初心者も舞台目指せる 侍ワールドを体験 殺陣波濤流NY

香純恭(かすみ・きょう)さん 普段は初心者対象で、殺陣の基本の動きを練習しています。皆さんゼロからここまで上達しました。クラスを通して殺陣の歴史や「侍の生死」を感じてもらいたいです。侍の時代に生まれた所作や相手を思いやる心には、私達が現代社会に生きるためのヒントがたくさん詰まっています。そんな奥の深い世界に触れてみてください。

殺陣師(たてし)で映画プロデューサーの香純恭(かすみ・きょう)さんが代表の道場「殺陣波濤(はとう)流NY」のビギナークラスの稽古が、ミッドタウンのスタジオで行われている。

殺陣は日本の伝統芸能の一つで、映画やテレビドラマの格闘シーンで、侍のように刀などを用いて行う演技や技術のこと。

この日は、目前に迫った道場の創立5周年記念の本番に向け、最終確認の稽古に臨んだ。「抜刀!」の声に合わせて全員そろって刀を抜き、大きく振り下ろして鞘に戻す「納刀」までを行う。

4月28日(日)開催の「殺陣波濤流NY」創立5周年記念イベントに向け練習。今回は「共生」をテーマに演武を披露する

基本の型の一つ、白虎(びゃっこ)の稽古に入った。「芯」(主役)と、それを取り囲む2、3人の「からみ」(斬られる役)が立ち回りを行う。ピリピリした緊張感が漂い、「エイッ!」「ヤーッ!」の掛け声と共に、ビュンビュンと音を立てて刀が激しく交差する。いくつかの型が組み合わさっていて、難易度の高い動きが要求されるため、初心者にはなかなか大変だという。

演出家でもある香純さんの細かい指導が続く

「斬る動作と、いなす動作を連携させないと、演武は成立しないですよ」と香純さんがアドバイス。さらに、「斬った後、目線を次の相手に動かして、合図を送り入れましょう」と、視線の演技「目付け」についても細かく指導する。

一通り稽古をこなした後は、イベントのオープニングの練習を開始。香純さんが当日のステージの流れをイメージしながら、音楽も含めて事細かに指示を出していく。当日の数分の演武のために、繰り返し熱のこもった稽古が続いた。

ビギナークラスは未経験者が基礎から学べる

パフォーマーでヨガインストラクターの山藤志絵里さんは「4年前にけがをして動けなくなってしまった時に、メンタルを強くして忍耐力を付けたいと思ったのがきっかけで参加しました。先生は思いやりの大切さや礼儀、そして所作や動きの一手一手をきちんと教えてくれます」と話し、香純さんの情熱にみんなが巻き込まれていると語る。

侍が好きで2年前に参加した主婦の中村瑞恵さんは、「香純さんの記事を見て、憧れて参加しました。型が決まった時や納刀する瞬間、侍の気持ちになれてすごく面白いです。みんなで演目を作り上げていくのは大変ですが、チャレンジすることが楽しい。一人一人にちょっと先を目指すように指導してくれるので、やる気が出て家でも練習しています」。

デザイン関係の仕事をしている原一郎さんは、「殺陣の所作を覚えたくて1年前から参加しています。いい運動になって姿勢も良くなる上に、日本の伝統的な武道の歴史や文化も教えてもらっています。発表の場もたくさん与えてもらえるので、モチベーションも上がります」と、クラスに参加して日常が変わったと話していた。

「思いっきり楽しんで本番に向かいましょう」と香純さんはみんなに呼び掛け、大きな笑顔を見せた。

TATE Hatoryu NY

マンハッタンビギナークラスは隔週の水曜日の午後5時30分〜7時30分、アドバンスクラスは午後1時30分〜3時30分に、Ripley-Grier Studios(520 8th Ave.)で開催。参加費1回40ドル(別途5ドルの刀レンタル代)。

【問い合わせ】
tate@hatoryuny.com
http://www.tate-hatoryuny.com/

© Trend Pot NY,LLC