長崎大 喫煙者不採用へ 教職員募集、国立大で初か 「嗜好押し付け」懸念も

本年度の募集から喫煙者は採用しないと明らかにした河野学長=長崎市文教町、長崎大

 長崎大は19日、本年度の教職員募集から「喫煙者」は採用しないと明らかにした。「受動喫煙から学生と教職員を守るため」としているが、学生からは「非喫煙者の嗜好(しこう)の押し付けではないか」との声も聞かれた。同大によると、国立大では初めての試みとみられるという。

 河野茂学長が定例会見で明らかにした。河野学長は「無煙化環境の促進に向け努力を重ね、喫煙とは無縁の状態で学生を社会に送り出したい」と述べた。

 教職員採用の募集要項には「喫煙者を採用しない」との趣旨の文言を盛り込み、採用面接時に喫煙の有無を確認する。また現在勤めている教職員の喫煙者にも禁煙を促し、5月からは学内に設置する禁煙外来に通院できる。同大の教職員は約4千人で、昨年8月時点の喫煙率は7.8%という。

 この取り組みについて、大阪府堺市の市民団体「『子どもに無煙環境を』推進協議会」の野上浩志代表理事は「学生が受動喫煙にさらされる機会がなくなる」と評価。民間企業でも喫煙者の不採用が広がっているとして「学生を喫煙環境から遠ざけることでたばこを吸わない学生が増えるだろう。たばこを吸わない方が学生の就職の選択肢も広がる」と指摘する。

 一方、この日、学内の喫煙所でたばこを吸っていた大学関係者は「仕方がない。たばこはやめようと思う」と苦笑い。喫煙者の同大3年の男子学生(20)は「趣味や嗜好は人それぞれで好きなように生きればいい。学生としては、教員がたばこを吸わないことよりも、面白い講義をしてくれることの方が重要。応募者が減って講義のレベルが下がらないか」と懸念する。

 法令上の“差別”に当たらないのか。厚生労働省雇用開発企画課は「採用募集で非喫煙を条件にすることを規制する法令はない。喫煙者を不採用としても法令違反にはならない」としている。

 また同大は既に敷地の一部を禁煙としているが、8月から全面禁煙とし、屋外の喫煙所はなくなるという。

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