名簿提供「根拠薄弱」 自衛官募集問題で市民団体が抗議

名簿提供を巡る市の問題点を指摘する武井弁護士(右)ら=川崎市役所

 自衛官の募集を巡り、川崎市が自衛隊の求めに応じて対象者の名簿を提供しているのは法令に反するとして、市民団体「安倍改憲NO!オール川崎」(代表・川口洋一学習院女子大名誉教授)は16日、市に名簿提供の中止を求める声明を発表した。住民基本台帳法と市個人情報保護条例に違反していると指摘。経緯の説明に消極的な市の姿勢にも併せて抗議している。

 市は閲覧に限ってきた協力を2017年度から名簿の提供に変更した。声明では「住基法は閲覧こそ認めているが、名簿の提供までは認めていない」と指摘。「正当な行政執行に関連がある」場合、目的外使用を認めた条例を名簿提供の根拠とするという市の説明にも「住基法に違反する限り『正当な行政執行』といえず、条例にも違反している」としている。

 会見に同席した武井由起子弁護士は「個人情報は制限的に扱うのが住基法の精神。市の条例の解釈は無理があり、名簿提供の法的根拠は薄弱だ」との見解を示した。県内自治体で名簿提供の協力は3市2町にとどまり、条例は根拠にならないと判断した他自治体を例に挙げ、「市の対応は際立っている。住基法を超えた特別扱いを求めた自衛隊に屈したことになる」と断じた。

 同団体の三嶋健弁護士は「安保関連法で戦闘に加わる可能性が広がった自衛隊からの勧誘だから市民は不安を感じている」と強調。閲覧から名簿提供に変更した詳しい経緯の説明を求める同団体との面会を拒否した市の対応を批判した。

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