令和直前!平成最後のリアルビューティレポート

4月22日
株式会社カネボウ化粧品

令和直前!平成最後のリアルビューティレポート
@渋谷 @丸の内 20年間で変わったこと、変わらないこと

カネボウ化粧品美容研究所(以下、美容研究所)は、ファッションとヘアメイクのトレンド分析と予測を目的に、平成10年(1998年)から都内で定点観測調査※を続けています。今回、「平成」が幕を閉じる節目に、調査結果を“平成最後のリアルビューティ”としてレポートします。「渋谷」と「丸の内」をビューティの視点で切り取り、エリアを象徴する女性を比較。さらに20年前(平成11年)とも比較し、渋谷と丸の内それぞれに特有の変化や、時代を経ても変わらない要素を捉えました。

※定点観測調査
1998年から年に複数回、渋谷、表参道、丸の内など都内の複数の地点で実施。リアルな女性たちのファッションやメイクを間近に見ることで、トレンドの兆しや浸透度などを確認し、今後の方向性の予測やメイク提案などに役立てている

〈TOPICS〉
渋谷(学生)比較
◆今も昔も渋谷は“憧れ”に近づくメイク
丸の内(会社員)比較
◆きちんとメイクから肌なじみメイクへ
考察
◆20年間でメイクは「クール」から「温かみ」に
◆「温かみ」には人との関わりやメイク材料の進化も影響
◆眉は時代を反映する
今後の予測
◆改元は直接的にはトレンドに影響しない
◆祭典に向けて力強さや華やかさの表現も
◆国籍や性別を超えたメイク融合

日本の首都「東京」の中でも、「渋谷」は、1970年代から若者文化の中心地であり時代を映す鏡と言われてきました。バブル崩壊後に、トレンドセッターがOL・女子大生から女子高生に移行すると、「渋谷」では“コギャル”文化が生まれ、常に話題の的に。交通インフラの整備を中核とした大規模な開発が進行中の現在も、若者の聖地としてトレンドを発信し続けています。
一方、「丸の内」はかつて、金融・経済中心のビジネス街で、ビジネスマンやOLの姿が目立つ街でした。平成に入り、丸の内通りを中心とした再開発により商業施設が完成すると、企業の本社移転やショップの出店などが相次ぎ、街を歩く人の雰囲気も大きく様変わりしました。

これら東京を代表する二つの街で、女性のファッションやメイクはどのように違い、またどのように変化したのでしょうか。美容研究所では、平成最後となる本年(平成31年)1~2月に実施した「渋谷」と「丸の内」の定点観測調査結果に基づき、それぞれの街を象徴する女性(渋谷:学生、丸の内:会社員)のファッション&メイクを比較。さらに、20年前の平成11年(ストリートからもトレンドが発信されるようになった頃)と比較しました

調査概要
〈手法〉ストリート調査 〈時期〉1999年2月、2019年1~2月
〈エリア〉渋谷及び丸の内 〈対象〉時代を映すおしゃれな街ゆく人

【渋谷比較】 ~今も昔も“憧れ”に近づくメイク~

※平成31年と平成11年の渋谷女性のファッション&メイクを、同じモデルで再現しています
@渋谷 平成31年(2019年) 1月
10~20代の学生と見られる女性が多く、韓国のドラマや歌手などの影響を受けていると思われるメイクが目立ちます。白く仕上げた肌、眉はストレートで眉尻が下がり、まぶた上下にはオレンジ~赤系のアイシャドウ、唇にはややマットでダークなローズ系の赤い口紅をつけている姿が多く見られました。チークは控えめで頬にはあまり血色感が感じられません。ヘアスタイルはワンレンか、前髪を薄めにとってカールさせた“すだれ前髪”が主流のようです。髪色は明~暗までさまざまで、毛先だけカラフルに染めたスタイルも。ファッション面ではボアジャケットやアニマルプリント、花柄のロングスカートなどが特に人気でした。また、多数の人がミニショルダーバッグを体の前で斜めがけにしていました。

@渋谷 平成11年(1999年) 2月
1999年の渋谷では、ストリートカルチャーが花開き、平成の中でも際立った特徴を持つ“ギャル文化”が生まれていました。カリスマと言われた歌姫に近づきたい一心で、ファッションもメイクも彼女を真似た女性が続出。日やけ肌にハイライトをきかせ、角度のついた細い眉、ブルーやシルバーの目もと、血色感のない唇に、ブリーチやメッシュといった髪色も特徴的でした。 ファッションは、アメリカ西海岸の影響を受けたカラフルで元気なスタイルで、渋谷のファッションビル「109」が話題になりました。冬の定番はミニスカートに厚底ブーツ。赤や青といった鮮やかなダッフルコートやGジャンの着用率も高めでした。また、カリスマ店員がもてはやされ、“ヤマンバ”“ギャル男”なども出現。SNSのなかった時代ですが、10代が生み出したメイクやファッションのトレンドが雑誌やテレビなどで頻繁に取り上げられ、日本中に発信されていきました。

