、ブライトンのスケジュールはカーディフよりも厳しい。現地時間の13日行われたボーンマス戦とのホームゲームも、0-5の惨敗を喫している。カーディフとの《6ポインター》に向け、ブライトンのムードはガクッと下がっちまったな。
残り試合数を踏まえると5ポイント差の逆転は難しいけれど、ウォーノックは場数なら踏んでいる。火事場のクソ力ってヤツが発揮されるかもしれないよ。で、まさかの残留、まさかのウォーノック留任? それはそれで問題よねん。
文/粕谷秀樹
サッカージャーナリスト。特にプレミアリーグ関連情報には精通している。試合中継やテレビ番組での解説者としてもお馴染みで、独特の視点で繰り出される選手、チームへの評価と切れ味鋭い意見は特筆ものである。