県警現職・OBの8人に報酬 昇任試験問題集執筆問題

流出した県警の内部文書。「取扱いに注意」の記載がある

 警察庁と神奈川など17道府県警の警察職員460人超が、昇任試験の対策問題集を出版する民間企業「EDU-COM」(東京)の依頼を受け、問題や解答を執筆して1億円超の現金を受け取っていたとされる問題で、神奈川新聞が入手した同社の内部資料によると、神奈川県警では現職とOBの計8人が10回以上にわたり継続的に報酬を得ていたことが26日、分かった。県警は反復・継続的な受領について、兼業を禁止する地方公務員法に抵触する疑いがあるとみて、事実関係を調査している。同社側に県警の内部文書が流出した疑いがあることも判明した。

 一連の問題を巡り、山本順三国家公安委員長は17日の衆院内閣委員会で「(現金を受け取ったとされる該当者のうち)30人程度は兼業に当たるか否かなどについてなお事実確認が必要」と答弁。一方で「400人を超えるかなりの部分は、これまでの確認で問題のないケースと承知している」と述べた。

 神奈川新聞が入手した内部資料によると、県警では2012~17年にかけて、現職とOB計66人の警察官、事務職員に同社側から計約680万円が支払われたとの記載があった。大半の40人超は1回のみの執筆で、主に専門分野の警察活動のトピックや課題を紹介する「巻頭言」などを寄せていた。山本氏が「問題のないケース」と言及したのはこれらを指すとみられる。

 10回以上にわたり継続的に報酬を得ていた8人のうち4人は現職。50回超にわたり計約130万円の報酬を得ていたとの記載が内部資料にあった50代の警視は神奈川新聞の取材に「本部の調査を受けており何も答えられない」、40回超にわたり計約80万円を得ていたとの記載があった40代の警視も「本部に判断を委ねているので話せない」と述べた。反復・継続して執筆、現金の受領に関わった記載があった元警視も「退職しており、後輩に迷惑が掛かるので取材には答えない」とした。

 内部資料によると、最も報酬を得ていたのは、元警視正の計約230万円。これとは別に、県警の職員が関わったとみられる「警察実務研究会」と「昇試研究会」名義の2団体にも計約800万円が支払われていたとの記載があった。関係者によると、このうち計約716万円が支払われたとの記載がある警察実務研究会については、この元警視正が関わっていたという。

 一方で、同社から執筆を依頼されても固辞したり、巻頭言を執筆しても現金を受け取ったりしなかった警察官もいた。

 公務員の副業は原則、禁止されている。県警によると、今回の問題で副業の許可は出ていない。県警は「反復・継続して関わった者を対象に事実関係を確認している」としている。

 山本氏は内閣委で「全体像を把握する必要があり、それをベースに処分などを考えなくてはいけない」とし、「可能な限り早期に事実確認を行い、必要に応じて適切な対処がなされるよう警察を指導していく」と答弁した。

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