【丸の内比較】 ~隙のないメイクから肌なじみメイクへ~

※平成31年と平成11年の丸の内女性のファッション&メイクを、同じモデルで再現しています
@丸の内 平成31年(2019年) 1月
渋谷に比べると年齢層が高く、落ち着いた雰囲気の女性が多い丸の内。ナチュラルな肌に自然な太さのストレート眉、ピンクベージュ系の目もとや口もと、頬にはさりげない血色感が感じられます。肌映えと肌なじみをどちらも考慮したメイクをしており、目もと、口もと、頬にややくすみ感のあるピンクをのせたワントーンメイクも人気のようです。メイク自体は強くはないものの、アイラインとマスカラをしっかりと丁寧につけているため、地味な印象にはなっていません。
ファッション面では、ダウンコートやチェスターコートの着用が目立ちます。カラーはベージュやグレー、黒といった定番色が多く、差し色としてはややくすんだピンクが人気の様子。ストールやバッグ、手袋といった小物でやわらかく色を加えているのも特徴で、おしゃれと防寒対策を上品に両立させていました。黒タイツに黒靴を合わせる人が多いのも丸の内ならではの光景です。

@丸の内 平成11年(1999年) 2月
再開発前のこの時代、丸の内周辺には金融系企業が多かったこともあり、スーツやジャケットにエレガントなメイクの女性が多く見られました。足首まであるロングコートや、襟にファーがついたコートに、ぴったりしたタートルネックのニットを合わせている印象。ハイブランドバッグの所有率の高さも目立ちます。
メイクは、マットな肌と角度のついた細い眉、ローズ系の口もとやパープルのアイシャドウなどが特徴。きちんと 作りこんだメイクをしています。
ヘアスタイルはひっつめたお団子や、ソバージュ、ハーフアップにバレッタ留め、ワンレングス、ストレートシャギーなど様々で、バブルの名残が感じられます。

【考 察】

〈メイクの傾向〉
1999年と2019年を比較すると、渋谷、丸の内ともに、メイクがやわらかくなりました。寒色アイシャドウやラインを強調した「クールさ」や「強さ」のあるものから、暖色アイシャドウやバランスを重視した「温かみ」や「やさしさ」を感じさせるものに変化したことがわかります。これは、日本でこの期間に、大きな自然災害が幾度となく起きたことも影響していると考えられます。これらの出来事が、周囲との関わり方を見つめなおすきっかけになり、女性の気分に変化が生まれ、メイクにも反映されたのではないかと分析しています。温かみややさしさは、昨今のファッション&メイクのキーワードのひとつでもある「抜け」や「こなれ」にもつながる要素となっています。
また、平成は、パール材に代表されるようにメイクアイテムの材料が大幅に進化し、それに伴いメイクアイテムの品質が格段に良くなった時代でもあります。そのため、肌や唇を色で“隠ぺい”する印象の強かったメイクから、現在のような自分の素の状態を生かした温かみのあるメイクが可能になったとも言えるでしょう。
特に面白いのは眉。他のパーツとは異なり、時代によって同じような眉表現になっています。エリアや年齢による大きな差が見られないことから、まさに眉は時代を反映するパーツと言えます。

〈街ごとの変化〉
エリア別に見ると、渋谷の若者にとっては、平成11年(1999年)当時は歌姫、現在は韓国アイドルと、今も昔も憧れの存在に近づきたい意識でメイクをしていると考えられます。
一方、丸の内は、きちんとした印象のエレガントな女性像から、適度に力の抜けた女性像へと移り変わっています。この20年の間に、男女問わずビジネスシーンでの装いに自由度が広がりました。特に女性は、男性社会の中で違和感のないようにきちんと装うことが求められていた時代から、自分らしく自然体な装いで仕事をすることが認められる時代になったことが、ファッション&メイクの変化として表れているのだと考えます。

【今後の予測】

カネボウ化粧品美容研究所では、トレンドや女性意識の変遷などに関するこれまでの調査や研究から、ファッションやメイクのトレンドに変化が生じるのは、社会的インパクトの大きい出来事や、人が、他人や情報や文化などに触れて“共感”することなどが主な要因になると考えています。その点からすると、間もなく平成が終わり令和という新しい時代が幕を開けますが、新しい元号になることが直接的にファッションやメイクに変化をもたらすということはないでしょう。
一方、今後日本での開催が予定されている世界規模の祭典は、日本全体が多くの国や地域の文化に触れる機会となるため、日本人のファッションやメイクにも影響を与えるでしょう。また祭典に向けた期待感や気分の高まりから、一時的に力強さや華やかさが表現されると見ています。
さらに、加速するグローバル化の影響も見逃すことはできません。近年は身近な場面で外国人が活躍する姿も目立ち、「ダイバーシティ」というワードは平成を象徴するキーワードの一つとなりました。訪日外国人も2018年には3000万人を突破し、ますます増えると言われています。日本人は“ギャル文化”や“カワイイ文化”などに代表されるように独自のカルチャーを生み出す力があります。また、クリスマスやハロウィンなどのように、自分たちに親和するようにものごとをアレンジして取り入れるのが得意でもあります。今後、カルチャー発信力とアレンジ力のある日本人が、外国人のパワーに触れることで、メイクは国籍や性別を超えてさらに融合が進むと考えられます。カネボウ化粧品美容研究所では、引き続き日本女性のリアルな“今”を調査し、変化を追い続けていきます。

〈参考〉
【カネボウ化粧品美容研究所について】
「美容を科学する」をモットーに1962年に設立。美容に関わる理論や技術、情報の開発を行うとともに、化粧文化の研究やトレンド情報の収集・分析、消費者調査などを行う。また、分析した情報をもとに今後の予測をし、商品開発時のアドバイスも担当。各ブランドの撮影時のメイクや、カネボウ化粧品のビューティカウンセラー向けの教育メニューの開発にも携わるなど、様々な活動を行っている。