怪我の予防と疲労軽減が狙い、初の「ショートスタート」はわずか9球で3者凡退
マリナーズの菊池雄星投手が26日(日本時間27日)のレンジャーズ戦で、1回限定の「ショートスタート」を初体験。無安打無失点2奪三振に抑え3人を9球で終えた。
今回の措置は、先発ローテーションを守りながら怪我の予防と疲労を軽減させるため、メジャー1年目の菊池の投球回数を定期的に短縮させるチーム方針によるものだが、先鋭的な方策についてサービス監督は「傘下のマイナーではこれまでにやっている」と説明した。
進取の精神がしっかりと根を張るメジャーでは、柔軟な姿勢が常に戦術や調整法に反映される。今や極端な守備隊形は当たり前のものとなり、その制限に向けた議論も起こりつつある。投球に関していえば、サービス監督が触れたようにマイナーでは投手の負担軽減策を考えるチームが多い。特に高校を卒業したての若年層が多い1Aレベルではそれが顕著だ。過日、アスレチックスのマイナー関係者から「先発ローテ6人制」の話を聞いた。
彼曰く、
「単純だが、6人なら5人ローテより1回多くブルペンで調整ができる。フォームの修正や持ち球に磨きをかける指導ができる余裕が生まれるし、もちろん肩と肘の酷使も避けられる」
学生時代は週に1度の登板とブルペンを含め7日に2度の投球が、プロになればブルペンを含め10日に4度の投球へと一気に増える。それだけに、各チームは20歳未満の先発投手にはシーズンの投球回を100~120に規制するガイドラインが設けられているという。徐々に慣らせるソフトランディングに指導者たちの配慮は尽きない。
「ペース配分し過ぎ、探りながら行き過ぎ」…9球からいくつもの収穫を得た菊池
1Aレベルでは“piggyback”と呼ばれる登板パターンがある。
piggybackとは「抱き合わせ」の意味で、2人の投手にコンビを組ませ先発と中継ぎの役割を交互にして同じ試合に臨ませるというもの。この方式も肩の酷使を避けるための対策の一環で考えられたが、問題点も出てくる――。
先発した投手が好調で終盤まで投げると、中継ぎに回った投手はわずかな投球しかできなくなる。その中継ぎ役が次回で先発して、序盤での降板を余儀なくされた場合、コンビを組む相手に負担をかけることになってしまう。つまり、実戦では描いた通りの役割分担がなかなか叶わないという難点が出てくるというわけだ。
若手投手の将来を考えるために、マイナーではその方策にいろいろな取り組みが行われている。
今回の1回限定登板では、握りに工夫を凝らし相手を腰砕けにしたチェンジアップや、空振りを奪うスライダーへの手応えなど、投じた9球からいくつもの収穫を得て、「ペース配分のし過ぎだなとか、探りながら行き過ぎたなというのは気付けた」と、意識の部分でも今後につなげる改善点を見つけた。
マイナーで実証済みだった「ショートスタート」で新たな発見をした菊池は、27日(同28日)に正式に発表された次回5月3日(同4日)の敵地インディアンス戦で、2勝目を目指す。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)