災害命名ルール、続く模索 気象庁、昨年方針見直し

西日本豪雨の大規模氾濫で2階まで水が入り込んだ住宅。車で避難した家人は片付けに追われていた=2018年8月、岡山県倉敷市真備町

 「災害の時代」だった平成が終わる。この30年余りの間に発生し、被害規模が大きいとして気象庁が名称を付けた地震や気象災害、火山噴火は計30ある。1年に1度は深刻な災害が起きていたことになるが、基準があいまいだったため、名付けられなかったケースも少なくない。呼称には災害の教訓を継承する目的があるだけに、気象庁は昨年7月に方針を見直し、分かりやすく“漏れ”のない命名を目指して運用している。

 気象庁のウェブサイトによると、1989(平成元)年から2019(同31)年までに起きた災害で名称が付けられたのは、地震が最多の15。梅雨前線などによる豪雨や豪雪が13。火山は1991年の雲仙岳噴火と2000年の有珠山噴火の二つとなっている。

 これらの全てが統一的な基準で名付けられたのではない。気象庁が命名の「考え方」を示したのは04年。03年に東北で相次いだ震度6弱や6強の地震に対して命名すべきとの意見が寄せられたことを踏まえたためだ。ただ、損壊家屋数などの数値的な指標を示して命名の対象としたのは地震と豪雨のみ。火山などは除外されていた。

 このため例えば、死者・行方不明者が63人に上った14年の御嶽山の噴火は命名はされていない。同庁火山課は「当時の考え方の中に火山が含まれていなかったため」と説明する。

 一方、命名がされた雲仙岳と有珠山の両噴火は、いずれも人的被害の規模では御嶽山を下回るものの、考え方が示される前の発生だったため、名付けられたとみられる。

 また、04年の考え方は、毎年発生順に番号が振られる台風も対象としていなかった。東京・伊豆大島で39人が死亡、行方不明となった13年の土砂災害は、台風26号の被害の一部として扱われている。

 こうした呼称の方法に対し専門家やメディアは「分かりにくい」「具体的な災害をイメージしにくい」とたびたび指摘。気象庁は考え方の見直しを進め、台風と火山を対象に加えた。

 台風については「番号では人々の記憶に残りにくい可能性がある」として、顕著な被害が起きた地域・河川名を組み合わせる。豪雨や豪雪、暴風、高潮も同様とする。火山は人的被害が出たときだけでなく、避難生活が長期に及んだ場合も含むこととした。

 新たな考え方が公表されたのは、岡山や広島、愛媛県を中心に240人以上が犠牲になった西日本豪雨を「平成30年7月豪雨」と名付けた昨年7月9日。その後、命名された災害は「平成30年北海道胆振東部地震」のみだ。昨年は、関西空港が水没した台風21号や首都圏を中心に強風被害が広がった台風24号もあったが、別の呼称は今のところ付けられていない。

 気象庁業務課はこのうち台風21号について「命名するかどうかを検討中」と説明。台風は被害の範囲や期間に広がりがあり、「特定の地域名を付ける作業は慎重に進める必要がある」として、「翌年5月までに定める」方針だ。

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