「波佐見焼の原点」 400年前の技法「青磁」復元

長年の研究の末に復元した波佐見青磁を前にする山口さん=波佐見町折敷瀬郷、「山口正右衛門窯」

 東彼波佐見町折敷瀬郷で「山口正右衛門(しょうえもん)窯」を構える陶芸家、山口正美さん(70)が、約400年前の波佐見焼の技法を復元した「波佐見客星青磁」を制作した。波佐見焼の伝統を守り伝えたいと35年以上前から取り組んできたライフワーク。「ようやく完全に近い形で再現できた。波佐見焼の原点を感じてほしい」と話している。
 山口さんは波佐見焼の伝統工芸士で、県技能士会連合会の会長も務める。国内外で個展の開催や美術展での受賞を重ね、2010年には「現代の名工」、15年には黄綬褒章を受けた。
 青磁は透き通った青緑色が特徴で、約400年前の江戸期に波佐見で生産されていた。山口さんによると、当時は大村藩から幕府への献上品として用いられたり、出島から海外に輸出されたりした高級品だったが、技術面での難しさもあり、長らく生産が途絶えていたという。
 当時作られた破片を見たり、触ったりしながら、その美しさと技術力に引かれ、「波佐見焼の作家として避けては通れない原点」と復元に心血を注いできた。合成着色などは一切用いず、町内で取れる陶石を主原料にした釉薬(ゆうやく)にこだわり、不純物が星のような模様になる「客星」も再現した。「長年の試行錯誤で誰にもまねできない高みに到達できた」と胸を張る。
 昨年、東京で開いた個展で茶わんや花入れ、皿、ぐいのみなどを初めて発表。画廊オーナーも高い再現度に感心したという。波佐見陶器まつり(29日~5月5日)の期間中に同窯で展示している。「先人の高い技術を絶やすまいと追求してきた。波佐見焼が当時から高い技術を誇っていたことを知ってほしい」としている。

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